五言目

意味も無く、駐車場に立ち尽くしてみた。視線の先には、無機質なコンクリートが映る。その灰色の人工物の中に、規則や秩序といったものを探してみる。

全く、これだから晴れた午後は嫌なんだ。

何となしに空を見上げれば、先程まで眩しい青を映していた空は、いつの間にか重い灰色に変わっていた。同じ灰色のコンクリートとは違い、空の灰色は、ただ無秩序に私の視界を埋め尽くした。

もうじき、雨の季節が訪れるのだろう。

雨は嫌いだった。何もかもを洗い流してしまう恵みの雨の中では、自身の嘘さえもかき消されてしまう。そんな季節も、きっと足早に通り過ぎていくのだろう。雨の季節が終われば、またあの季節に会えるのだろうか。

ここ数年、姿をくらましたままのいつかの夏には、未だに会えてはいない。それとも、行方不明なのは自分自身の方なのだろうか。

そんの事を思っているうちに、灰色のコンクリートの上を、雨粒が彩り始めた。

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