第6話
「なるほど……それで、
「ああ。2人で見たんだから間違いない。特に社長は開けた時、扉近くにいたんだろ? そんなの見逃すはずない」
「いえいえ。お二人を疑っているという事ではございませんので。あくまでも資料作りのための一環でございまして」
「保険屋ってのも大変なんだな。こんなべっぴんさんがそんなよれよれになるまで働かされたり、明らかに高校生にまでこんな悲惨な話聞かせたり。どこも人手不足なんだなぁ」
金森さんと高橋さんは事件があった車両の積荷を確認した人たちです。もっぱら状況を話してくれているのは先輩だと言う金森さん。一方高橋さんは何か金森さんに聞かれて頷く以外は微動だにしません」
それと先生のだらしのない格好をどうやら忙しくてクリーニングにも出せず、そのくせ替えのスーツも買えないような可哀想な人、というふうに好意的に受け取っているようです。いい人ですね。可哀想な人、というのだけは別な意味であっているかもしれません……痛っ! ヒールでつま先を踏まれました。
「とにかくよぉ。社長が間違って閉じ込められるなんてのは考えられないし。こりゃ殺人だろ。笹山さんも大胆なことしたなぁ」
「笹山様が犯人だ、と仰っているように聞こえましたが?」
「そりゃそうだろ。奥さんが1番怪しいが、いないんじゃあ無理だ。それについこの間、社長室で社長と笹山さんが怒鳴り合いの口論してるのはみんな知ってるしなぁ」
「ほぉ。どんな内容だったんだ?」
先生がまた口を開きました。それにしても先生、タメ口はどうにかならないんですかね? 金森さん、面をくらってますよ?
ああ、もしかしてちょっといいなとか思ってたんですかね? 先生ほど見た目と実際のギャップがある人は珍……痛っ! 横腹つつくの止めてください!!
「内容は詳しく分からないけれど、なんか笹山さんが社長に時間談判に行くって言って、その後怒声混じりの言い合いがあったんだよ」
「笹山は普段からガイシャと口論するような仲だったのか?」
「? なんかあんた刑事か探偵みたいだな。笹山さんは若い頃に社長に拾われたっていつも飲み会の席で話していたな。あんないい人はいないって口癖のように言ってたぜ? だからなぁ。正直俺らも驚いているんだよ」
「そうか」
何やら事件の前に毛利社長と笹山さんとの間にはトラブルがあった様です。普段は感謝していたようですが……同性にも可愛さ余って憎さ百倍って使うんですかね?
「そういえば……」
「どうしました? 高橋様」
「いつもに比べて荷台の中身の価値が低かったな。あれじゃあ、儲けも出ないで赤字だ。それと、入れ物が全部折りたたみ式だったのも珍しい」
突然話し始めた高橋さん。どうやら事件のあった車両の積荷がいつもと違っていたようです。たまたまなのか、それともこれがなにか関係するのか。きちんとメモ取りましたよ!
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