〇〇少女ワールド 2

渋谷かな

第1話 病室で

夜の病院の病室。


「どうせ・・・・・・僕は死ぬんだ。」

不死の病で死期が迫る小さな男の子がベットで横たわっている。大人は何も言ってくれないが、小さな男の子は自分の体のことなので、言われなくても実感している。

「ヒラ~。」

 そこにマントで全身を覆っている少女が現れる。

「こんばんわ。」

 少女は小さな男の子に無表情で挨拶をする。

「お、お、お姉さんは誰!? どこから入ってきたの!?」

 不審な少女に警戒する小さな男の子。

「分かった! 僕をあの世に連れて行くんだ!? お姉さんは僕を迎えに来た死神なんだ!?」

 そして小さな男の子が出した結論は、謎の少女は病気に侵されている自分を迎えに来た死神という結論だった。

「違うわ。」

 しかし、少女は否定する。

「私は死神少女でも、デスサイズ少女でも、地獄の閻魔少女でもない。」

 少女は自分を分かってほしいのか、たくさんの例えをあげる。

「なら? 天使様なの?」

 小さな男の子は恐る恐る少女に尋ねる。小さな男の子は、まだ純粋なのだろう。少女の言葉を信じている。

「それも違うわ。」

 しかし、また少女は否定する。

「私は、あなたの病気を消しに来た。」

 少女は自分が小さな男の子の目の前に現れた理由を述べる。

「僕の病気を消す!?」

 その言葉に衝撃を受ける小さな男の子。

「無理だよ! だって僕の病気は先生にも直せないって言ってたもん!」

 小さな男の子は不死の病を患っている。その病は優秀なドクターにも直すことはできない。きっと手術も不可能である。

「どうせ僕は死ぬんだ!」

 小さな男の子の心の中にある感情は絶望しかなかった。

「チッチッチ。それはどうかしら? 今から世紀の大手品ショーをお見せしましょう。私が3、2、1と言って、指パッチンをすると、あなたの体から病気は消えてなくなります。」

 少女に表情が出てきた。そしてテンションの上がってきた少女は得意げに、小さな男の子の不死の病を取り除くというのだ。

「嘘だ! そんなことできる訳ないもん! お姉ちゃんの嘘つき!」

 小さな男の子は謎の少女の言う言葉が信じられない。

「それはやってみないと分からないじゃない。それとも何もしないで最初から諦めるの?」

 少女は小さな男の子の顔を覗き込む。

「う、うう。」

 小さな男の子は何も言えない。小さな男の子の心の中で、騙されている自分といきたいと思う心がせめぎ合っているのだ。 

「生きたいと言いなさい。」

「え?」

 自分の心の中を見透かした少女の発言にドキッとする小さな男の子。

「求めなさい。求めれば、求めるものを与えられん。」

「・・・・・・い、生きたいです。」

 小さな男の子は勇気を振り絞って小さな声でボソリと呟く。

「聞こえない。そんな小さな声で願いが叶うと思う?」

 少女は半信半疑の小さな男の子を挑発して、本当に生きたいという心の声を聞きたがる。

「生きたい! 僕だって、みんなと一緒に走り回ったり、みんなと一緒に楽しく笑って遊びたい! 死ぬなんか嫌だ! どうして僕は病気なの!? どうして僕は死なないといけないの!? 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 死にたくない! 僕は生きたいんだー!」

 小さな男の子の小さな心の中に、これだけ多くの感情が抑え込まれていた。

「よく言った。あなたの願い叶えましょう。」

 小さな男の子の思いが少女にもビンビン伝わった。そして世紀の大マジックショーが開幕する。

「ようこそ。あなただけのスペシャルステージへ。」

 少女は手を曲げて胸の前にし、小さな男の子に礼儀正しく一礼をする。

「今夜のマジックは、不死の病を体から取り除いてご覧に入れましょう。」

「・・・・・・。」

 そんなことが本当にできるの? と小さな男の子はキョトンと少女を見つめている。  

「それでは世紀の大マジックショーの始まりです。それでは不死の病を取り除く、奇跡のカウントダウンを始めます。」

「ゴックン。」

 小さな男の子は思わず唾をのんだ。 

「3、2、1。パッチン!」

 予定通りに手品を進めていく少女。カウントダウンをし、最後に指をパッチンする。

「小さな命を苦しめる悪い奴! 消えろ! 不死の病!」

 少女からオーラのようなものが小さな男の子に注入されたように見える。普通の人間には見えることのない少女のサイコキネシスで、小さな男の子の体の中の病原体を消滅させていく。

「あ!? あれ!? 体が軽くなった!? 本当に! 本当に病気が無くなったんだ! やったー! やったぞー! 僕は生き続けることができるんだ!」

 小さな男の子の体から不死の病が消え去った。病気が体からいなくなり、小さな男の子は普通の健康な体を取り戻した。

「どう? あなたが求めたから、あなたの願いが叶ったのよ。」

 喜んで生き生きとしている小さな男の子の表情を見ていると、少女の顔には良いことをしたという満足感から顔が笑顔になった。

「ありがとう! お姉ちゃん!」

 心から感謝の言葉を伝える小さな男の子。

「どういたしまして。世紀の大マジックショー、見事に成功です。アハッ!」

 見事なマジックショーで小さな男の子を不死の病から救った少女。

「じゃあね。しっかり勉強もするのよ。」

 病室から去って行こうとする少女。

「待って!? お姉ちゃんは魔法少女なの!?」

 最後に質問をする小さな男の子。

「違う。」

 またまた否定する少女。

「私は○○少女よ。」

 笑顔で言い残すと少女は去っていった。

「ありがとう。○○少女のお姉ちゃん。」

 小さな男の子は素敵な夢を見ていたように、静かに眠りについた。

 つづく。

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