第17話 幼馴染の憲法記念日

ゴールデンウィーク。

宿題なんてとうの昔に終わらせているので、もうただの休みしかない。復習と予習は今だけ忘れておく。

そういうわけで。

俺と流季は、これからの数日間の休みに甘んじて、ゆとりを持って部屋でゴロゴロしていた。

……俺は宿題終わってるけど、流季はどうだろうか。


「今日ってさ、なんで休みなんだっけ」

宿題が終わっているか怪しい流季は、呑気に漫画を読みながら言った。

「たしか……ああ、そうだ、憲法記念日だ」

そう。

これから3日間。憲法記念日、みどりの日、こどもの日、と続いていく祝日。

だが、実際は憲法記念日だからといって憲法の事など考えることはなく、ただの休日という認識だろう。

今だってパッと出てこなかったし、そんなものだ。

「憲法ってあんまり分かんないね。……あ、18歳になったら結婚できるよっていうのは?」

「それは法律じゃないのか?」

憲法は国家に向けたもので、法律は国民に向けたもの。

他に、同じく18歳で成人だったり選挙権だったり、そういうのも法律で決まっている。

……そうか。俺たちもあと少しで成人して、選挙に行ったりするのか。

なんだかまだ遠い未来のことの気がして、想像もフワッとしかできない。

ただ流季はそんな思いはないようで、「そっか、法律か」とあっけらかんとしている。

「この前さ、話してる子がいたんだよ。『高校生になったって事は、もうすぐ結婚できるんだなぁ』って」

「俺たちに身近な話題だからな」

「ま、そうだね」

「ああ、そうだ」

“俺たち”とは、あくまで18歳まで数年に迫った高校1年生全般の事を言っている。

もちろん流季も分かっていると思う。

だから、そこから少しだけ会話が途切れたのは、きっとお互い漫画に集中したかったからだ。

他意はない。

なにかよくない方向に話が進みそうだったとか、そんな事ではないはずだ。

多分、おそらく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る