第一章:BLADE DANCERS/04

「でやぁぁぁぁっ!!」

 戒斗が狙撃で次々とコフィンを始末していく傍ら、アンジェは威力特化形態のスカーレットフォームにフォームチェンジしていて。その両腕の格闘戦用大型ガントレット『スカーレット・フィスト』で以て、コングに猛烈な拳の嵐を叩き込んでいく。

「グオオオオ!!」

 速度を犠牲に、一撃の威力に特化した形態だ。流石に硬いコングといえども彼女の拳にはひとたまりもなく、アンジェの一撃が叩き込まれる度に身体から激しく火花を散らしながら、苦悶の雄叫びを漏らしている。

「このまま、一気に仕留める……!!」

 だがアンジェは手を緩めることなく、更に放った強烈な一撃でコングを大きく吹っ飛ばし。そうすれば一度大きく間合いを取り、スカーレット・フィストに包まれた左手をグッと握り締めれば、その拳に昂ぶる感情を乗せていく。

「一撃入魂……! 叩き付ける、全速力でッ!!」

 雄叫びを上げ、大きく踏み込んでアンジェは走り出す。

 走りながら、己の内側で強く、強く気を練り。その胸中に秘めた思いを高め……それを全力で叩き付けんとして、アンジェは全てを左の拳へと集中させる。

 どくん、どくんと高まる鼓動とは裏腹に、心は奇妙なまでに静まりかえっていて。胸の昂ぶりとは対照的に、熱く燃え滾る拳とは対照的に……アンジェの心は、不思議なぐらいに落ち着いていた。

「僕の覚悟……受けきれるものなら、受け止めてみせろッ!!」

 そして――――練りに練った気の高まりが、感情の昂ぶりが最高潮に達し、明鏡止水のように心が落ち着いた瞬間。アンジェは走りながら腰部スラスターを吹かし、更に勢いを付けながら突っ走っていく。

 拳を叩き付けるべき相手は、コング・バンディットのみ。幾ら硬さを勝ち誇ろうと――――この拳で、貫き通せぬ壁はないッ!!

「貫き通す……止められるものなら、止めてみせろぉぉぉぉぉっ!!」

 腹の底からの叫び声を上げながら、アンジェは左の拳を、スカーレット・フィストに包まれた拳をコングの胸に叩き付けた。

 ――――衝撃。

 叩き付けた左の拳から伝わってくるのは、確かな手応え。最大限まで練り込んだ気を乗せた彼女の拳が、コングの胸を一直線にブン殴る。

「グ、オオオオ……!!」

 アンジェの拳、そこから伝わる強烈なエネルギーがコングの胸に叩き付けられ。そうすれば表皮を通り越し、内側へと駆け抜けたエネルギーが……瞬時に暴発した。

「グオオオオ――――ッ!!」

 スカーレット・フィスト越しに叩き付けられた強烈なエネルギーがコングの体内で暴走すれば、コングは断末魔の雄叫びを上げ……そのまま、深紅の焔に焼かれて爆発四散してしまう。

 ――――『スカーレット・インパクト』。

 神姫ヴァーミリオン・ミラージュ、スカーレットフォームの必殺技を真正面からモロに喰らってしまえば、幾ら頑丈さがウリのコング・バンディットといえどもただでは済まず。コングは内側から爆発するかのように、強烈な深紅の焔にその身を焼かれていた。

 大爆発したコングの内側から弾け飛んだ焔は、アンジェをも包み込む巨大な火柱となって立体駐車場の空気を焦がす。

 だが――――そんな焔の中から、アンジェは悠々とした足取りで歩み出てきていた。

「これが……僕の覚悟だ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る