エリュシオン・パブリックレポート・アーカイブス
深月 慧
EPA:1 VAF ( Variable Augmented / Armed Frame )
民間用では可変型拡張外骨格。可変式拡張型強化外装、単にフレームとも。
軍用のものだと可変式武装外骨格、アームド・フレームと呼ばれている。
『大析出』後に勃発した、楽園戦争と統一戦争を機に大きく普及した全長四~五 メートルほどの人型ロボットの一種である。
軍・民間に共通する特徴としては、不可製結晶体を触媒とした分離変換炉『ICリアクター(ICR)』を動力源としていること、脚部にはインホイールモーター式の全方位ホイールを内蔵した
動力系については、ICRによって発電された電力の大半を超伝導モーターもしくは人工筋肉などに回すことでアクチュエータ並びにセンサー、コンピュータを機能させ、残りは
胴部にはパイロットの安全性確保のため、前方にはICRや蓄電ユニット、コンピュータが集中的に収められ、その後ろに脱出機構と一体化したコックピットユニットを置く構造となっている。
腕部にはあらゆる場所での作業における汎用性の確保のため、人体を模した腕と指が搭載されており、手動制御ではセンチメートル単位での、戦後普及したホロソフィアを用いたBMI制御では更に細かいマニピュレートが可能である。
近年では加速していく情報化とそれに伴う多岐にわたる規格への出現に適応するため、手のひらに多規格対応型の無線端子が搭載されている機種が増えつつある。
軍用VAFと民間用VAFの違いを挙げるとするならば、民間機以上のパイロット保護機構、避弾経始を考慮し、前面の被弾面積を可能な限り減らすよう設計された機体デザインと高度化した戦術エッジAIによる思考加速機能『シンクミッション・アクセラレーション・プロセス(TAP)』を始めとする戦闘支援機能の存在である。
VAFのパイロットはでリクライニングした状態で搭乗する。
そしてナノマシンを用いた脳内インプラントデバイス『ホロソフィア』を介して機体と接続した状態で操縦する。
操縦こそ思考制御がメインだが、補助的にトラックボールを搭載した感圧式レバーやペダルを用いることもある。
民間機の場合だとハーネスを着ける程度だが、軍用となると複雑なマニューバとそれに伴う高Gがかかる高速機動が多いため、ハーネスに加えて頭部を物理的に固定する事で徹底的にかつ確実にパイロットの脳を保護するようになっている。
エルティア国家連合体――に所属し、ウルティア連皇国と同じ中核に位置していた極東の島国『ヒノマ皇国』が擁するサイバネティックスを始めとする高度な技術を元にVAFの原型となる機体が作られたとされているが、大析出の影響もあって詳細は不明とされている。
しかし、ヒノマ出身の技術者が多く携わり、居住していたエリュシオンが独自のVAFを実用化し、実戦投入したことは紛れもない事実である。
統一戦争におけるアヴァリオ戦役で旧ウルティア連皇国連合に遺されていた技術を元に量産にこぎつけた北方皇国が戦闘車両として初めて実戦投入。
ほぼ同時期にエリュシオンでも静馬聡明が率いる自警団(後のセーフガード)を始めとする勢力がVAFを用いた自治権闘争を本格化させた。
双方ともに戦傷者から優先的に搭乗させていたとされている。
他国家はアヴィリア結成前だったとは言え、その戦果が与えた影響は決して少なくなく、VAFの実用化に邁進していくことになるが、どれも制御用AIなどといった技術的困難や政治的な理由などの原因で完成には至らず、またできたとしてもデッドコピーの域に留まるという有様であった。
アヴィリア結成後は、エリュシオンが提供した設計図をベースに〈オディウス〉が開発され配備されることになった。
軍用VAFは戦闘車両として運用されることが多いが、歩兵武装の延長として運用されることも想定されているため、ありとあらゆる武装――無論、大型・高火力のものも含む――が使えるようになっている。
エリュシオンとアヴィリア・アコードにおける標準的な兵装は12.7mm
また、機体背部・側面にはハードポイントが設けられており、長期に及ぶ作戦行動や、レールガン用の大型蓄電ユニットや緊急冷却ユニット、
北方皇国、アヴィリア、エリュシオンの機体の設計思想は異なれど、整備性・汎用性を重視する姿勢は共通し、それは今も昔も変わっていない。
しかし、ナショナリズムの高潮に伴うアヴィリア内部の不和やエリュシオンの干渉を嫌って、独自機体の創造に邁進している国が多く、技術の復興・発展と規格化も進んだこともあり、今後エリュシオン・北方皇国以外の国が独自に設計した機体が多く誕生し、そして『様々な形』で運用されていくものと思われる。
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