不耕起移植栽培の報告を北条先輩にしたよ、銚子も魅力的な場所だな
さて、新しい農法のために成田までバイクで行ってきたが、なかなか面白い話が聞けたと思う。
そういうわけでそれについて北条先輩と話をしてみることにした。
「北条先輩。
話を聞いてきた不耕起移植栽培について、現在耕作を行っている水田を買い上げて人を雇うとともに、耕作放棄されている水田でも実験的に試してみたいと思うのだけど、どうだろう?
もちろん失敗する可能性もあるし、しばらくは普通にやるよりも収量は得られないみたいだけど、6年くらいすれば普通以上に収量が得られるみたいだし、10年先とかを考えたら今から始めておいたほうがいいと思う」
北条先輩は少し考えてからうなずいた。
「先々お米を安く手に入れられるようになるというのでしたら、やる価値はありますわね。
農業は難しいようですし、長い目で見るしか無いと思いますが」
「ああ、うん、ありがとう」
「しかしながら明らかに利益にならないようであれば途中で止めることも考えますわよ」
「まあそりゃ仕方ないか……」
本来は利益云々だけで農業を考えるのは危険で、その結果が低すぎる自給率につながっているのだよな。
穀物の総合自給率は1965-69年の時点では55%だったが、1980-84では32%までさがって、その後も回復することなく30%を切っている。
大きな理由は小麦14%、大麦9%、大豆7%という米以外の穀物の低い自給率にあって、パンやラーメンなどが多く食べられるようになってもその殆どは輸入なわけだ。
もっとも日本では小麦の育成に向いた土地が瀬戸内海や北海道の一部くらいとかなり少ないのも理由なのだけど、だからこそ小麦製品を主食に多く振り分けるのは危険だよな。
肉に関しても同様で牛肉に関して自給率は36%でさらに輸入に頼っている飼料で育ったものを除外すると、牛肉の完全な自給率は10%にまで下がってしまう。
こういった状態でアメリカ・カナダ・オーストラリアなどに食糧危機が起こってあちらからの輸出が不可能になった場合、日本では深刻な状態になる可能性が高い。それに食糧を握られていると貿易交渉で不利な条件でも飲まざるを得ないことだって起こりうるからな。
まあ土地バブルが起きなければ農地を売りはらったり、家賃収入を当てにして住宅地に転用するケースは”前”に比べて激減するだろうし、円高で外国の食糧価格が半値に下がるわけでもないので自給率の低下は以前ほどには進まないと思うけど。
ああ、そう言えば来年昭和62年(1987年)12月17日の11時頃に起きる千葉県東方沖地震では銚子や成田は結構大きく揺れているのだっけ。
被害としては死者2名、重傷26名、軽症118名、建物全壊16棟、半壊102棟、一部破損6万3692棟、火災3棟と少なくはない被害が出ているけどこれはそこまで住宅が密集している場所ではないのと津波が発生しなかったのが幸いしたのだろう。
西千葉からなら2時間位で銚子へ行けるし、下調べに行ってこようかな?
銚子では化石海水天然温泉が出るはずだし、何よりもサバ・サンマ・イワシなどの新鮮な海の幸と地元産の醤油の組み合わせは根室のサンマ丼に負けない旨さのはず。
ただ”前”では、千葉県銚子市は魚の消費量減少による漁業衰退による人口減に加えて加計学園系列の千葉科学大誘致のために払った莫大な補助金のせいで「第2の夕張」級の借金地獄に陥っており2020年頃に財政再建団体に転落していたんだよな。
「北条先輩、たまには息抜きと下見も兼ねて出かけない?
銚子に行ってうまい魚を食ってこようと思うのだけど」
「銚子ですか?」
「うん、北海道の海産物はとても美味しかったけど、銚子の海産物も負けてないはず」
「まあ、たまにはそういうのも気分転換にいいかもしれませんわね。
芦名さん、佐竹さん、細川さんも一緒でよろしいですか?」
「うん、僕もいきたいな」
「俺たちも行っていいなんて太っ腹だね」
「ではご相伴に預からせていただきましょう」
あれもしかして全部俺のおごり?
