第34話 パンチ
(・・・鍛錬してる場合じゃないしな。今日はやめとこう)
小次郎は椅子から立ちあがり、ひとまずコーヒーを入れることにした。教官室に食材はないが、コーヒーメーカーはあるのだ。
「・・・朝食どうしようかな」
コーヒーメーカーからコーヒーの香りが立ち昇り、残っていた眠気を弾き飛ばしてくれた。
一応紙コップを2つ出して、香耶の分も入れた。
「・・・さ、起こすか」
小次郎はコップをテーブルに置き、香耶の肩に手を伸ばした。
「・・・って待て待て」
(来ないとは思うが、肩をたたいてる状況なんて見られてみろ。ただでさえ、ゼロに近い俺の社会的ライフがマイナスになる!)
伸ばしかけた手を引っ込め、しばし考えた。眠ったのが遅かったこともあり、小次郎の頭は正常ではなかった。
(よし、頭にしよう。少し揺らせば、起きてくれる確率も高い!)
「その前にっと」
小次郎は一応、人がいないことを確認するために、教官室の扉を開けて、顔を出そうとした。
しかし、顔だけ出して確認するつもりだったのが、椅子で寝たのが体に悪かったのか、よろけて外に出てしまった。
「っと、腰いてえ。やっぱりちゃんとしたとこで寝るべきだった・・な、」
「え、小次郎君?」
外には私服姿の識が立っていた。スポーツウエアのような服装なので、朝練でもしに来たのだろう。
「お、おはよう、朝練?」
「うん、そうだよ。でも腰痛いなんて、いったい何してたの?」
(あっぶねえ~、入られてたら終わってた~~)
小次郎がほっとしていると、その間に識が教官室の扉を開けていた。
「え、あ、ちょ、ちょっ、ちょっと、待って!」
ガチャ
「・・・え、望月さん?。どうしてここで寝て、る・・・っ!!!」
小次郎の声が届く前に識は教官室の中の人物を見てしまった。そして、最高にまずい誤解が、この瞬間に生まれた。
(え、望月さんが寝てる・・・。で、小次郎くんが腰痛いって、・・・腰って!!!)
識の顔がみるみる赤く染まった。
「あ、あのね、識せんせ? これには事情が、あってね・・・」
「・・・・・小次郎君?」
識が拳を握り締めながら、ゆっくりと振り返った。
「は、はい?」
「この、ドスケベえええええ!」
バキ!
識の左ストレートがものの見事に、小次郎の顔面に入った。
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「・・・・・
「ほっんとうにごめんなさい!」
あの後、小次郎が識のパンチで吹っ飛んだ音により香耶が起き、事情を説明してらった。
そして今、香耶が小次郎の殴られたところに氷を当てて、話を続けていた。
「小次郎、大丈夫?」
「・・・なんとか。予想以上の威力だったけど」
「だから、ごめんって~~~~」
※次回更新 4月21日 火曜日 0:00
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