21話 変態レベルが上がった!

「なあレオン。 城ってどこにあるんだ? この町にはそんなものないだろ?」

「それについては私が説明しますね」


そう言ってラピスさんは説明を始めた。


「まず城がある場所ですが、 この町から一日馬車を使って南に行くとある王都クリスタルにあります。 そして城から手紙が届いたことは、 王からの勅命が入っているということです」


王ね。 やっぱりこの世界には、 王がいるのか。

ということは貴族もいるのか?

それにしても俺に何の用事だ?

てかなぜ王は、 俺の存在を知っているんだ?


「シュン様。 手紙はこちらです」


レオンは手紙を俺に手渡してきたが俺は字が読めないためどうしたものかと困っていたらラピスさんが俺の代わりに手紙を読んでくれた。

そしてラピスさんは手紙を読みとても驚いた表情をしていた。

「ラピスさん。 何が書いてあったんですか?」

「手紙の内容では明日の正午までに城にこい。 さもなければシュン様を打ち首にするといった内容のものが」


はあ! 急すぎるだろ! しかも手紙が届いたの今日だろ!


「おい! レオン! この町に馬車はあるのか!」

「あります! しかし一つ問題がありまして……」

「その問題とは?」

「馬車を操縦できるものが今いないのです……」

「まじかよ……」


俺の人生オワタ……


「あ、 あの馬車なら私操縦できますよ?」


そう言ったのは、 我が心のオアシスラピスさんだ。


「ほ、 本当ですか!」


俺は感動のあまりハクの膝枕から立ち上がり、 ラピスさんの手を握った。


「は、 はい……」

「俊? まだお仕置きが足りないの?」

「千鶴! 今はお前のお仕置きに付き合っている時間はない! おいレオン! 馬車は何処だ!」

「こちらです!」

「ちょっと俊! 待ちなさい!」

「俊さん置いてかないでください!」

「ま、 待つのだシュン!」

「シュンは、 色々と大変な人生を送っているな……」


 そして俺達六人は、 レオンに案内された場所へ行き、 いざ馬車に乗り出発しようとしたのだがここで一つ問題が発生した。

それは……


「俊の隣は私よ!」

「こればかりは絶対に譲れません!」

「わ、 私も俊の隣がいいぞ!」


俺の隣の席をめぐり、 千鶴、 ルビー、 ハクの三人が揉めだしたのである。


「お前らそんなことやってる余裕はないんだよ!」

「俊は黙ってて!」

「そうですよ! これは私達女の闘いなんです!」

「私もその通りだと思う!」


こ、 こいつら!


