第9話 幼馴染の節分


本日は節分。

ということで恵方巻を無言で食べている俺

……の横で恵方巻と称したロールケーキをまるまる1本食べている流季。

よく入るなぁ。

「……」

「……」

ひたすらに無言。

一応流季の分の太巻きは用意されている。

しかし、流季はロールケーキも食べるため、流季の分は半分に切ってから2人で分けるのが毎年の流れになっている。

よくもまぁロールケーキ1本を無言で食えるなと思いつつ、恵方巻を完食。

昔から俺の方が食べ終わるのが早かったため、昔は流季にちょっかいを出していたが、さすがに今では………

「〜〜っ!」

やっぱり邪魔したくなるよな。


俺の邪魔(と言っても変顔くらいだが)を乗り越えて恵方巻(という名のロールケーキ)を完食した流季。

「何お願いした?」

「あぁ」

忘れてた。

「流季、お前のことを考えていたんだ」

カッコつけてみる。

「よく毎年ロールケーキ1本食べれるなぁって?」

正解。


恵方巻の後の豆まき。

今年の鬼は俺。

去年鬼をやって、ついでに腰もやってしまった親父の二の舞にならないようにしないとな。

親父、豆を投げるのにそんな本気の構えをしないでくれ。

「去年の恨み!」

言っちゃったよ。

難なくよける。

豆はお袋が大切にしていた観葉植物にヒット。

……

「少し、お話をしましょうか」

「ちょっと待て、今のは……あ、ちょっ、ひ、ひぃ!」

親父、強く生きてくれ。


「鬼はー外ーー!」

さっき流季の両親も俺に豆をぶつけて帰っていった。

お袋に連れて行かれる直前に親父が

「頼む、俺の分まで……」

と言っていたが、めちゃくちゃ軽く投げてくれた。


ということで今は俺と流季2人きり。

投げてはよけ、投げてはよけ、の攻防を繰り広げている。

まぁ、最後は当てられるつもりだけど。



はぁ、結構疲れてきた。

もう降参。

ぺたりと座り込む。


「さっきの、ちょっとドキッとしたかもね」

「?、なんか言ったか?」

「なんでもなーい!鬼はー外ーー!」

「ちょっ……結構痛い!るぅ、本気で投げるなよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る