まあそれは構わないけど。
「あ、うんそれはいいけど足利さんは?」
俺がそう言うと足利さんは苦笑した。
「あははは、私は仕事が溜まっているので……無理です」
「ああ、そうだよな」
そう言えば浅井さんも北海道から帰ってきたらスケジュールがぎっちりだったっぽいな。
「じゃあ今回は電車で銚子に行こうか。
千葉駅からは特急なら片道1時間半位だから日帰りでも十分戻ってこられるし、朝9時半に千葉駅集合で」
「私はそれで構いませんわ」
「僕もそれでいいよ」
「俺も構わない」
「ええ、それで構いません」
他のメンバーもうなずいたので翌日の朝9時半に千葉駅集合として店に電話で予約を入れておく。
総武本線を走る特急しおさいのグリーン車に乗り込み、みんなで向かい合って座って、車内販売のお茶と冷凍みかんを買って食べながらのんびり銚子へ向かう。
「たまにはこういうのもいいですわね」
「だよな。
北条先輩にはいつも面倒な仕事ばかり押し付けてすまないと思ってる」
「私以外にはできないことでしたから仕方ありませんわ。
今は皆さんに手伝ってもらえますし、だいぶ楽になっていますわ」
停車駅は千葉・佐倉・八街・成東・横芝駅・八日市場・旭駅・飯岡・銚子と成田方面ではなく成東方面に走ってから銚子方面に向かう経路なのだが成田空港に行くには成田エクスプレスがあるからこういう経路なんだろうな。
バイクと違って何もしないでも勝手に目的地に着くのはやっぱ楽だ。
そして11時頃には銚子駅に到着し、銚子駅からは銚子電鉄へ乗り換え笠上黒生駅下車して目当ての店へ向かう。
「ここは海のそばで生け簀で生きた魚を泳がせているから特に新鮮なまま食べられるはずなんだ」
「それは良さげですわね」
店に入って案内を受け二階の座敷にみんなで座った先に姿造り盛合せ巨大な舟盛りが出てきた。
伊勢海老やタイ・ヒラメ・カサゴ・タチウオ・サンマ・サバ・アジ・イカなどが盛り付けられているが当然新鮮でうまい。
「やっぱ新鮮なサンマの刺身はうまいな」
俺がそう言うと北条先輩も言った。
「サバもお刺身で食べることができるとは思いませんでしたわ」
更に海老やキス・タチウオに野菜の天麩羅や煮魚、タコやワカメの酢の物、きゅうりのお新香、それにご飯と吸い物と
「ああ、くったくった」
「少し量が多すぎな気がしますわね」
「たしかに女の子にはちょっと多すぎだったかな?」
「僕はお腹いっぱいで満足だよ」
芦名さんがそう言うと佐竹さんも言った。
「俺たちがこんなに美味しいものを腹いっぱい食べられるなんて幸せだよな」
食べ終わったら電車で犬吠へ移動して「犬吠埼灯台」を目指す。
日本に5つしかない第1等灯台のひとつで、国の有形文化財に登録されている。
そしてここには犬吠オーシャンランドという5つのプールやゴーカート場、アスレチック施設、アーチェリー場や海の生活館等がある小さな遊園地があるのだが状況はあまり良くないらしい。
「うーん、ここを買い取って、さらに海の幸&温泉露天風呂をたっぷり満喫できる温泉旅館を立ててみたら人を呼べるかな?」
「ここに温泉があるのですか?」
「厳密に言えば古代化石海水温泉ってやつだけどね。
でも肌はつるつるになるはずだよ」
「ならば悪くないかもしれませんわね」
「うん、検討してもらえれば助かるよ」
ただ泳ぐということだと近くに九十九里浜があるから銚子に多くの人を呼ぶというのはちょっと難しい気もするけどな。
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