第23話 幼馴染の鼻歌
スマホを見ていると、流季が不意に問いかけてきた。
「なんだっけ、あの。……ふんふんふんふん、ふ〜ん、ふふ〜んってやつ」
「ヒント少なっ」
どうやら流して欲しい曲のリクエストらしいが、ざっくりしすぎて分からない。
曲名も歌詞も出てこないようで、メロディの一部だけを繰り返し唸っている。
「最近は鼻歌で検索できるらしいぞ」
普通にうるさかったので助け舟を出すことにした。
「スマホ貸してー」
「自分のでするんだよ」
「ええー」
ちぇっ、と言いながら自分のスマホと睨めっこしてる。
そうか、やり方も知らないよな。
「Siriとかでできる」
スマホの画面を見ながらそれとなく助言した。
流季はさも分かってましたよとでもいうように意気揚々と「へい、しり!この歌って何?」と言って検索をかけた。
しばらく流季の鼻歌だけが部屋に響いた後。
『すみません、よく分かりません』
Siriは無情にも鼻歌を却下した。
手順は合ってるはずなので、単純に分からなかったらしい。
あれー?とこちらを見るが、大丈夫、検索の仕方は合ってる。
合ってないのは……。
俺は思わず吹き出してしまった。
「あ、何さ。何がおかしいの」
流季が拗ねてしまった。
この後に、「音程が外れてるんじゃないか」と言うともっと拗ねるだろうから、俺は何も言えなかった。
というか変にツボにハマってしまい、それどころではなかった。
しばらくしてから、改めて俺も検索に加わることにした。
「むぅのバカ」
パクパクとお菓子を食べながら俺を足でつっつく流季。
流季の機嫌取りに俺のお菓子の大半が消費されたとだけ言っておこう。
「ごめんごめん、俺も手伝うから」
何度か試して俺も見様見真似で歌ったりしたのだが、最後までこれといった歌は見つからなかった。
しかし、何も収穫がなかったかと言われれば、そうではない。
副産物として、その歌が頭から離れなくなってしまったのだ。
本当に困った。
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