悩み事

思春期真っ盛りなので、悩むことは人並みにあります。ただ、それを人に話すのは気が引けます。

クラスメイトに打ち明けたら、大抵からかわれます。何話くらいか前で書いたように、僕は「お笑い担当」のようなポジションなので、コンプレックスをさらけ出せば当然そこを突かれます。そういうときもしっかり僕は役割を守って受け身を取ります。ただ僕がいじり返すと反応が悪くなります。やられるのは慣れてない人達みたいです。

家族にも打ち明けたくないです。母親は僕を煽るようにして叱るので、「どうせ話してもイラつくだけだ」と思ってしまって話す気になれません。普段は仲が良いのですが、こういう場面での家族は嫌いです。

教師にも打ち明ける気になりません。そもそも普通の先生と僕みたいなダメ生徒には圧倒的な壁があります。教師は、真面目に勉強して資格を取得してなれる職業です。当然その道のりは険しいでしょうし、相当の努力もしたと思います。そんな真っ直ぐな人だから、僕みたいな屈折した人間の悩みなど聞いたところで理解できないのです。


僕は中学二年生の頃、自分の長所がなさすぎて悩んでいました。成績が悪く、スポーツも苦手で、部活もスランプ気味で、ありとあらゆるものが出来なくなっていました。

そんな中、自然教室という行事を迎えました。田舎の宿に泊まって、様々な催しをするというものです。僕らは班を組まされ、カレーライスを作ることになりました。

しかし、僕は料理などまともに出来ないので役に立ちません。せめて何か手伝いをしようとしても班のメンバーがすでに仕事を終わらせていたため、自分はただいるだけになってしまっていました。

そうして、僕以外の力でカレーは完成しました。

僕の分の皿が目の前に置かれた時は「なんで自分は役にも立てないのに飯だけは一丁前に食えるんだろう」と思って食べる気が失せていました。

それでも食べないわけにはいきません。僕は一口食べました。なんだかやたら美味しく感じられました。班のメンバーがおいしいね、と口々に言っているのが聞こえた時、とうとう我慢ならなくなった僕は泣きました。

僕は泣くのがヘタクソなので、声を出さなければ泣けません。涙を流すのと同時に、うめくような声がどうしても出てしまうのです。先生に気づかれ、僕はその場から離され、先生と2人きりにされました。

先生には「自分が最近何にもできない人間になっていると感じていること」、「カレー作りでなんの役にも立てなかったこと」、「役に立たなかったくせにカレーを食べているのが悔しかったこと」を正直に話しました。

僕は悩みを打ち明けてとてもスッキリしました。

先生は僕の悩みを聞いて、「そうか、もっと役に立てるように自分から動いて頑張らないとな」と僕に言いました。

僕はここで僕の悩みの全てを殺す理屈が欲しかったのですが、先生は単純な解決策しか出してくれませんでした。それは悪いことではありません。解決策だって、単純ではありますが間違いない解決方法です。しかし、僕はそれを受け入れられませんでした。

どうするべきかを教えるより、その時の僕が欲していたのは僕のマイナスな感情を説き伏せる一言が欲しかったのです。それには先生の一言は、あまりにも安っぽく感じられて仕方がありませんでした。


「悩みとは、乗り越えるものであり、殺せるものではない」と最近気づきました。

壊したり、砕いたり出来るものではなく、よじ登って超えていくものみたいです。

僕の人生に悩みはきっと尽きないでしょう。そのうち、ジャンプで超えられるようになればいいのですが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る