episode.『12月24日(木)』



小さい頃、恥ずかしがり屋だった


小学生の頃は無邪気だった


中学になって、少し性根が暗くなった


志望校に落ちて、幼馴染の中で唯一、落ちこぼれになった


滑り止めで高校に入学した


完全に無口になった


下に見られたくなくて、自分磨きをするようになった


勉強も運動も試行錯誤で


一人で頑張っていた



      ※



中学の頃の勉強が一番難しかった


その原因は高校に入って気づいた


授業に全く集中できていなかったからだった


いつも板書だけで、他のことばかり考えていた


次の休憩時間のこと、次の授業のこと、帰ったら何しよう


勉強しているようで


私はいつも、退屈な毎日から抜け出すためのことばかり考えていた



      ※



高校を出て世界の広さを知った


たぶん同年代の誰よりも気づくのが遅かった


だからこそ余計に愕然とした


周囲の平凡さ


その大人しさと平和な世界


もっと煩い人でもいれば


こんなにも絶望せずに済んだ


自分が変われば世界も変わる


そんなのは嘘だった


世界が変わるから自分も変わらざるを得なかったんだ



      ※



人生において


自分が何をしていれば


最も幸福であれるのか


時が経つにつれ


それを明確に考えさせられる


その答えが


自分らしく生きることだった


周囲を気にしていても


何の利益もない


誰かに合わせることが一番の苦だった


それを強いられていたから


余計に辛いことだと知った


思いのままに生きたかった



      ※



自分が自分らしくある理由


大抵のことはできたから


何かをやれと言われたら


二つ返事で従順に動く


できない事は事前にわかる


直感が無理だと囁くんだ


記憶力と感覚に任せ試行錯誤


経験と想像をもとに予測判断


一人で何でもこなすのは


助けのない世界だったから


見限った先に


それが一番だと知ったんだ



      ※



誰にでも明るく振る舞える人


そんな人が眩しくて尊敬する


笑顔一つで幸せなんだとわかる


絶望と失望と見限り


諦めた先に身につけた


愛想笑いばかり浮かべる


そんな自分とは違う


幸せな世界を生きた住人


違う現実を生きた幸せ者


環境に恵まれ生きている


見る度に思うよ


神様は不公平で


現実は無慈悲だと


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