第32話 訓練Ⅱ
香耶の炎が舞い、闘技場が赤く照らされる。その中で、小次郎はただ立っていた。
「はあ!!」
炎の斬撃が香耶から放たれ、まっすぐ小次郎に迫ってきた。小次郎はその場で回転して、紙一重で避けた。
(あまり紙一重はやりたくはないが、本気で大きく避けたらやる気を削いじゃいそうだしな)
ゴオオオ!!
今度は刀をまっすぐ構えて、炎を纏わせ、突っ込んできた。殺す気満々の突進だ。
「ったく、」
小次郎は敢えて踏み込み、左手を突き出して香耶の手首を取り、右手も掌底で顎を軽くたたいた。
「ぶふ⁉」
香耶の口から吸ったばかりの空気が飛び出し、大きくのけぞった。
「呼吸が大きい。呼吸によって攻撃のタイミングってのは簡単にわかるんだ」
小次郎は香耶を正面から見据えながら言った。香耶は悔しそうな顔で、顎を押さえている。
「なるべく静かに呼吸をしてみろ。呼吸はいつも意識な」
「わかった」
香耶は剣を構えなおし、深呼吸した。はずむ肩を落ち着け、目を見開く。
「ふっ!」
無数の炎斬撃が飛んでくる。小次郎は体を左右に揺らして、時折回転も混ぜながら、かわしていく。
「ん~、さっきよりはマシかな。よし、それじゃ炎に空気を混ぜてみろ」
「はあ⁉」
そう言ったとたん、香耶が動きを止めた。
「炎に空気を混ぜるって、異能使ってもできるわけないでしょ!」
「いや、できるはずだけどな。同僚でやってるやつがいた」
「そ、それで何が変わるのよ!」
「炎が見えなくなる。ガスバーナー、使ったことあるだろ?」
「・・・・・」
炎は空気を多く混ぜると、青色になり、最終的にはほとんど見えなくなる。酸素限定で混ぜたほうがいいが、それは空気操作系の能力じゃなきゃ無理だ。
「やってみろ。炎で周りの空気を包み込んで、圧縮するイメージだ」
「・・・わかった」
(おおう、素直だな・・・)
香耶が剣を正眼に構え、目をつむった。剣から炎が舞い上がり、それは弧を描いて球体に収束した。
そこから炎の球体が小さくなり始め、どれに伴って炎も青くなっていった。
「・・・・・で、できた!」
(よくできるなあ。やっぱりスペックは高いんだよな、こいつ)
「そっちのほうが火力も上がる。それで攻撃してみろ」
「言われなくても!」
香耶は剣を大きく振りかぶり、青白い炎弾を飛ばした。
「容赦ねえな、おい!」
小次郎はその場で伏せ、足を高速で回転させて、炎を少しだけ拡散させることで防御した。
(・・いかんせん元の火力が高いから、避けるのも一苦労だよ)
「おおお! これ、すご~い!」
起き上がると、香耶がはしゃいでいた。小次郎は苦笑いしながら、そんな彼女を眺めた。
※次回更新 4月14日 火曜日 0:00
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