第466話 恋人交換?
☆亜美視点☆
今日は夏休みの最終日なんだけど、朝から私の寝室を2階から1階に移動する為に家具の移動を奈々ちゃん、宏ちゃんに手伝ってもらっていた。
これで階段の上り下りを極力しなくて良くなった。 ただ、足が完治したら今度は家具を戻さないといけない。
「亜美」
シャワーを浴びに行くという奈々ちゃんに呼ばれたので振り返る。
「んん?」
「お礼の話だけどね」
そだそだ。 お手伝いしてくれたお礼をしなくちゃね。 何か欲しいものがあるって言ってたっけ?
「うん」
「夕也と1日デートしたいなーなんて」
んん? えーっと? 今なんて言ったのかな? 夕ちゃんと1日デート?
「んん?」
奈々ちゃんが夕ちゃんとデートしたいって言ったの?
「えええええっ?!」
私が大声を上げると、奈々ちゃんは耳を塞いで苦笑いした。
そりゃ大声も出すよぉ。
「え、なんでなんでどうして? どして夕ちゃんとデートしたいの?」
ちょっと頭がついていかないんだけど。
奈々ちゃんは、そんな私に何食わぬ顔で言う。
「んー? 1回ぐらいはあいつともデートしてみたいなぁってなんとなく思ったのよ」
「そ、そうなの?」
「えぇ」
うーん。 そりゃ、奈々ちゃんも夕ちゃんに対して一定以上の好意を持ってるって事は私も知ってるけど……。
「うーん……ちなみに夕ちゃんにはその事は?」
「もう話してあって、亜美が良いって言ったらOKだって言ってるわ」
と、既に夕ちゃんには話を通してあるらしい。 これは予想してたけどやっぱり先手を打たれていたね。
今日は重たい家具の移動も手伝ってくれたし、普段色々お世話にもなってるし……。
でもでも、ただただ夕ちゃんを貸すのはやっぱり面白くないねぇ。
よぉし、それなら……。
「んじゃさ、その代わりに私も宏ちゃんと今度デートしていい?」
「へ? あんたが宏太と?」
ここで私は交換条件を出す。 夕ちゃんとのデートを許可する代わりに、私も宏ちゃんをどこかで1日借りるというもの。 これじゃあお礼にならないと言われるかもしれないけど、夕ちゃんを貸し出すっていうのはお礼の分だけでは許可出来ないね。
奈々ちゃんは顎に手を当てて少し考えるような仕草を見せる。
「よし、良いわよ。 その条件飲むわ」
「飲むんだ?!」
ここは半々ぐらいだと思ってたけど、結構早い判断であった。 そんな風にあっさり決められちゃあ仕方ないね。
「わかったよ。 夕ちゃんとのデート許可するよ」
「よしよし」
奈々ちゃんは満足そうに頷く。 なんだかよくわからないことになっちゃったよ。
奈々ちゃんは「じゃ、後で夕也のこと、改めて誘うから」と言い、お風呂場へと消えていった。
「うーむ……これは何かが起こる予感だよ」
さすがに夕ちゃんと奈々ちゃんがお互いのパートナーを捨てて付き合い出すなんて事にはならないと思うけど……。
「うーむ」
夕ちゃんにはしっかり釘を刺しておくとしよう。
◆◇◆◇◆◇
奈々ちゃんがシャワーから出てくるのを待ってから、皆で少し遅い朝食を食べる。
奈々ちゃんは、朝食の席では夕ちゃんは誘わず、後で2人になったタイミングで誘うつもりらしい。
宏ちゃんと希望ちゃんには聞かれたくないってところかな?
