第502話 麻美躍進?
☆麻美視点☆
11月──
お姉ちゃん達3年生組は毎日のように勉強会を行っている。
つまり、中々皆と遊びに行けなくなってしまったというわけだ。
夕也兄ぃ、亜美姉、希望姉も、オンラインゲームのログインを少し減らしている。
「……つまんないー」
とにかくつまらない。 その結果仕事がやたらと捗る。
「うおー!」
書き書き。
私のお仕事は小説家。 今までに何冊か本を出していて、若い層にそこそこ人気の売れっ子作家だよー。
って、自分で言うのもおかしいよねー。
実は今年の頭から書いている悲恋モノの新作。 あんまり筆が進んでいなかったとこなのです。
やはり悲恋モノっていうのは、書いてるとちょっと気分が滅入ってくるのだ。
「ついつい感情移入しちゃうんだよねー」
しかし書かないわけにもいかないので、今一気に書き進めているところなのだ。
そんな時である。
デレレレーン……
「うわ、この悪魔の着信音は」
私はある人の着信音をとても気味の悪い音にしている。 その相手っていうのは私の担当編集さん、結川千夏さんだ。
お仕事モードの時は凄く優秀なんだけど、一旦スイッチがOFFになるともう別人のようにダメになる。
「もしもしアサミですけ……」
「アサミちゃん! 良いニュースよ!」
「いいニュ……」
「さっき会議で決まったんだけどね!」
「うん」
「今、アサミちゃんが書いてる新作! あれをウチの雑誌で連載したいって話になったのよ!」
「え、連載?」
「そう! だから話を詰めたくて! あ、いつ来れる?」
「んーと…じゃあ」
「明日! 明日ね! はい決定! じゃ、よろしく!」
ツー……
「勝手に決めて切っちゃたよあの人」
と、まあこんな感じになるのだ。
「はぁ、明日の予定がいきなり確定しちゃったなー。 でも雑誌連載かー」
明日が楽しみになったねー。
◆◇◆◇◆◇
翌日──
お昼ご飯を食べた後で、私は編集社へと向かった。 仕事モードの千夏さんは真面目だし頼れるから大丈夫だろう。
社内に入りまずは千夏さんの所へ向かう。
コンコン……
「どうぞ」
「失礼しますー」
「いらっしゃい、待ってたわよアサミちゃん」
と、このように仕事モード中は普通なんだよね。
「会議室へ行きましょ」
「はーい」
促されるままに会議室へ移動する。 移動中に音羽奏──亜美姉の様子を訊かれたので「受験勉強で忙しそうだ」と答えておいた。
12月に新作発刊が予定されている亜美姉だけど、その時期はパーティーとかする余裕は無いかなー?
「さ、入って。 すぐに編集長も来られるわ」
「へ、編集長?」
「そう、うちで刊行してる小説雑誌の編集長ね」
「偉い人来るの聞いてないー」
「普通来るでしょう……」
むう、仕方ない。 大人っぽく振舞っていこう。
コンコン……
ガチャ……
「編集長。 お待ちしておりました。 この子がアサミちゃんです」
「初めまして、アサミです。 今日はよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると「こんな可愛い子があれほどの作品を」と、頷きながら向かいの席に着いた。
どうやら、私の小説を読んで評価もしてくれてるみたいだ。
「では早速だけど本題に入らせてもらうよ?」
「はい」
来た来た。
「アサミ君の次の作品の原稿を、今上がっているところまで読ませてもらったよ」
「は、はい」
「今のところ実にいい作品に仕上がっている。 あれは間違いなく売れると確信めいたものを感じてね」
おおー、編集長さんにも褒められたー。
「そこで、あの作品を先行して我が雑誌で連載したいと思ったんだ。 たしか、構想では全6章構成だったね?」
「はい」
「ウチの小説誌は隔月発刊。 次の発刊は1月なんだが、そこから1年かけて全6章を1章ずつ掲載。 再来年春に全てを一冊にまとめて小説を発刊する流れで行きたいんだがどうかね? 勿論、今書けている分と、これから上がってくる5章、6章分の原稿料も出させてもらうよ」
少し考えてみる。 これは中々良い話なのではないだろうか? これから先、もっと売れっ子作家になるためには、私という作家を幅広い人に知ってもらう必要がある。新たな読者層を獲得する為にここはチャレンジしてみるのが良いだろう。
「はい。 ぜひお願いします!」
「おお! ありがとう!」
「いえ! こちらこそ、私の作品を評価していただき感謝です!」
「では、話はまとまったね」
「はい、お願いします」
◆◇◆◇◆◇
話がまとまったので、編集社を後にした私は亜美姉に会う為に今井家へ向かった。
が、どうやら皆と一緒に、お隣の拠点で受験勉強中みたいだった。
報告は後回しになりそうかなぁ。
「んんー? 麻美ちゃんどしたの?」
「あ、亜美姉!」
家に戻ろうとすると、ちょうど拠点から出て来た亜美姉が声を掛けてくれた。
どうやら今から今夜の夕食の買い出しに出掛けるみたいだ。
「亜美姉に報告があるんだよー!」
「報告?」
「うん。 あ、私も買い出しついていくから歩きながら話しよー」
「うん」
ということで亜美姉と歩き出したところで早速亜美姉に今日まとまった話を報告する。
「実は昨日千夏さんから電話があってねー」
「ち、千夏さん? 大変だったねぇ」
「あ、あははー」
亜美姉も随分と千夏さんにやられているようだ。 メールでわからない内容があったら即座に電話がかかって来るらしい。 亜美姉も大変そうだ。
「で?」
「うん。 実はね、今書いてる新作が先行で小説誌に連載されるんだよ」
「おおー? 例の悲恋モノ?」
「うん! 編集長さんが気に入ったらしくて是非って」
「凄いじゃない! やったねぇ!」
「ありがとう! やる気出てきたよー」
「うんうん。 私の本も来月だし、2人とも順調だねぇ」
「そだねー!」
「んー! 負けてられないねぇ。 私も受験終わったら新作書こうかなぁ」
「おおー、亜美姉もやる気だー」
「もちろんだよー」
「よーし! 私と亜美姉で小説界に旋風を巻きおこそー!」
「おー!」
と、2人で盛り上がるのであった。
私は残りの5章と6章を書き上げないといけないねー。 帰ったら早速執筆だよー。
「あ、そうそう! クリスマスなんだけど、奈央ちゃんが広い場所を借りてクリスマスパーティーやるんだけど来る? 私の本の発売祝いも兼ねてるんだけど、麻美ちゃんの作品の連載祝いも兼ねる?」
「おおー! 行く行くー!」
受験勉強で忙しい時期でそんなのは無いと思ってたけど、やっぱり息抜きをするのも大事だという事で羽目を外す日は作るとの事。
クリスマスの予定は今から空けておこう。
◆◇◆◇◆◇
その日から私もどんどん小説の執筆を進めていくのだった。 バレーボールに小説。 来年には私も受験勉強が本格化してくる。忙しくなるけど、頑張って全部やっていくんだよー。
私の作品が連載開始されるのは来年の1月号で決定したという連絡も入り、私も更にやる気になる。
このまま人気作家目指して頑張るぞー。
それに、夕也兄ぃも事もまだまだ頑張るぞぉ……。 こっちはちょっと大変そうだけど。
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