第30話 メール


 --------------------------学園、寮内


 「それで、教えてくれるの?」


 香耶が腰に手を当てて、小次郎に問いかけた。小次郎は下げていた頭を上げて、少しだけ頬を緩めた。


 「・・・わかった。教えるよ。人を殺す方法」


 「っ! ・・・よろしくお願いします」


 (へえ、意外だな)


 素直に頭を下げた香耶を小次郎は珍しそうに眺めた。


 「・・・・今日はもう遅いから自分の部屋に戻りな。俺はしばらくこの部屋で謹慎だから、どこにも行かないし」


 「・・・うん、わかった」


 そういって、香耶は小次郎に背を向けて、扉に手をかけた。


 「そういえば、あなたのことはどう呼べばいいの? 狩谷先生とか?」


 「いや、呼び捨てでいいよ。苗字でも名前でも。あと敬語もなしにしよう。同い年くらいだし」


 「うん、そうする。私のことも呼び捨てでいいよ」


 「わかった」


 「それじゃ、」


 「ああ、お休み」


 「・・・お休み」


 パタン、


 入ってきた時とは違い、扉がしまる音が小次郎だけの部屋に響いた。


 (・・・・これで良かったのかな)


 小次郎は自分の復讐時の思いをさせたくないと、理由もなく思ったのだ。なぜそんな感情を生徒に抱いたかはわからない。


 (ま、直接手を下した感が少ないやり方にすれば、大丈夫だろう)


 「・・・・・・」


 小次郎はベットに倒れ込み、まどろみ始めた。深夜に襲撃され、嫌な記憶までも思い出した疲労がどっと押し寄せてくる。


 (しばらくは暇だしな・・・・・・・)


 --------------------------翌朝


 「あ、」


 早朝、起きて鍛錬をし終わった小次郎はあることに気づいた。


 「そういえば俺、カウンセラーだったわ」


 (・・・・向いてないどころか、やっちゃだめじゃないか?)


 「・・・・・まあいっか」


 小次郎が前線情報を見ようと、パソコンを開くとメールが届いていた。


 「サム?・・・・」


 陣営で上官のパシリをしていた兵士だ。そろそろ任期が終わるはずだったが。


 ~~~~~~~~


 ・ケリーへ


 よう、元気してるか? 俺はやっと任期が終わってフロリダに戻ったよ。それでさ、実家の農場継いで楽しくやってこうと思ってたんだけど、軍の奴から噂が流れてきてな。


 上官がお前に戻ってきてほしいらしいんだと。近々、任務の関係で上官は日本に行くらしいから、一応気を付けときな。


 ~~~~~~~~


 「まじか・・・・・・」


 (この生活に順応してきている今、前線に戻るのはきついと思うけどな。それに戻る気はないし)


 「戦闘しか能がなくても、好きなわけじゃない」


 ※次回更新 4月7日 火曜日 0:00

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る