第801話 インタビュー

 ☆亜美視点☆


 番組の収録は順調に進んでいるようだ。 ゆりりんの練習体験のコーナーも大成功に終わり、次はいよいよ私達へのインタビュータイムとなるみたいです。 基本的にはいつも通り練習しながら、呼ばれたらゆりりんの方へ移動してインタビューを受けるよ。


「清水さんー、雪村さんー、お願いしまーす!」


 おっと、早速私と希望ちゃんが呼ばれたよ。 ちなみに私と希望ちゃんはセットにしてほしいと、昨日事前にお願いしてあったのだ。 かなりマシになったとはいえ、アガリ症で人見知りな希望ちゃんが1人でインタビューなんて、無理にもほどがあるからね。

 

「行くよ希望ちゃん」

「はぅ……」


 少し緊張した顔で、私の後ろに隠れるようについてくる希望ちゃん。 私と2人でもこの有様だもんね。


「よろしくね」

「よろしくお願いします」

「お願いしまふ」


 希望ちゃんは早くも噛み噛みである。


「本当にアガリ症なんだね」

「これでもマシになった方だよ」

「はぅはぅ」

「あはは」

「じゃあカメラスタンバイ! 3、2」


 ディレクターさんからキュウが入り仕事モードに切り替わるゆりりん。 さすがプロだねぇ。


「それではまずは日本が誇る、世界最高のOHアウトサイドヒッター清水亜美さんと、日本の守護神、雪村希望さんです」


 まずはゆりりんから紹介される。


「では少しお話を聞いてみましょう。 清水さんは現在、最高到達点で世界記録保持者という事ですが」

「はい。 公式記録でそうなっていますね」

「一番高い所からスパイクを打つのってどんな気分ですか?」

「うーん。 やっぱりブロックに引っかからずに好きな場所に打てるっていうのは良い気分ですね!」

「清水さんと言えば高さもそうですけど、あらゆるプレーが高いレベルでまとまっていますよね。 どういった練習をされてきたんですか?」

「うーん。 最初の頃は奈々ちゃ……藍沢さん、雪村さんの3人でただボールをトス回ししてたんです。 中学に入った後は最初はMBミドルブロッカーだったんですけど、その時から色んなポジションの練習を始めて、気付いたら色々できるようになってました」

「器用なんですね」

「あはは、どうでしょー?」

「あはは。 それでは次に雪村希望さん」

「ひゃい!」


 あ、ダメだこりゃ。 多分カメラが回ってることを意識しちゃって緊張してるんだろう。


「リラックスだよ希望ちゃん」

「ぅ、ぅん」

「では。 雪村さんはリベロというポジションだという事ですが。 Lというのはどういうポジションなんでしょうか?」


 まずはポジションについての説明を促すゆりりん。 上手いねぇ。 下手に応えに詰まる質問より、答えの分かっている質問を投げることにより、緊張を解す時間を作れるようにという配慮である。


「えーっと、Lというのは攻撃には参加できない守備専門のポジションなんですよぅ」


 お、いいねぇ。


「バレーボールと言えばアタッカーの派手なスパイクが注目されがちですけど、Lの華麗なレシーブも見所ですよね」

「はい! 私は攻撃は苦手なので、守備の要として日本チームを支えていきたいと思います」

「ありがとうございました」


 何とか希望ちゃんもインタビューを乗り切ったみたいだ。 良かった良かった。

 希望ちゃんはぺこりと頭を下げてそそくさとコートの方へと戻って行ってしまった。 可愛いねぇ。


「次は藍沢姉妹さんお願いしますー」

「はーい」

「うおー!」


 げ、元気だねぇ麻美ちゃん。



 ☆奈々美視点☆


 さて、亜美達のインタビューも終わったみたいだし今度は私……と麻美の番みたいね。


「なはは」

「シャキッとしてよね?」

「大丈夫だよー。 シャキッ……なははー」


 あ、ダメだこれ。

 いつもみたいニヤニヤとした表情で姫百合さんの前へとやってきた麻美。 まあ自然体って事で。


「それでは。 次は日本代表の新エース藍沢奈々美さんと、高校生MBで奈々美さんの妹さんの藍沢麻美さんです」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いしますー!」

「えーと、それではまずお姉さんの奈々美さんの方から。 日本のエースに抜擢されたとの事ですけど、プレッシャーなど感じたりはしていないですか?」

「プレッシャーはないです。 中学でも高校でもエースを張ってきたのでその点は平気ですね」

「頼もしいですね。 期待しても?」

「はい! 私のスパイクで日本を世界の頂点へ連れて行きます」

「ありがとうございます。 次は妹の麻美さん」

「はい!」

「麻美さんは今回3人ん選抜された高校生プレーヤーの内の1人ですけど、緊張とかはされてないですか?」

「ぬあっはっはっはー! 私は常にリラックスしてるので緊張とは無縁なんですー! なはははー!」


 あちゃー……この子はテレビだろうと何だろうといつものテンションなのね。 大丈夫かしらこれ?


「げ、元気ですね。 えーと、MBということですけど、世界の選手のスパイクを止められる自信は?」

「んー。 私には蒼井先輩のような身長が無いので、正直言って高身長の選手が集まる世界大会で活躍できるかはわからないけど、でも今その弱点を克服する為に特訓中です!」

「おお、特訓! これは本番が楽しみですね! ありがとうございました!」



 ◆◇◆◇◆◇



 ☆亜美視点☆


 その後も順番にインタビューを受けて、全員がインタビューを終えた。


「皆ありがとう! これで収録は終わりです!」

「お疲れ様ー」


 何とかテレビ番組の収録も終わり練習再開となった。 スタッフの方たちは片付けを始めて撤収していくようである。

 が……。


「あれ? 姫百合さんは行かなくて良いの?」

「うん? うん。 今日もここに泊まるから」

「えぇーっ?!」


 またとんでもないことを言い出したよこの人は。 マネージャーさんの方に視線を向けると溜息をつきながら首を振ってしまう。


「この人が言い出したら聞かないので……。 幸いというか今日明日はオフで仕事もありませんし……私は駅前のビジネスホテルに泊まって明日迎えに行きます」

「あ、あはは」


 どうやらこのマネージャーさんも結構苦労して入るっぽいねぇ。 トップアイドル姫百合凛さんは自由奔放な人のようです。


「じゃあ練習が終わるまでそこで待っててくれる?」

「はい」


 ゆりりんが言い出したら聞かないというのは昨日今日でよく理解したので、ここは私達も彼女を止める事に反対はしない。 それに、なんだかんだ言って楽しいからねぇ。



 ◆◇◆◇◆◇



 というわけで練習が終わって「皆の家」へと戻ってきた私達。


「そういえば今日収録した番組はいつ放送予定なの?」

「えーっと、皆が発つ前日だね」

「28日かしら。 東京のホテルにいる頃かしら? 皆で視ましょ」

「ですわねぇ」


 他の人達がどんなインタビューの受答えをしたのかも楽しみだねぇ。

 にしてもゆりりんって結構問題児なんだねぇ。 以前東京で遊んだ時もスタジオを抜け出して出て来たとかじゃなかったっけ?


「今日は夕飯作るの私も手伝っていいですか?」

「え、いいけど大丈夫?」

「大丈夫です!」


 うーん。 自炊とかするんだろうか? まあ、本人が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。 今日はゆりりんにも手伝ってもらおう。

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