一応その辺は考慮するらしい。
宏ちゃんは案外気にしないだろうけど、希望ちゃんが色々と言ってきそうだもんね。 自分の彼氏じゃないのに。
「ふぅ、ご馳走さん!」
「食べるの速いねぇ、宏ちゃん」
「おう!」
「もっとゆっくり噛んで食べなさいよ……」
「そうだよぅ」
奈々ちゃんと希望ちゃんから注意されるも「知らん!」と、腕を組み偉そうな態度を見せる宏ちゃん。 2人からも「しょうがないな」みたいな顔をされている。
宏ちゃんらしいねぇ。
朝食を終え、お皿などの洗い物を奈々ちゃんと希望ちゃんがしてくれている間、私は宏ちゃんと2人になるタイミングが出来た。
良いタイミングなので、さっき奈々ちゃんに突き付けた条件である、宏ちゃんとのデート。
そのデートに誘おうと思う。
「宏ちゃん宏ちゃん」
「何だー?」
何て気の抜けた返事なんだろう? まあ、いっか。
「いつになるかわかんないけど、この足が治ったらさ」
「んー?」
「私と1日デートしよ?」
「おー……? お?」
相変わらず気の抜けた返事をしてきたと思ったら急に真顔になりこちらを向く。
わかるわかる。 一瞬何を言われたかわからなくなって、頭の中で反芻するんだよね。
んで、理解が追いつくと……。
「のあっ?! な、なな、どうした急に?!」
と、こんな風になる。 皆一緒なんだねぇ。
宏ちゃんは、しばらく私の顔を見ながら、餌を待つ鯉みたいに口をパクパクさせていたかと思うと、急に周りをキョロキョロと見回した。
ドッキリだと思っているか、奈々ちゃんがいないか確認しているんだろう。
「一応、奈々ちゃんには話通してあるから安心してね」
「通してるのか?! よく許されたな……」
「その件については私からは何も言わない事にするよ」
必要なら、奈々ちゃんから宏ちゃんに話すだろうし、私からは話すような事ではない。
宏ちゃんは「むむぅ……」と少し考え込む。
うーむ、ちょっと前の宏ちゃんなら両手を上げて大喜びするようなお誘いだと思うけど、今は私の事もそれほど好きってわけじゃないのかな?
まあ、奈々ちゃんと付き合い出して丸2年だし、それが普通か。
「な、奈々美は許可したんだな?」
「うん、バッチリ」
「夕也は?」
ここで今度は私の心配をしてくれる宏ちゃん。
気が回るねぇ。
「そっちもまあ、多分平気だと思うよ」
奈々ちゃんとデートするんだから、それを理由に責めてやれば夕ちゃんも許さないわけにはいかないだろう。
「うーむ……1つ良いか? 何で急にそんな事を?」
最もな疑問を口にする宏ちゃん。 恋人でもない女の子にいきなりデートに誘われたら、そりゃ不思議に思うだろう。
どう応えるべきか少し思案する。
本当のところは、奈々ちゃんと夕ちゃんがデートするから、その交換条件としてである。
しかし、それは宏ちゃんに対してあまりに失礼な理由である。
なのでその返答は無い。
するともう一つの理由。 単純に宏ちゃんとデートしてみたいと思ったから。
実は奈々ちゃんにこの交換条件を出したのは、奈々ちゃんの話を聞いて、私も宏ちゃんとデートしてみたいと思ったからである。
もし、私と宏ちゃんがお付き合いしていたらどうなっていたか……そこに興味があったのは事実だ。
「おーい」
「あぅ」
やばい、随分と思案するのに時間をかけてしまったようだ。
これでは何かテキトーな応えを考えたみたいになる。
「ごめんごめん。 理由は簡単だよ。 単純に宏ちゃんとデートしてみたいから。 実は興味があったんだよ。 2人が付き合ってたらどんなデートしていたのか」
「本当かぁ?」
疑いの眼差しを向けてくる宏ちゃんに、私はちょっとムッとした表情をして本当だと告げる。
それを受けて宏ちゃんは「うーむ」と、腕を組み更に考えて……。
「OK、わかった。 デートしよう」
「わーい」
宏ちゃんとデートの約束を交わしたのだった。
足が治るのはまだまだ先になりそうだから、待たせる事になっちゃうけど、宏ちゃんはいつでも構わないと言ってくれた。
これはこれで少し楽しみが増えたねぇ。
尚、奈々ちゃんは近い内に夕ちゃんとデートするらしい。
どんな感じだったか後で聞き出すとしよう。
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