第4話

「あの、先輩」

「ん?」

「嵯峨ちゃんみーっけ!あら、お邪魔だったー?」

 ウフフと気持ち悪く笑いながらやってきたのは、特に嵯峨と仲の良い宇佐美。

嵯峨と同じ三年生だ。

「ダメじゃん、部屋で寝ときなっつっただろー。ほらほら」


 真吾はこの宇佐美という男が憎かった。

誰にでも分け隔てなく接する嵯峨とひときわ仲の良い、いつも隣にいるこの男が。

 そう、完全にただの嫉妬だ。


「スドシンもわかんねえ?嵯峨ちゃんが一人でいるのなんておかしいとか思わないわけ?」

宇佐美がいやらしい笑みを浮かべながら真吾に話しかけてくる。

「えっ…」

「嵯峨ちゃん体調悪いの。あんだけ嵯峨ちゃん好き好き言ってんなら気づいてやりなよ」


 ひどく馬鹿にされた気がして、真吾は胸をかきむしりたくなった。

あんなに触れたくて触れられない嵯峨の肩をいともたやすく抱き、支えるように宇佐美は真吾から嵯峨を取り上げて行く。


「えっと…すみませんでした」

 もう、見ていたくない。

真吾はその場から走り去った。


 ちょっといいムードだな、なんて。

告白する?しない?なんて迷ったりして。

バカじゃないのか、自分は。


 この現実から逃げ出したい。

とにかくその夜は早々にベッドに潜り込んだ。


 本当の苦悩は翌朝やってくるとも知らず。



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