リミッター解除
夜が明け、朝になる。昼を過ぎ、また夜になる。
結局、俺はウェイズリーを足止めする方法を思いつかなかった。
ウェイズリーを足止めできなければ連射したところで全てヒットするとは限らない。集中砲火を浴びせなければ仕留めきれないだろう。
だが、一夜明けるとなんだか気が楽になった。
もはや足止めはいらない。どこから撃ってもウェイズリーは俺に気付く。もし鎧に自信があるなら避けることはしないはずだ。俺はあの不敵な笑みを忘れない。
ユーイェンの情報によると、ウェイズリーはまだあのアパートにいるらしい。襲撃されたというのに逃げないのは余裕がある証拠だ。
正直、ウェイズリーが逃げなかったのは俺の癪に障った。俺を迎え撃とうとしているのが丸わかりで、お前なんか敵じゃないと言われているようだった。
俺たちが向かったのは昨日の廃工場。あえて狙撃ポイントは変えなかった。
「ねぇ、バース。本当にここで大丈夫なの?」
「大丈夫だ。ウェイズリーが使うのはレイピア、遠距離系の武器は持ち合わせてない。距離さえあれば一方的に攻撃できるだろうさ」
「でも、ウェイズリーには魔眼があるんでしょ? その気になれば私たちを見つけて殺すこともできるんじゃない?」
「どちらにしてももう遅い。昨日の時点で俺たちはやつに喧嘩を売ったんだ、殺らなきゃ殺られる」
「ミイラ取りがミイラになったら意味ないものね」
「そうだな。それはそうと、回復っていつもどうやってるんだ?」
「あら、知らなかったの? 対象の身体に触れるだけよ。まあ、こっちも精神力を使うんだけどね」
「へぇ、それは知らなかったな」
「それもそうね。だって、バースを回復する時はいつも気を失ってるから」
俺は苦笑した。
確かにそうだ。だが、それだけチェリーコードに命を救われたということにもなる。
俺はチェリーコードの手を掴み、軽く握った。
「な、何?」
「こうしていれば回復できるんだろ?」
「う、うん……なんか恥ずかしいわね。起きてるバースを回復するなんて」
チェリーコードが目を逸らす。それでも手のひらからは優しい温かさが伝わってくる。
今回、スナイパーライフルは二挺使う。いつものに加えて、ロウワンの市場で買った安物の最新式だ。
リバースを狙撃する時に使った遠隔操作を利用し、二挺をシンクロさせる。一発ヒットすればもう一発もヒットするため、単純に威力は二倍だ。
ふと視線を感じる。
ウェイズリーだ。
魔眼を研ぎ澄まし、狙いをつける。狙うは主に頭部。フェイントで鎧も狙っていくが、恐らくそちらは通らないだろう。
弾丸が飛び立つ。
一発目、二発目を皮切りに、弾丸は横薙ぎの雨のごとくウェイズリーへと降り注いだ。
案の定、ウェイズリーは弾丸を避けようともしない。ただこちらに向かって悠然と歩みを進めてくる。
十発、二十発、三十発、四十発、五十発。そこから先は数えていない。
視界が歪んできた。
リミッターがかかり、トリガーにロックがかかる。リミッター解除。構わず撃ち続ける。
ちくしょう、このままじゃこっちが持たない。
しかし、渾身の連射は無駄ではなかった。
限界寸前で撃ち出した弾丸が、ついに堅牢な兜を粉砕したのだ。
兜の破片はウェイズリーの右目に突き刺さり、血液の涙を流させた。
俺は脱力し、膝から崩れ落ちた。
顔を上げた時にはもうウェイズリーはいなかった。
「一矢報いたな……でも、まだ終わりじゃない……」
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