第809話 偵察
☆亜美視点
ワールドカップ開幕翌日。 グループ予選2日目。
今日はカナダ戦! だけど、私の出番は今日も無いのです。 今日のスタメンはベテランの先輩達です。
遥ちゃんだけは交代要員として参戦中。 試合の方は特に苦戦している様子はなく1セット先取。
2セット目も順調順調。
「こりゃ今日も私は出番無さそうだよ。 とほほだよ」
「清水は明日のクロアチア戦にぶつけるつもりだー」
「おお、明日は出番あるんですね」
わくわく。
「ウチは?」
「月島姉妹も明日出てもらう」
という事は
ある程度使い分けしているみたいである。
などと話している間にも、日本チームはいい感じに得点を重ねている。
オリンピック大会では予選グループ敗退だったベテラン組の皆さんだけど、今日のカナダ戦は実によく動けている。
オリンピックの時は相手が悪かったんだろうか?
この分なら今日は楽勝そうである。
◆◇◆◇◆◇
「お疲れ様です! ナイスゲームでした!」
「ふぅ。 勝てて良かった」
「よーしよくやったぞ。 2連勝2連勝! がはは!」
明日行われる予定のクロアチア対アイルランドでクロアチアが勝てば、日本とクロアチアの決勝トーナメント行きが確定する。 明日はクロアチアの応援だね。
「よし、今日はこの後、キューバの試合が予定されている。 観戦に行くぞー」
「はい!」
優勝候補筆頭であるキューバの試合を観戦し、偵察しようということである。 その対戦相手はブラジル。 こちらも世界ランキング3位でかなりの強豪国という事の様だ。 どちらも決勝トーナメントに上がってくる可能性があるという事で要チェックだよ。
「コートはこっちだな」
「こっちー」
というわけでFコートへとやって来た。 コート内には既に両チームが入っている。 どちらも良いガタイしてるよぉ。 どっちもゴリゴリのパワータイプって感じだねぇ。 これじゃ全員奈々ちゃんだよ。
「なんていうか凄い威圧感あるわね」
「肩幅ごっついなぁ。 あれほんまに同じ性別なんか?」
「まぁ、そうでしょうよ……」
「でも本当にガタイ良いわね。 どんなプレーするのかしら?」
「どうせパワープレーやろ。 全員藍沢さんみたいなゴリラプレーやで絶対」
「誰がゴリラですって?」
黛姉妹は意外と毒舌家らしい。 でも多分パワープレーなんだろうねぇ。
「はじまったよー」
「おお」
というわけで、キューバ対ブラジルの対戦が始まった。
パァンッ!
パァンッ!
「ほれ見てみぃ。 小細工無しのゴリゴリのパワープレーや」
「でもプレー自体はハイレベルですわよ。 体のバネとかも凄いわ」
「単純に身長もあってパワーもあって強いって感じするよね」
キューバは特にそんな感じだね。 決勝トーナメントで当たったら、生半可なブロックでは止まらないかも。 麻美ちゃんはこのキューバのプレーに何を見るのだろう。
「むー……」
その麻美ちゃんも真剣に偵察しているようです。 試合の方はキューバがパワーで圧倒しているがブラジルも食らいついていく。 1セットを取り合っての3セット目。 ここはキューバが力でねじ伏せて勝利をもぎ取った。
「……どっちも派手なチームだけど、さすがに強いわね」
「何が何でもパワーと高さでねじ伏せたるっちゅうのが伝わって来よったわ」
「技術とかじゃなくて純粋に……」
強い!
「あれが優勝候補筆頭のキューバだ。 どうだ?」
「やってみなわからんですわ」
「ですね」
「ふむ。 気圧されてビビるかと思ったが」
「別にビビらないですよ。 それにパワーなら奈々ちゃんの方が上です」
「技術やったら美智香の方が上やで」
「高さなら清水さんっしょ」
そう私達は全てを備えているわけじゃないけど、一つ一つは上回っている自信がある。 皆が力を合わせれば、キューバでもアメリカでにでも勝てるはずだよ。
「頼もしい奴らだなぁ、田中」
「本当ですよ。 黄金世代と言われるだけあるわ」
ベテランさん達は苦笑いしながらこちらを見ていた。
◆◇◆◇◆◇
翌日だよー。
今日は1日オフという事だけど、私達はもう一度クロアチアの試合を観戦することにした。 データは収集できるだけしておきたいからね。
「よいしょっと」
観客席に着いてクロアチアとアイルランドの試合を観戦する。 せっかくのオフ日なのに皆偵察に来ているよ。 この大会にかける本気度の高さが窺える。
「やっぱり要注意はエースのモニカさんだねぇ。 どう遥ちゃん、麻美ちゃん?」
「まあ何度かは止められるとは思う」
「うんー。 美智香姉程のテクニックやお姉ちゃんほどのパワーはなさそうだし何とかなると思うー」
何とも心強い言葉である。 ちなみにスタメンは昨日言ってた通り、私と月島姉妹、そこに遥ちゃん、希望ちゃん、黛の妹さんの予定だ。 恐らくスポットで黛お姉さんさんも出てくるだろう。
私達の力なら十分勝てる相手だろうと思う。 少なくともここで躓くようじゃ、昨日見たキューバには勝てそうにない。 クロアチアには楽勝するぐらいじゃないとね。
「試合の方は予想通り、クロアチア優勢ね」
「実力的にはそうでしょー。 クロアチアが勝ってくれれば私達も決勝トーナメント行き決まるし楽でいいじゃない」
「まあそうやな」
「麻美ちゃんどう? クロアチアのモニカさんとか止めれそう?」
「やってみないとわからないけどー多分いけるかなー。 癖とかも割とわかりやすいー」
「おおー」
「凄いねー藍沢さんの妹さん。 見ただけでそこまで言えるなんて」
「この子はちょっと特殊なんすよ。 天性の嗅覚というかなんというか、MBとしての才能は本物です」
遥ちゃんは自分よりも麻美ちゃんを持ち上げる事が多い。 それだけ麻美ちゃんのことを評価してるんだろうけどね。
「練習の時も思ってたけど、藍沢妹さんのブロックって独特だものね」
「ですです」
どうやらベテラン勢も麻美ちゃんのブロックには独特のものを感じていたらしい。
まあそうだよねぇ。 あんな奇声発しながらブロックは的確だし。 本当に不思議だよ。 本当に何か匂いを感じているのかもしれない。 考え方も柔軟で、型にはまらない色々なブロックを見せる事も多い。 もちろん、春香ちゃんからブロックの基本はしっかり教わっているから、基本的なブロックの技術だって高い。 そこにジャンプ力が加わった今大会の麻美ちゃんは、一体どんな活躍を見せるのだろうか?
試合はクロアチアが勝利して勝ち点6に。 これで私達と同じ6点で並んで決勝トーナメント行き決定である。
「予想通りだね」
「まあ順当やな」
明日は私達があのクロアチアと試合するんだね。 間違いなく強敵だけど、私達なら勝てるはず。
「頑張ろうね皆」
「せやな!」
「はい!」
「おぅー」
「やったるで」
「おう!」
スタメン6人で気合いを入れ、明日のクロアチア戦に臨むのであった。
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