第16話 大金ゲット!
俺達三人は今、ラインハルト様の馬車をデボネアまで警護する任に付いている。
隊列は、斥候としてエメルダ、俺とドゥカティさんが前列、その後ろに馬車に乗る御者代わりのモトロウラさん、その横にラインハルト様、後列はリオノーラが務める。
本来ならこの人数の倍いても良いぐらいなのだが、今それを言うのは酷だろう。
今いる人数で、街まで無事到着させなくてはならない為、俺達は必要以上に警戒した。
時間的にも厳しいので、休みなく進んだ。幸いな事に、道中は盗賊も出なかったが、街の近くで一角兎等が出ただけだった(勿論一狩りした)ので、夕方までに街に着くことが出来た。
街の門の前まで来たのを確認して、ラインハルト様とモトロウラ様が馬車から降りてきた。
すると、衛兵二人がが飛んできて何か話をし、一人が慌てて街の中に入っていく。
俺達は、ラインハルト様の後に続いてデボネアの街に入った。本来なら街に入る際の審査等があるのだが、さすがに免除された。
それにしても、さすがにデカい!。昨日まで居た
「アルさん、ありがとうございます。貴方達のお陰で、無事街に到着することが出来ました」
「あ、いえいえ、こちらも依頼されましたから、仕事として全うしたまでです」
俺達は、恐縮しきりだ。なんで、こんなに丁寧に挨拶をしてくれるんだ?。
貴族って、もっと偉そうにしているもんだとばかり思っていたからだ。この人に会ってから、貴族というものの考え方が変わり始めた。
「急なお願いにも嫌な顔せずに、街まで護衛して頂いたのです。是非、この後屋敷までお越し頂きたいのですが・・・」
や、屋敷に・・・!?
ま、マズイマズイ!。もしかしたらフィオナに合ってしまうかもしれん・・・
まだ、心の準備ができてないしー・・・
「あ、その、私達は平民ですし貴族様への礼儀や作法もよく分からないのです。ですから、ご無礼があってはいけませんので、私達はここで・・・」
「そんなこと気にしませんから、安心して下さい」
「しかし・・・、私達はギルドの依頼でこの街まで来たので、まずこちらのギルドに顔を出したいのです」
「そうですか・・・。いや、無理にとは言いません。それでは、もし何かお困りのことがあればコレを持って、あそこに見える屋敷の門番に見せて下さい。必ず、貴方がたのお力になりましょう」
そういうと、ラインハルト様は俺に腰に付けていた懐中時計を渡して、後ろに見える白い豪奢な建物を刺した。いや、屋敷というよりちょっとした城だろ、アレ・・・
そして渡された懐中時計の蓋には、何やら剣と盾が描かれた紋章の様なものが彫られている。
「え!?、こんな大事なものを私にですか?。いけません!」
「良いのです。これは私からの感謝の気持ちなのです。それと、これも・・・」
すると、執事のモトロウラさんが手に袋を持って、俺の前に来て渡してきた。
その袋は、一見してすぐに貨幣が入っている袋だと分かる。しかも、ちょっと膨らんでいる・・・。
「それと、今はこれぐらいしかお渡しできませんが、約束通りの報酬です・・・」
そういって申し訳なさそうに渡すラインハルト様。え?、いやいや十分すぎますよ?。
俺は笑顔になりそうになる顔を何とかポーカーフェイスを装い、報酬を受け取る。
「ありがとうござ・・・いっっっっっ!!・・・」
脇腹に痛みを感じて見てみると、エメルダがギューってつねってる。
彼女が、『ニヤニヤしないで下さい、恥ずかしいでしょ』と小声で訴えてくる。
え?、俺ニヤついてた?。あんなにポーカーフェイス作ってたのに??