「三人は何をもめているのだ?」


エルザはどうやら三人が何をそんなに必死に鳴っているのか理解できないようだ。

因みにエルザの席は俺の膝の上に決定している。


「あのそろそろ行かないと間に合わなくなるのですが......」

「すみません! すぐにこの三馬鹿に決めさせるので!」


結局俺の隣の席をめぐる戦いはデスマッチではなく、 じゃんけんにきまった。

最初ハクはルールを理解していないようだったので俺がルールを説明するとすぐに理解してくれた。


「よし。いくわよ!」

「「「じゃんけん!」」」

「「「ポン!」」」


じゃんけんの結果負けたのは、 ルビーだった。


「ふふふ。 やっぱり私と俊は、 運命にも愛されている最高の相性なのよ!」

「勝ててよかった……」

「なんでですか! こんなのありえません! 私運だけは最高値なんですよ! それなのにこの仕打ち納得いきません!」

「ほら決まったことだしさっさと乗れ!」

「わかったわ!」

「了解した」

「俊さんもう一度だけ! もう一度だけお願いします!」

「ならそんなお前にはご褒美をやろう」

「ご褒美ですか?」


俺はそう言ったとルビーをロープでぐるぐる巻きにしてから、 馬車に括り付けた。

その作業を終えた後俺も馬車に乗った。


「ラピスさん走り始めていいですよ!」

「わかりました!」

「ちょっと待ってください俊さん! これって……」


ルビーは、 最後まで言い切ることはできなかった。

理由は単純である。

ルビーは今引きずられているからである。

正直あまり馬車の中は大きくなかったので、 一人邪魔だと思ってたんだよな。


「俊さん! 助けてください! さすがに俊さんの望むことを何でもしてあげたいと思う私でもこれは流石につらいです!」

「まる一日頑張ったら何かご褒美上げてもいいぞ~」

「頑張ります!」


チョロイなこいつ。

結局ルビーの奴は俺たちが王都につくまで引きずられつづけた。

一応王都に入る前に検問があったためその時生きてる生存確認をしようとして顔を見たのだが、 顔は真っ赤で、 口からは、 夥しい量の涎と思わしきものが付着しており、 そんなルビーの表情は完全に放送事故レベルのものであった。


「お、 おい......ついたけど大丈夫か?」

「はあはあ......ついたんですか」

「あ、 ああ」

「俊さ......馬車に引きづられるのって......気持ちいいですね......」


うわ~なんかものすごく嫌な予感がする。


「最初は痛いだけだったんですけどだんだんと引きずられているうちにこれは俊さんからの愛の鞭ではないのかと思い始めて......そう考えるとだんだん下半身の方が熱くなってきてそれで……」

「もういい! それ以上は言うな! 俺が悪かったから! もう二度としないから! 帰ってこい!」

「え......もうしてくれないんですか?」

「しない! しない!」

「そうですか……」


なんだよその子供が玩具を取られたときのような顔!

てかこいつの変態レベルがヤバすぎるんだけど!

今俺の肌鳥肌立ってるよ!


「あの、 それでご褒美の件なんですけど……」

「あ、 そう言えばそんなこと言ったな」


正直この変態のことだから何を要求されるかわからんが、 無理そうなお願いなら口では許可しといて、 約束守らなければいいだけだもんな。


「あの......それなら私と既成事実を……ゴホン! 間違えました。 私と今度デートしてください」


こいつ最初何言おうとしたんだ?

俺の聞き間違いじゃないなら既成事実を作ってほしいと言おうとした気がしたんだけどな?

きっと気のせいだよね。 だって今はデートでいい言って言ってるもんね! ハッハハ!

でもこいつとデートか。

まあそれぐらいならいいか。


「いいぞ」

「ほ、 本当ですか!」


ルビーは相当嬉しかったようでぴょんぴょん飛んでいる。


「お、 落ち着けって!」

「心がぴょんぴょんするんじゃ~」


どんだけ嬉しかったんだよ。


「シュン様。 そろそろ順番ですので馬車の中に入ってください 」

「わかりました。 おいルビー。早く入れ」

「え、 いいんですか?」

「仕方ないだろ。 さすがにあの状態で入ると警察沙汰になりそうだし……」


それに今回は流石にやりすぎたと俺も反省しているのだ。

まあ恥ずかしいから口には出さないが。


「しゅ、 俊さんのデレ顔きたぁぁぁ!」

「デレてねぇよ! いいからとっと乗れ!」

「もう! 本当に素直じゃないんですからぁ!」

「やっぱりさっきの約束なしに……」

「ああ! すいません! 調子に乗りました! だからそれだけは勘弁してください! 私の胸を好きにしていいですから!」

「お前の胸なんてなんの価値もないわ! むしろ俺の手が汚れる!」

「あう! ありがとうございます!」


そんなコントをやった後俺は、 ルビーと一緒に馬車の中へ戻り無事検問を通過した。

また馬車については、 検問所の職員の人が預かってくれるようだ。


「さてここが王都クリスタルか」

「なんかすごい大きさね」

「人がいっぱいいるのだ!」

「さ、 さすがにこんなに人がいる場所は緊張するな……」

「ふふふ、 私は空から見てたので知ってるんですけどね」

「お前には聞いてねぇよ」

「はう!」

「あの皆さん。 とりあえず城まで案内するので私についてきてもらえますか?」

「わかりました。 ほら行くぞ!」

「ねぇ俊! 城での用事が終わったらデートしない? もちろん二人きりで」

「誰がお前とデートなんかするかよ! 鏡見てから出直してこい!」

「ふふふ、 俊。 城に入る前にどうやらお仕置きが必要ね……」


千鶴からのお仕置きを回避しながら俺は城へと向かうのであった。

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