はぁ~⁉


まったく気付かなかった。


『私達はお互いのことには

敏感なのに自分のことに関しては

恐ろしく鈍感ということですね』


そういうことなんだろうなぁ……


『牽制するには

ちょうどいいかもしれません』


不安顔だったのが

不敵な笑みに変わった。


結華のこういうところも愛している。


『じゃぁ、三人の予定を聞いて

話をすることにしようか』



―土曜日―


僕達は例のアクセサリー店に来ていた。


あの日、救急車を呼んでくれた

店員さんにお礼をするために。


『あの日はありがとうございました』


二人で紙袋を渡すと

受け取れないと恐縮された。


「当たり前のことを

したまでですから(焦)」


まだ、学生で

あろうという年なのに

しっかりした子だ。


『あの日、私はお恥ずかしながら

彼が刺されたことに動揺して

動けなかったところを

助けていただいたので、

受け取っていただけると

嬉しいのです』


「…………わかりました。

ありがたく受け取らせていただきます」


よかった、彼が受け取ってくれて。


二人でもう一度

お礼を言って店を出た。



―翌月曜日―


僕達は三人を会議室に呼び

週末の予定を聞き出した。


これで僕と結華の関係が

特別だと感づいたと思う。


一週間、二人は

もやもやした気持ちのまま

過ごすことになるだろうね。


僕は結華を渡す気はないし、

結華も僕を渡さないと言ってくれた。


一日、また一日と

過ぎていき土曜日になった。


そう、三人が来る日だ。


時間は三時頃にした。



チャイムが鳴った。


『外、

寒かったんじゃないですか?


どうぞ、上がってくだしい』


結華がいう

胡散臭い笑顔で迎え入れた。



「お邪魔するよ」


吹屋先生が最初に言った。


流石、最年長。



バラすために

わざわざ足を

運んでもらったのだし

此処は《家》だ。


呼び方もそのままで

いいだろうと決め、

玄関に結華を呼んだ。


『結華、三人が来てくれたよ』


僕の呼び方に

二人は驚き、一人は笑っている。


『すみません、

カップを出していたもので

お出迎えが遅くなってしまいました』


とりあえず、三人をリビングに案内し、

結華が出していたカップにコーヒーを淹れた。


「で、本題だが、二人は……」


みなまで言わなくても

分かっている。


『吹屋先生の予想通り

僕達は付き合っています。


そして、名義は僕ですが

此処で一緒に暮らしています』


隣に座っている結華は

黙ったまま、僕達の話を聞いている。


「やっぱり、そうだと思ったよ」


吹屋先生はそう言って笑った。


五人の中で唯一既婚者で

おまけに最年長だから

落ち着いていて、

僕達の関係を知っも

こうして笑っている。


『吹屋先生、

ご存知だったんだですか⁉』


結華が初めて口を開いた。


「うん、なんとなく

そうじゃないかなと思っていたんだ」


気付いていても

黙ってくれてたんだから

いい人だよね。


「ついでに、

二人の恋心にも気付いていたよ」


今さっき、僕達に向けてくれた

優しい笑顔から一変して

ニヤリと悪い笑みを浮かべて言った。


恐るべし年長者(苦笑)


あの後、二人には

僕達を諦めてもらうことで

話が纏まった。


学校では普通に

話そうということになり、

あの噂も二人が言い出したことだった。


少しの間、騒がしいだろうけど

こうして、僕達に

穏やかな日々が戻っきた。

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