第4話 着せ替え人形
「なにこの子...、何着せても似合うじゃない!」
レスカは魔王の着せ替えに夢中になっていた。
「やめろ、もうこれでいい!」
魔王は必死に気に入った服でいいと懇願するが、レスカはあれもこれもと手当たり次第に着せ替えしてくる。
勇者はハハハと乾いた笑いをしながら魔王の心中を察する。
(レスカは顔も性格もいいんだけど、夢中になることがあると他のことをそっちのけでのめり込む悪い癖があるんだよな〜)
その昔、勇者がレスカをこの町において旅立ったのも、その癖が原因なのを思い出していた。
「ワンピースとかどう!、この夏服とかも似合いそう!、ここはひとつ天使のコスプレ衣装などは!」
一人で勝手に盛り上がりを見せるレスカを見て勇者は懐かしんでいるが、魔王はたまったものではない。
「おい!勇者よ、お前の彼女なのだろう?、なんとせい!」
「無理だ!、レスカは一度スイッチが入ると止まらない、飽きるまで着せ替え人形になってろ!」
「勇者よ!どこに行く!余を一人にするな!」
勇者はそっと寝室の方へと向かう。
「あいつ逃げやがった!」
勇者に逃げられた魔王は一人でレスカの相手をすることになる。
レスカの幸せそうな表情が今は地獄の鬼のように見える。
「ま...まてレスカよ、明日、また明日相手してやるから今日はもう寝させて...」
「え〜、マオちゃんすっごい可愛いから今ここでいろんな服着せ替えたいんですよ!」
なんとか交渉してみるが失敗する。
魔王の体力はそこまで持ちそうにない。
女体化したことで全体的な体力が落ちてしまっている上にレベルが1になっているので、正直もう人間の子供と大差ないステータスだった。
それなのでこんなに早く眠気がきているのだった。
「ごめんレスカ...、余もう眠い...」
魔王はクラクラしながらゆっくりと倒れて眠ってしまった。
「眠り顔も可愛いですね!、じゃあ眠っていても構わないので服を着せ替えさせて楽しませてもらいますね!」
寝ている魔王にも着せ替えをする鬼畜なレスカ。
夜が明けるまでしっかりと吟味したレスカはこの服が一番魔王に合うと思い決める。
「早くマオちゃん起きないかな〜」
ウキウキ気分で魔王の目覚めを待つレスカ。
いい歳して着せ替え人形ごっこをしている自分に恥ずかしさはないのだろうか?。
多分ない、絶対にない。
結局はそれが楽しいのだ。
他人には卒業しろと言われても卒業できない物が誰しもが持っていることだろう。
レスカにとってそれが服の着せ替えだったというだけだろう。
〜朝〜
魔王は朝になると目をゆっくりと開けて大あくびをする。
眠い目をこすりながらレスカの方を見て昨日のことを思い出してはドキドキしている。
数秒たってもレスカが起きないのでそそくさと勇者のいる部屋へと向かう。
すると勇者はまだ眠っていたので全力で飛び上がり、寝ている勇者に飛び乗る。
「起きろこのクズ勇者!、困っている子供一人助けないで何が勇者だ!」
勇者は目を覚ますと魔王が自分の上に飛び乗ったのだとすぐに判断する。
「あーはいはい、助けれなくてごめんね〜、でも俺はレスカの楽しみを邪魔したくなかっただけなんだよなぁ〜」
魔王は勇者の言葉にも一理あると思ってしまいぐうの音もでない。
拳を握りしめて悔しそうな表情をする。
勇者はしてやったと内心喜んでいると魔王の服装に気がつく。
「つか魔王よ、お前にその服似合ってるな」
魔王も自分の今着ている服を見てみる。
「そ、そうか?、こんなひらひらした服が余に似合っていると?」
少し不安そうな顔をしているが満更でもなさそうだ。
「後でレスカに礼を言っておけよ、それレスカが昔気に入って着てた服だからな」
そう言われるととダメと言いづらくなる魔王。
「わ、わかった...、後で礼を言う」
魔王は恐る恐るレスカのいる部屋に向かう。
まだレスカは起きていないので寝顔を見る。
やりきった顔でスヤスヤ眠っている顔を見て不覚にも美しいと思ってしまう。
(やはり勇者のやつこんないい女を彼女にしているなんて許せん!)
どうにかして自分の方に気を向かせられないか考える魔王だった。
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