+1話 幼馴染のなんでもない日

「あ、そういえば」


流季は読んでいた漫画から顔を上げ、思い出したように呟いた。


「この前さ、美味しいアイスクリーム売ってるお店見つけたんだ」


こんな寒い時期によく冷えたものが食べたくなるものだ。


「どこ?」

「ん〜とね、なんか車だった」


おそらく移動販売のことを言っているのだろう。


それにしても、


「俺が知らないとは…」

「? なんで驚いてるの?むぅは冬に冷たいのあんまり食べないから普通でしょ?」

「? ……あ、いや、そうだな」

「変なむぅ」


……まさか、自分でもびっくりだ。


ま、口に出して言えるものではないが。


流季が行ってたらしい所を知らなかったことが、こんなに驚くことだとは。


「……今度俺も行くか」

「へ!? いや〜珍しいね。じゃ、今度の日曜行こうよ」

「なんで一緒に行くこと前提なんだよ……」

「当たり前でしょ?」


えへんと胸を張って答える流季。


「だって私しか知らないでしょ?」


……、


「……そうだな、そりゃそうだ」


やはり、日常はこうして知らず知らずのうちに流れて行く。


けれどどうやらそれを知っているらしい幼馴染の俺達は、そんな日常を共に過ごしていくらしい。


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