本編 始まりの物語

 その時、歴史は静かに、しかし確実に、新たなステージに向かって動き始めた。


 聖なる夜――とある地方貴族の館で、四人の男達はたがいに目を見つめあう。

 そして、精力的な面構つらがまえの男が、こう宣言した。

こころざしを同じくする友よ。それではこれより、帝国が独占せし『セイントヴァレンタインの福音』をあまねく世界へ解き放つため、聖戦を開始しようではないか!」

 彼の向かい側に立っていた弟は、おのが熱を内にたぎらせつつ、静かにうなづく。

 彼の左側にいた、生まれも育ちも信条も異なるものの、寄って立つところが似通っている男が、にやりと笑う。

 そして、彼の右側にいた、背丈の低い男が明るい笑みを浮かべる。

 彼らこそ、後年『伝説の四本槍』と呼ばれることとなる、勇者達である。


 常にたみとともにある庶民派貴族、ポッキィ伯爵(CV:神谷浩〇)。

 信念を内に秘めし剣士、トッポー(CV:井上麻里〇)。

 千変万化の技遣い、ブリッツ(CV:谷山紀〇)。

 変幻自在な愛嬌者ムードメイカー、ヤンヤン(CV:下野〇)。


 彼らの戦い――第二次聖戦が、今まさに始まろうとしていた。


 *


「実に小賢こざかしい」

 間者の報告を聞いた皇帝は、そう言って鼻で笑った。

所詮しょせん、ぽっと出の貴族が、己が人望を過信して無謀な戦いを始めただけのことではないか。こんなものは反乱とすら呼べぬ。ただのならず者の遠吠えに他ならない」

「御意にございます」

 宰相が追従する。

「正規軍を派遣するまでもありませぬ。異形の者には異能の者が相応ふさわしかろうと、愚考致しまする」

「では、そのように取り計らいたまえ、宰相チロル(CV:〇塚芳忠)よ」

「御意――それでは、N(なんと)U(美しい)T(帝国の)S(死神たち)を呼べ! そして世界に明示せよ、ミルクチョコレヰト帝(CV:〇田哲章)の威光を!!」


 *


 帝国地下倉庫。

 NUTSの三人は、目の前の光景に唖然あぜんとしていた。

「なんだよ、こいつは……」

 ピーナッツ(CV:杉田智〇)が白い顔で呟く。

 隣でアーモンド(CV:子安武〇)が、眼を細めて言った。

「なんでも、第一次聖戦では世界の半分を凍らせたという話だぜ。しかも、途中で二体に分裂するらしい。敵にしたくはないな」

「くっ、こんな旧世界の化け物がまだ残されていたとはな」

 そこで、少し離れたところにいたマカダミア(CV:中村悠〇)が、震える声で言った。

「おい……ちょっとこっちに来て、見てみろよ」

「どうしたんだ」

「いいから、これを見てくれ」

「なんだというのだ――うっ!」

 三人の顔に脂汗あぶらあせが浮かぶ。マカダミアが全員の思いを代弁した。

「溶けてやがる……早すぎたんだ、冷獣パピコー(CV:宮野真〇)の復活が!!」


 *


「若様、なりません! あれは……あれは『禁じ手』に御座います!!」

 ポッキー家に代々使える執事が、震える声で制止する。

「しかし、アルフォート(CV:永井一〇)――帝国は冷獣を復活させたというではないか。それに対抗できる力は、わが家にはもうあれしか残されていない」

「その通りではありますが、しかし、その手だけは――その手だけは絶対になりません。かの者の封印を解き放つことなぞ、許されることではないのです!」

「ではどうしろというのか!!」

 二人がにらみあっているところに、客人が現れる。

「応援要請を受け、急ぎ馳せ参じました」

「な、ん、だと……貴殿は”終わりの国”の宰相ではないか……」

 驚愕きょうがくする二人の前で、不敵に笑う宰相ウィロー(CV:〇田展男)。

「わがあるじ――シルコサンド卿(CV:〇本規夫)からの親書に御座います」


 *


 同時刻、屋敷の地下深くにある封印された牢獄ろうごくの中で、『禁じ手』と呼ばれた男が叫んでいた。

「奴らが来る……防げるのは俺しかいない……だから出せ……ここから……オレオ(CV:中田譲〇)、ダスンダァ!」


 *


 黒い森の奥で斥候せっこうからの報告を聞いた男は、苦笑した。

「やれやれ、やつらは第一次聖戦――”きのこたけのこの惨劇”をすっかり忘れてしまったようだな。まあ、我々は森の木々の上から、高みの見物をさせてもらおうじゃないか」

 忍者集団首領の『小枝』(CV:津田健次〇)は、ほくそ笑む。


 *


「どうして互いの領域を尊重できないのかね」

「まったくです」

「馬鹿共の馬鹿騒ぎに加わる趣味はないが――しかし、”終わりの国”が現れたとなれば、かの魔神が目覚めてしまう。では、行くとするかね。ホワイトラヴァーズ君(CV:梶裕〇)」

「お供しますよ、マルセー=サンドヴァター教授(CV:鈴村健〇)。ところで、トラピスタ(CV:島本須〇)さんはどうするんですか?」

「彼女は宗旨にあわぬとぼやいていた。まあ、追っかけ来るだろうよ」

「ですね」

「では行くぞ。”終わりの国”のさらに深奥、暗黒魔神”赤色幸福レッド・ハピネス”(CV:〇林ゆう)が封印されし聖なる神殿イセーへ」

『北の三人衆』の異名を持つ二人は、全力で走り出した。


 *


 その時、聖女トラピスタは少女を抱きしめていた。

「聖女様、私……怖い」

「大丈夫ですよ。私がいつもかたわらにおりますから」

「でも……怖いよ。何か、何かが来るよ」

 震える少女を強く抱きしめながら、聖女は考える。

 ――この子の秘められた力が開放されたら……


 確実に世界は終わる。


 トラピスタは優しく話しかけた。

「大丈夫――絶対に大丈夫ですよ、チェルシィ(CV:長縄まり〇)」


( 続く、といいなぁ )

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る