第24話 本当の告白

 12月24日。クリスマスイブである。そして雪花とデートの日でもある。一応、プレゼントは買ってある。それに、久しぶりに髪型にも気をつかってみた。早く着きすぎたせいで、待ち合わせの時間まであと20分あるが、まぁそのうちくるだろうと思い、ベンチに腰掛けスマホゲームをしているとスマホに影がかかる。見上げるとそこにはうんとおしゃれをした雪花がいた。

 長い黒髪はポーニーテールにされ、少し大きめのリボンで止めてある。顔にもうっすらと化粧がされており、艶々の唇は吸い付きたくなるほど。下はタイツの上に、黒の膝丈までのスカートに上は赤のニット。スカートから肩までサスペンダーがついていて、大きな胸がさらに強調されている。その上にチェック柄のダッフルコート。

 ヤバい……かわいすぎる……


「……どう……かしら?」


「…………すげぇ可愛ぃ」


「ふぇっ」


 思わずでてしまった一言に雪花は両手で口元を押さえ、顔が一瞬で真っ赤に染まる。


「驚いた…見違えたよ。なんつーか、上手く言えないけど、すげぇ可愛いよ」


 もう可愛いしか言えない。ボキャブラリーの無さを笑うがいい!はぁー心臓痛い



「も、もういいから早く行きましょう…」


 頭をブンブンさせ、雪花が俺の手をとり、引っ張っていく。所謂、恋人繋ぎってやつでだ。後ろから見る雪花は耳まで真っ赤になっていた。なんなんだ?最近のこいつの仕草が可愛いすぎるんだが…


「…あなたこそ、かっこいいわよ…」


 何かをしゃべっているが、後ろにいるのと周囲の音楽が邪魔で全然聞こえない。


 しばらく歩くと目的の場所に着いたみたいだった。そこは少し高台になっていて、下を見渡せばクリスマスのイルミネーションが一望できる様なカフェだった。入り口のボードには

[本日、事前予約のカップル様限定open!時間の許す限り二人の時間をお過ごしください。]

 と、書かれていた。


「これ…予約してたのか?」

 と聞くと、握った手を更にギュッと握り、未だに赤い顔をしたまんまコクンと、頷いた。


「こ、こーゆーの……夢だったのよ…///」


 思わず自分の顔が熱くなってないか空いてる手を当てる。顔が熱い。

 こうかは抜群だ。


「と、とりあえず座ろうか。ってどこに座ればいいんだ?」


 すると店員がやって来たので雪花が前に出る。


「カ、カップル限定シート、クリスマス限定コースを予約していた中村です…」


「はい。中村様ですね。承りました。こちらへどうぞ。」


 カップル限定シート!?そんなのあんの?案内された部屋は凄かった。

 でっかいイチゴを二人だけしか座れないスペースでくりぬいたような椅子とピンクのハート型のガラステーブル。ストローは全部二人用ストローだった。


「お、おま、これ、さすがにはずいぞ…」


「言わないで!私もここまで凄いとは思ってたなかったから!」


 とりあえず座る所もないのでイチゴの椅子に二人でコートを脱いで腰掛ける。とにかく密着する。自分が動けば相手に伝わり、その逆もまたしかり。そこで店員さんが料理を持ってきて、一言置いていった。


「彼氏さんの膝の上に座れば窮屈さはなくなりますよ。他のお客様だと、その体勢で食べさせあっております。」


 と。ニコニコしながら…。

 すると雪花は無言で立ち上がると、俺の膝目掛けて横向きで座ってきた。所謂お姫様抱っこに近い感じになっている。


「せ、せつか……?」


 全身で感じる柔らかさに戸惑ってるとこちらを向いて口を開けてこう言ってきた。


「悠聖君の、た、食べさせて?」


 はいアウトーー!!なに?狙ってんの?わざとなの?そんなこと言われたら反応しちゃうから!どこがとはいわないけど!てかもうしちゃってるから!てかモゾモゾ動くな!絶対気づいてるだろ!


 そんな水面下の攻防を経てなんとか食事とデザートまで終わらせた。どんなだったって?んなもん、二人とも真っ赤になりながらひたすらアーンの応酬だったよ……。


 時間も時間だったので自宅まで歩いてる途中、カフェが強烈過ぎて忘れてたプレゼントの事を思いだし、渡すことにした。


「雪花」


「な、なにかしら?」


「ちょっとそこの公園寄っていこう」


「…?いいけど…」


 先に座らせ近くの自販機でホットココアを2つ


「ほら、メリークリスマス」


 言いながらココアと一緒にプレゼントを渡す。

 雪花の目が大きく見開く


「えっ?これ?」


「ん?あぁ、クリスマスプレゼントだよ。これでも結構悩んだぞ」


「開けてもいいかしら?」


「どーぞ」


「………これって……!」


 中から出来たのは花びらのように見える雪の結晶をモチーフにしたネックレス。まさしく【雪花】だ。見つけたときはこれしかないって思った。反応を見る限り、喜んでくれているようでなにより。


「ねぇ、これ、つけてくれないかしら?」


「じゃ、後ろ向いて」


「前からつけて」


「前からぁ?まぁいいけど………っとほら、ついたぞっと……んむっ!?」


「んちゅ……ちゅっ…ちゅ……はぁ…」


 唇を塞がられすぐ離れるとそのまま抱き締められる。抱き締め返そうか躊躇してると雪花が顔を埋めた胸元から泣き声がする。


「好き……ほんとに好きなの!気づくのは遅かったけどホントは恋人のフリの時からずっと!でも今は姉さんや先生まであなたのことを好きになってる…。こんなことならもっと早く気付いていれば……」


 震えてる肩を抱き締め返す。

 こんなに思い詰めているとは思わなかった。


「少し待っててくれ。俺も俺の気持ちと周りからの気持ちについて答えをだすから。」


「……ぅん。ちなみに今の私のファーストキスが私からのクリスマスプレゼント……よ?」


「そんな良いものを貰ったらネックレスじゃ、割には合わないからお返ししないとな」



「んむっ!」


 そう言って今度は俺からもう一度キスをした。

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