episode.『09月23日(木)』



いつも思う


話しかけてもいいのだろうかって


声を掛ける勇気はないけれど


好きな人の傍にいたい


だからひっそりと歩み寄って


気づかれるまで待っている


息を潜めて背後に立つから


大体いつも驚かれる


でもそのおかげで


笑い話から一日が始まる


普通に話しかけるより


私は断然


こっちの方が好きなんです



     ※



暗い表情を見せるくらいなら


笑い話にして過ごしたい


そう思ってどんな時でも


笑顔をつくるようにした


辛い時でも悲しい時でも


怒りが込み上げて来ようと


他人にぶつけることはなかった


感情に蓋をしていたら


いつか壊れると誰かが言った


私は壊れていることを自覚しながら


見て見ぬふりをしていたんだ



      ※



目の前の大切な人を傷つけるのは嫌だけど


そのせいで自分を押し殺すのも嫌だった


だから時折一人になって


自分の人生を見つめ直していた


どっちが正しいのかなんてわからない


ただやっぱり私は皆の笑顔が好きだから


自分を取り繕う


たとえこんな自分に気づかれなくても


私は道化を演じてしまうのだろう


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る