第248話 クアドラプルデート
今日は、アニマル牧場という場所に遊びに来ている。
クアドラプルデートという一風変わったデートで、奈々ちゃん宏ちゃんペア、奈央ちゃん春くんペア、紗希ちゃん柏原君ペア、そして私と夕ちゃんペアの4組で合同デートである。
「ここがアニマル牧場かー」
「わくわく」
紗希ちゃんはとても楽しみにしていたので、早く入りたくてうずうずしているようだ。
どんな感じの場所なのだろう。 楽しみである。
「じゃ、入場券買って入ろう」
「おー」
「ちなみにここは西條グループとは……」
「関係ないわよー」
ということらしい。
「西條グループでも手を出してないところがあるんだな」
「何でもかんでもやってるわけじゃないわよ、佐々木君」
「なるほど」
入場券を買っていざ入場。
中は本当に牧場といった感じであった。
「おおおー。 見て見て裕樹! 馬だよ馬!」
「本当だね」
「乗馬体験とかできるんだって。 後でやってみようよ」
「いいわね」
「ポニーレースとかもあるらしいぞ」
ポニーにとってレースが出来るようだ。
面白そうである。
「じゃあ、順番に行こうか」
「まずはどこへ行くんだ?」
「亜美ちゃん!」
もう、皆私にプランニングを丸投げするんだから……。
しょうがないなー。
「牛さんの乳搾り体験が出来るみたいだから、まずそこ行こうと思います」
「乳搾りかぁ」
「うん。 えーと、マップによるとこっちかな」
入り口で貰った場内マップを見て移動を開始する。
「牛の乳搾りなんて初めてだからドキドキするよ」
「でも毎晩搾ってもらってるんでしょー?」
と、紗希ちゃんがそんな事を言い出すので私は──。
「週に2~3回だし、お乳も出ないよ!」
「きゃはは! そっかそっか! 出たら大変だもんね」
紗希ちゃんは大爆笑するのだった。
「亜美、あんたもうちょっと落ち着いた返答しなさいよ? いつも自爆してるわよあんた」
「あぅ……」
「いつもなのかお前」
夕ちゃんに呆れられてしまった。
つい咄嗟に正直に返事しちゃうんだよねぇ。
「そういう奈々ちゃんはどうなのよぉ? 毎晩なんでしょう?」
「教えないわよー」
「ずるいー」
「女子って男子の前でもこんな話するんですね……」
「紗希はオープンだからね……」
春くんと柏原君は、少し困ったような顔で私達を眺めていた。
少しばかり歩いていると、牛さんのコーナーへとやって来た。
「あったあった。 乳搾り体験コーナー」
「あそこで受付やってるわね。 行きましょ」
受付で番号札を貰って順番を待つ間、搾り方のレクチャーを受ける。
しっかり覚えたよ。
男子は後ろで見てるだけで良いと言うので、私達女子4人で乳搾りをやってみるよ。
「まずは牛さんに挨拶と……。 今からお乳搾らせてもらうねぇ。 よろしく」
なでなで……。
そして、脇にしゃがんでゆっくりと搾り始める。
「おお……出る出る」
凄い勢いで出るんだね。
結構癖になるかもこれ。
「凄い凄いー」
「結構楽しいわねこれ」
他の牛さんの方でも、紗希ちゃんや奈央ちゃんが楽しそうに体験している。
奈々ちゃんも隣の牛さんの乳を搾っているようだ。
「加減が難しいわねぇ」
「握り潰すなよ奈々美」
「潰すわけないでしょうが!」
握力65kgだもんね。
体験の後は、搾りたてを飲ませてもらった。
「ありがとね、牛さん」
最後もきちんとお礼をしてから、牛さんから離れる。
「どうだったよ」
「うん。 癖になりそう。 男の子が胸を揉みたがる気持ちもなんとなくわかるよ」
「きゃはは」
「亜美、それはどうなのよ」
「亜美ちゃん……」
「?」
皆が溜め息をついて私の事を冷めた目で見つめていた。
何で?
「まぁ、いっか。 じゃあちょっと早いけどお昼にしよう」
時間は12時前だけど、先にお昼を食べてしまって午後から一気に遊び倒す。
その計画だ。
「牧場内にレストランがあるからそこで食べるよ。 こっちこっち」
「はーい」
「本当に亜美はスムーズ進行ね」
「これが噂の亜美ちゃんプランデート!」
女子達の間では密かに噂になっていた私のプランニング力。
それを目の当たりにした皆は、絶賛するのだった。
そんなにすごい事ではないと思うのだけど。
牧場内のほぼほぼ中央に、レストランが建っていた。
雰囲気を壊さないように、見た目も牧舎の様になっている。
「なぁ、このレストラン牛肉とか扱ってんぞ……」
「これは食べづらそうですね」
「そ、そだね」
先程可愛い牛さんを見て乳搾りまでしたところだし、たしかに食べづらい。
ということもなく──。
「美味い」
「やっぱり新鮮なお肉は美味しいわね」
「そうだね。 あ、こら紗希、取るなよー」
「よそ見してる方が悪いのよー」
皆、お肉の魔力には逆らえなかったのである。
ドリンクは、今朝絞った新鮮なミルク。 ある程度味も調整してあるらしく良く冷えていてこれも美味しい。
「牧場ならではって感じね」
「うんうん」
「んで、次は何するんだ?」
「ポニーレースが13時からあるんだよ。 それに参加します。 電話で予約してあるからすぐ乗れるよ」
「さすが亜美ちゃんだな。 手回しが良い」
「以前亜美ちゃんのプランでデートした時も思ったけど、練られてるわよねー」
「あはは、無駄なく遊びたいじゃない」
「まあね」
「それにしてもポニーか……僕乗ったことないんだけど」
「そんなの私だってないわよー」
普通はそんなものに乗る機会なんて、そうそうあるものじゃない。
私だって初めてだし。
「私はあるけどね」
「さすが奈央ちゃんだね」
やっぱり奈央ちゃんは普通じゃないね。
いやいや、一般人とは違うって意味でね。
ポニーにも普通の馬にも乗馬経験があるらしい。
「ちなみに北上君には乗ったことあるの?」
と、また紗希ちゃんのド直球な質問が飛ぶ。
奈央ちゃんは顔を真っ赤にして「無いわよ!」と返答していた。
まだ無いんだね。 何て健全なお付き合いをしているんだろう。
男子達もさすがに困ったような表情で話の成り行きを見守っているのだった。
紗希ちゃんがいるとどうしてもこうなることが多いのは、ある程度仕方ないのだけど。
◆◇◆◇◆◇
さて、昼食も終えてゆっくりしたところで、ポニーレースに参加するために移動を開始した。
マップによると、小さなコースがあるようなのでそこへ向かう。
「ポニーさんポニーさんー」
「また変な歌を」
私が歌を口ずさむと、夕ちゃんにツッコまれた。
別に良いじゃないの……。
「あ、あそこじゃない?」
「うん、あそこだね」
ポニーコーナーと書かれた門が建っており、その中にはそこそこ大きなコースがあった。
ここで走るんだね。
周りには観客もいる。
「あの、13時から予約していた清水以下7名です」
「あ、はい。 ではこちらへどうぞー」
受付に話を通してコース上に入る。
私達は乗り方や注意事項を聞いて、レースに備える。
試しに乗らせてもらって、軽く輪乗りをして感覚を掴む。
皆、上手だけど柏原君は怪しい。
紗希ちゃん曰く鈍くさいとのこと。
やっぱりの〇太くんなんだねぇ。
さて、時間もやってきたので、いよいよレース開始だよ。
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