episode.『12月04日(金)』

成人式がある


誰かに会うかもしれない


きっと皆変わっている


知っている人も


知らない人も


別人のように変貌を遂げ


中身はさほど変わりない


それでも話しかけられはしない


私はただ元気であればそれでいいと


眺めているだけで十分なんだ


貴方の中に私はもういない


それを知るのが怖いんだ


私は傍観者だ



違うんだ


時間が経って


知っている人でさえ


別人のように変わってて


たとえどれだけ根っこが変わっていなくても


今と昔とでは距離が違うから


知らぬ間に関係に亀裂が生じて


友達だったのは昔の話で


今でも仲良くやれるかと言われたら


昔のようになんてできるわけなくて


怖くて話しかけられないんだ



私が知っているのは昔の皆


皆はとっくに別に新しい友達をたくさんつくってて


私だけがあの時のまま取り残されているみたいで


私の知っている皆はもういない


だからもう旧友でさえ話しかけられない


よくよく考えてみれば


一緒に遊んではいても


皆のことそこまで知らないから


余計に話しかけられないんだ



      ※



今の自分は一人ぼっちです


なんて昔の自分を知らない人になら言える


そうなった経緯だって話せる


でも昔を知っている人に


何をどう説明したところで


そんなのは嘘で作り話の戯言だと思われる


どれだけ真剣に話そうと


そう繕ってきた過去がある


信じてもらえても辛いだけ


だから誰も自分を知らない



      ※



本音なんて自分だけが知っていればいい


同情も理解も求めてなんかいない


助言もいらない


ただ自分の信じる道を進むだけ


それでどれだけ後悔が増えても構わない


どれだけ惨めで醜くても


精一杯生きたんだって


自分だけが知っている


自分だけは裏切らない


自分だけは信用できる


頼れるのはいつも一人だ



      ※



二十歳になって色々なことがあった


具体的にと聞かれたら困る


ただ今までとは違い


急に何もかもが切り替わっていた


若さという言葉で片付けられることばかりだった


何もかもが失われていった


これだけは何も変わらない


失ってばかりの人生だった


現実という無慈悲な世界が


何もかもを奪って行ったんだ



      ※



死にたいと何度も思った


死のうとしたこともある


それでもできなかった


怖かったのとは違う


納得できなかったんだ


ここで死ねば敗北者になる


ただ諦めただけの弱者


それが許せなかった


無慈悲な現実に屈する


何も残せないのが癪で


やり切ってダメなら


自殺しようと思ったんだ


死ぬために生きてるんだ



      ※



貴方の知らない私がいる


それを私だけが知っている


独り言のように幾つもの


本音、弱音、泣き言、自虐


そんなことばかり呟いて


それを明かすまでは頑張る


何食わぬ顔で


冗談ばかり言って


笑ってやる


耐えきれなくなったら


その時は迷わず言うよ


私のいない世界に向けて


やっぱり世界はクソだったよって



      ※



弱音を吐いて


誰かが助けてくれるのか?


泣き言を吐いて


世界が変わるのか?


本音を吐いて


誰が信じてくれる?


自虐をされて


お前は目を背けないのか?


優しくして


何が返ってきた?


何もないだろ


頼れるのはいつだって自分一人


誰かに合わせるだけ時間の無駄


自分が幸福になれる道を歩む方が有意義だ



      ※



誰かを助けて


幸せになれるならいい


誰かと過ごして


楽しいなら構わない


その時だけの瞬間は


人生において最も捨て難い思い出になるから


けれど他人に合わせて


自分の幸せを取り零すなら


そんな相手がどうなろうと


構いはしない


誰かのために生きても


ロクな試しがない


私を見放した者など知りはしない



      ※



私を見て目を逸らす者よ


お前もまた現実の僕だ


見て見ぬふりをして


私を見放して行った


お前に対しては何も思わん


ただお前には何を言う資格もないということ


私は嫌われるのが得意


その証明が成り立った


目には見えない存在から


誰かの心に何かを残して


忘れ去られて生きいく


私が殺された要因になれ


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