「お名残り惜しいですが、そ、それでは俺達はここで・・・」
「それではラインハルト様、ごきげんよう」
俺とエメルダが挨拶をし、リオノーラも会釈をした。
これ以上、ボロが出ないうちに俺達は足早にその場を去った。
「ねぇ~アルさん、あそこで分かれて良かったの?。あたし、あのお城みたいなお屋敷に入って見たかったなぁ~」
そう言って猫耳をパタパタさせ、モフモフ尻尾をブンブン振っている。
あぁ~、可愛いな~触りたいな~・・・
「リオノーラも行ってみたかった?」
「いや、私は特に無いな。貴族には、あまり良い印象がないのでな・・・」
「そうか、だから警護の道中もさっきも殆ど喋らなかったのか?」
「それもあるが・・・、あえて話すことも無かったしな」
リオノーラは貴族に良い印象がない、ということは以前に何かあったのか・・・?
だけど、話したくないのを無理やり聞くのは野暮だし、話したくなれば自分で話すだろう。
それまで待てば良いだけのことだ。
俺はスパッとその考えを切り替えて、この街のギルドを探し出した。
流石に大きい街なのでなかなか見つけられなかった為、先に今日宿泊する宿を探すことにした。
ギルドは明日でもいいけど、宿屋は今日見つけないと街中で野宿するなんて、恥ずかしいことになるのは嫌だしな。
暫く街中を宿屋探しをしがてら散策していたら、綺麗そうな宿屋を見つけた。
早速、中に入って見ると既に一階の食堂兼酒場からは、良い匂いがしてくる。
テーブル席を抜けて宿屋受付に行き、空きを聞いてみる。
一人用の部屋が三部屋開いていたので、すぐに取って貰った。
宿代は、流石は大きな街なんで一泊朝食付で銀貨1枚銅貨5枚とちょっとお高い・・・が、他に探してる時間もないし仕方ない。
俺達は一旦各自の部屋に行き荷物を置き、俺の部屋に集まった。
「みんな集まったな。さて、これはさっきラインハルト様に頂いた報酬だ。これを山分けしようと思う」
「アル、良いのか?。こういうのは、大体パーティのリーダーが預かるもんじゃないのか?」
「えー?嫌だよ~、こんな大金俺が預かんの~。だって、みんなで依頼をこなしたんだから、みんなに渡すのは当たり前じゃん」
「あたしは嬉しいですけど~・・・。他のパーティでは、少しパーティの貯蓄として差し引いてから、山分けするとこもあるようですよ?」
「えー?嫌だよ~、めんどくさい~・・・」
「アルはしっかりしてると思っていたが、意外と金にはルーズなんだな・・・」
「俺はお金のことに関しては、どうもダメでね・・・。あ、浪費するとかじゃなくてさ、大金持ってると怖いんだわ」
「いが~~~い!。まあ、アルさんらしいと言えば、らしいけど~」
「ということで、ここで三等分しま~~~す!」
俺はそう言って、頂いた金袋を出して机の上に全て出した。
そこで驚いたのは、金銀銅貨が入り混じっていたが、半分近くが金貨だった。
「さ、さすが名家のシェラード家・・・、こんなたくさんの金貨は見たことねえ・・・」
「あ、あたしも・・・」
「確かにこんな大金、一人で持ってるのは不安でしかないわな・・・」
みんな、ほぼ一緒の感想だった。
俺は若干震える手で、一枚ずつ金貨銀貨銅貨を分けていく。
しばし、二人の注目を集めながら全ての貨幣をようやく分けれた。
全部で、金貨16枚、銀貨11枚、銅貨23枚になった。
これを、俺が金貨6枚、銀貨3枚、銅貨7枚となった。
エメルダが金貨5枚、銀貨4枚、銅貨8枚。
リオノーラが金貨5枚、銀貨4枚、銅貨8枚。
俺が少し多めになってしまったが、これは二人からリーダーが多くなるのは当たり前だ、と言われたこともあり、また三人でうまく割り切れなかったため、こういう結果になった。
それでも、正直十分すぎるほどの金額を手にしたのだ。
俺達は早速一階に下りていき、護衛成功と大金ゲットのお祝いをしたのだった。
なお、この時ばかりは俺もエメルダが酒を飲むのを止めなかった。
リオノーラも珍しく顔を赤くするまで飲んでいたし、俺も今日は酒を飲みたい気分だったから止めなかったが、この後結構大変だったのは言うまでもない・・・
何が大変だったかって・・・?、それは勿論・・・
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