第302話 ひ・ん・か・ん!

今回は変態さんとか不道徳さんが山盛りなので、苦手な方はお気をつけて。

あと、この物語はフィクションです!

それでは本編いってみましょう。


 今日はグレイスとオッティがステラに来ている。

 ティーノとメガーヌに創作鯛料理の考案をお願いしていたのが完成したからだ。

 今は調理が終わるのを待っている。


「そういえば、日本はものづくり大国なのに、何故工場を題材にしたアニメが無いのよ?」


 グレイスは飲んでいたワインのグラスをテーブルに置くと、俺とオッティを交互に見ながら聞いてきた。


「どうした、そんなパクツイみたいな台詞を唐突に」


 オッティが辛辣なことを言うが、その通りだな。

 パクツイ?


「工場が題材だと、池井戸潤作品みたいなのばかりだよな。あとは金融にぶら下がっているハゲタカの登場人物とか」


 俺はグレイスの言うことに同意する。


「萌え系の作品があってもいいと思うのよね」


「ふむ。しかしだな、例えば登場人物を女子高生にしたとしよう。親の工場を手伝う作品でストーリーを考えると、客からのパワハラ、セクハラのオンパレードで、薄い本まっしぐらな展開にしかならないぞ」


 オッティがそう言った。

 俺も頷く。


「なにせ、下請けの営業も派遣の営業も女性だと体を要求されると聞いたぞ。というか、いくつかは証拠も残っている。中小企業だけじゃなくて、大手もやっている奴はいるな。異世界だからうっかり社名を出したくもなるが、イニシャルでもヤバそうなのでやめておくけどな」


 俺の言葉に今度はオッティが頷いた。


「あんたら男はいつもそうよね」


 グレイスが汚いものを見るような目でこちらを見る。

 男でひとくくりにしないで欲しい。

 どちらかといえば、俺は他人の不正を公にして、炎上するのを楽しむ人間だ。

 自分が焼かれるリスクは追いたくない。

 それもどうかと思うけどな。


 この度はこんな弊社を選んでくれてどうもありがとう。

 ご契約前にこの取扱説明書をよく読んで、ずっと正しく優しく発注してね。

 一点物につき返品交換は受け付けませんと言いたいけれど、不良が出たら即対応。

 なんなら対策書も書きます。

 だけど、理不尽な要求をしたら、うっかりばらしちゃいますよ。

 飯野かな?

 そんなチャンスが、北野かな?

 どうやら方向を間違ったようです。


「アルト、そろそろ戻ってきてね」


「はい……」


 グレイスによって、現実に引き戻された。


「何もそんなのを萌えにしようとは思わないわよ。例えば戦車なんていう戦争の道具でも、女の子が部活動で乗るってのもあるじゃない。部活動で製造業をやればいいのよ」


「で、リコール隠しが発覚して、部長と部員での責任の擦り付けあいだな」


「どうしてあんたらはそうやって、製造業の負の部分ばかりを強調するのよ!」


 オッティの皮肉にグレイスが切れた。


「なにも、女子高生を主人公にしなくてもいいよな。測定器が主人公なら少しは変わってくるだろ」


 俺の提案に二人が理解できないといった感じだ。

 なので説明を付け加える。


「軍艦や飛行機を擬人化した作品があるじゃないか。あんな感じでノギスやブロックゲージを擬人化したらどうかな?」


「それはそれでありね」


「しかし、問題があるな」


 乗り気なグレイスと違い、オッティはあまり乗り気ではない。


「何が問題なんだよ」


「リングゲージとプラグゲージを見て興奮する作業者が出るだろ」


「???」


 グレイスはオッティの言ったことが理解できない。

 二つのゲージを見たことがないから当然か。


「グレイス、リングゲージというのは嵌められる穴のあいたゲージだ。プラグゲージというのははめるための突起のついたゲージだ。つまりは日本書紀の国産みの儀式だな。それを連想しちゃうってことだよ。こっちも薄い本まっしぐらだ」


「BLもできる?」


「そこか!」


 腐ってやがる。

 通りと止まりが絡む展開とか見てみたい。

 GPIP!


「まあ、それで会社でいたしちゃう人なんていないでしょうけどね」


「グレイス、そうでもないぞ」


 俺にはそんな奴を見た経験がある。


「とある博物館の学芸員は、資料庫で縄文土器を見ながらオナニーしているのを館長に見つかったんだ」


「縄文土器で……」


 グレイスの顔がひきつる。


「縄文土器っていうのは調理するための器でもあるが、デザインにもこだわった物があるんだ。全てが縄目模様という訳じゃない。貝殻で模様をつけたものや、火炎の形を模した土器なんかもある。変わったところでは、出産の瞬間をデザインした縄文土器だってあるんだ。そこから、土器が女性器を象ったものであるという学説が生まれている。つまり、縄文土器をおかずにオナニーをすることは、女性器を見てオナニーしているのと同じことなんだよ!!」


「ひくわー」


 俺の説明にグレイスどころか、オッティもドン引きだ。


「オナニーが見つかった学芸員は、いたたまれなくなって退職しちゃったんだよね。いい人だったんだけど」


「いい人は資料庫でオナニーしないわよ」


「はい……」


 あの人、今どうしているのかな?


「なんにしても、擬人化はいけそうよね」


「タイトルは『測定乱舞』かな?」


「どうしてあんたはパロディーをしたがるのよ!」




※作者の独り言

萌え作品を考えてみましたが、結局誰かの悪口にしかなりませんでした。

この物語はフィクションですが、あの学芸員のその後を知っているひとがいたら、こっそり教えてください。

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