第686話 アシスタント麻美
☆亜美視点☆
さて、お風呂から上がって来た私はリビングで少しだけゆっくりする。
お風呂で奈々ちゃんと大事なお話もできたし、心配事は無くなったね。
今日は新作を書き進めて行くとしますか。
「とはいえ、まだプロットすら出来てないけどねぇ」
何せ野球の事なんて1ミリも知らないところからのスタートだからね。
前作の駅伝の事もほとんど知らなかったけど、野球は色々と複雑なルールや、ポジションやらと覚える事も多い。
私は新しい小説の為に野球の本なんかも買ったり、インターネットで調べたりしている。
基本的な知識は頭に入ったのでプロットから始めようというわけである。
「なは」
……?
「なはは」
「うわわっ?! 麻美ちゃん?!」
今日、奈々ちゃんと宏ちゃんの他に、麻美ちゃんも今井家でお泊まりする事になっている。
髪が湿っていたり、可愛いパジャマを着ていたりするところを見ると、お風呂から上がって来たところだろう。
ソファーに座る私の後ろから顔だけを出してニコニコしている。
「ど、どうしたの?」
「んー。 亜美姉これからお仕事かなぁって」
「そだね。 そろそろプロットからやってこうかなと」
「アシの麻美、手伝います!」
「えと、それは良いんだけど。 プロットとか小説の出だしを書くだけだよ? そこまでお手伝いしてもらう事も無いと思うけど……」
「お夜食とか作ったり調べ物したりするよー」
「んーむ。 せっかくアシスタントやってくれるって言ってくれてるし、その辺お願いしちゃおっかな」
「おおー、任せろー!」
こんな時間でも元気な子である。
「亜美の邪魔だけはしないようにしなさいよ」
「ぶぅー! 私これでもプロなんだけどなー!」
「そうだったわね。 ふぁー……私は寝ようかしらね」
今日奈々ちゃんは宏ちゃんと2人で寝てもらうよ。
お部屋は元々夕ちゃんのご両親が使っていた部屋だ。
「おやすみ奈々ちゃん。 防音とか無いから気を付けてねっ」
「人様の家でしないわよ……」
呆れたように言いながらリビングを出て行く奈々ちゃんである。
「よし、私達も部屋行くよ」
「らじゃー」
基本的にお仕事は自分の部屋でやるスタイルです。
パソコンで原稿作るからねぇ。
麻美ちゃんを連れて自室へやって来た私は、早速パソコンを立ち上げて、原稿用のソフトを立ち上げる。
「タイトルどうしようかな」
「とりあえずプロット作った後でも良いんじゃないー?」
「それだと何だか作品のイメージ固まんないんだよねぇ」
「あぁ、なるほどねー。 じゃあまずはタイトルから考えるかー」
と、2人で頭を捻りながら今回の題材に合いそうなタイトル候補を挙げて行く。
「んー。 候補としてはこんなものかなぁ」
挙がった候補は3つ。 これでも半分ぐらいまで絞ったのだ。
「私的にはガールズナインが好みだねぇ」
「でもナインだとチームメンバーが最低限の9人設定にしなきゃいけなくなりそうだよー?」
「そこなんだよね」
私の考えている作品はよく見るような、一からチームを作って、最低限の人数で全国大会を目指すというような物ではないのだ。
この作品は、いわゆる中堅校に入学してきた主人公と幼馴染の女の子というバッテリーが、レギュラーを目指して練習し、そして全国大会を目指すという流れにしたい。
細かい内容はまだまだ詰めきれていないけど、大筋はそんな感じだ?
2人で色々と話し合った結果、1つの候補に決めた。
「白球少女」
「これが無難だねー」
変に凝った名前よりシンプル且つ内容もわかりやすそうなこちらにとりあえず仮決定となった。
「よし! じゃあサクッと主人公と幼馴染のキャラ設定とか舞台設定詰めて行くよ」
「だねー。 まず大事なのは主人公だよねー?」
「そうだね」
まずは主人公。 見た目、性格、野球選手としての実力等の設定を固めていき、その主人公に対しての幼馴染のキャラ設定も作りバランスを取っていく。
「やっぱりこうやって自分でキャラを生み出す瞬間が楽しいよねー?」
「うんうん。 どんな子にしようかなぁとか考えてるとワクワクするよ」
自分の思い描いた、自分の理想の主人公を生み出すこの感覚は、本当にワクワクするよ。
「亜美姉、登場人物は何人ぐらいになるの?」
「野球が題材だからねぇ。 チームメンバーや監督、ライバルなんかも考えたらかなりの数になりそうだけど、主に動かす人数はそこまで増やすつもりはないかな?」
「なるほどなるほど」
「ま、とにかく今はプロットと提出用の序章だけだからそこまで深くは考えないよ」
「そだねー」
「よし! キャラ設定もある程度固まったよ」
「ぬおー! スムーズだねー」
簡単にイラストも描いて、イメージを固めてしまう。
主人公の女の子はスポーツをやる上では少々不利な小柄な女の子。 明るいライトブラウンの髪で肩口までのセミロングの女の子。
ポジションは中学時代から投手で、そこそこ強いシニアチームに所属していた選手。
性格は明るくて度胸も座っており、どこか飄々とした人柄。
女房役の幼馴染の女の子は逆に高身長でクールなショートヘア女子。 冷静沈着でチームの司令塔もこなせる捕手。 打力もあり、中学時代は主人公と同じシニアチームでプレーしていた。
「とまあ、メインキャラ2人はこんな感じかな」
「いいねいいね! 早くも良い感じだよー。 さすが音羽奏だよー」
「いやいや、優秀なアシスタントのおかげだよ」
今日は麻美ちゃんがいてくれているおかげでスムーズに進んでいるよ。
自分1人だとどうしても後押しが無い分、これで良いかな? でもなー? って迷う時間が増えてしまい時間がかかってしまう。
麻美ちゃんに感謝である。
「そだ。 これが完成したら協力者にアサミの名前を入れるよ!」
「うぇ?! い、良いのー?!」
「うん。 これは音羽奏とアサミの初の合作になるよ!」
「合作!」
「うん。 だからこれからも時々で良いから力を貸してね」
「私で良かったらー!」
麻美ちゃんは心強い助っ人になってくれそうです。
お手伝いして貰うからにはお金も出さないとね。
アルバイトみたいなものだね。
「え、バイト代も出るのー?」
「もちろんだよ」
「やったー!」
バイト代を出すという話をすると、麻美ちゃんは大喜び。 原稿料や本の印税で結構稼いでるとは思うんだけとねぇ。
とにかくこれからはしばらく、私の正式なアシスタントとして麻美ちゃんに力を貸してもらう事になりました。
今日はこの後、簡単にプロットだけ仕上げて就寝する事にしました。
続きは明日にするよ。
せっかくだから今日はこのまま麻美ちゃんと一緒に寝る事に。
普段あんまり一緒寝ないから少し新鮮だ。
「亜美姉と2人で寝るなんていつぶりかなー?」
「小学生の頃以来だねぇ。 よく藍沢家に泊まりに行ってた頃に何回かあるぐらいだよ」
「そっかー」
私と麻美ちゃんは、白球少女がどんな作品になるか、どんな作品にしたいかを語り合いながら、気付けばどちらともなく眠りに落ちていた。
翌日、2人であーでもないこーでもないと相談しなが書いた序章を、千夏さんの送信。
返事待ちという事になりました。
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