北海道への研修旅行は色々学べそうだ

 さて、11月半ばに一年生は北海道への研修旅行へいくので今はそれの準備中。


 この旅行ではホテルで夕食などのテーブルマナーを学習したり、麦やタマネギと言った畑作・牛や羊などの酪農を主とする農業体験のファームステイでジャムやパン・バターの手作り体験を行ったり、ジンギスカンをつついたり、スキーを行ったりと色々するらしい。


「移動は羽田空港から函館空港まで飛行機で移動して、函館で観光してから夕方にテーブルマナー研修をして温泉のあるホテルでまず一泊。

 翌日二日目はバスで洞爺湖に行ってから登別の地獄谷や‘のぼりべつクマ牧場’の観光して温泉のあるホテルでまた一泊。

 翌日三日目は日本で一番早く天然雪でオープンする‘中山峠スキー場’でスキー体験して近くで一泊。

 翌日四日目は札幌へ移動して農業体験後に札幌時計台やクラーク像などの観光して夜は藻岩山の夜景を楽しむ。

 五日目には夕張へ行って炭鉱産業の現在を学びながら観光し、最終日には小樽観光をしてから千歳空港で飛行機に搭乗して羽田に帰る感じか」


 俺がそう言うと斉藤さんが首を傾げた


「これを見るとかなりあちこちに移動して結構色々やるのね」


「まあ、研修旅行だから、それこそ色々学ぶためなんじゃないかな」


 そして明智さんが嬉しそうに言った。


「北海道に行けば野生のキタキツネとかも見れるかもしれないっすよ」


「ああ、たしかにちょっと見てみたいよな。

 生のキタキツネ」


 ちなみに昭和63年(1988年)の青函トンネル開業前だから、今は船か飛行機でないと北海道へ渡れないし、まだ新千歳空港は開港していないんだな、すぐとなりに千歳空港はあるんだけど。


「わ、私、本州から出るの初めてです」


 浅井さんがちょっと緊張した様子で言ったので俺はフォローするように言う。


「あ、俺も本州から出たことはないよ。

 中学の修学旅行で京都・奈良・伊勢には行ったし、今年の夏、福島に行ったのが一番遠い場所だし」


「あ、そ、そうなのですね。

 な、なら少し安心です」


 浅倉さんもうなずきながら言った。


「そもそも中学生くらいまででそんなに遠くまで旅行に行くことはあまりないです。

 親の実家が遠くて、お盆や年末には里帰りするとかだったらまた話は別ですが」


「それにスキーは俺も初めて何だよな」


 俺がそう言うと斉藤さんも言った。


「実は私もよ」


 日本のスキーの歴史は意外と古く、1920年頃にはすでにいくつかのスキー場があったが、日本ではスキーよりも手軽に楽しめるスケートのほうが永らく人気だった。


 しかし、1972年の冬季札幌オリンピックをきっかけにスキーブームが到来し、オイルショックで一度は沈静化したが、80年代に景気が回復し、週休二日制の一般化、スキーブーム以前は10万円程度だったスキーセットが、ディスカウントストア等で2万円程度になるなどスキー用品の低価格化、高速道路や東北、上越新幹線などの交通網の整備等そして1987年の映画「私をゲレンデに連れてって」が大ヒットし、若者たちがゲレンデで出逢い恋に堕ちるストーリーに憧れて、ならば自分もと、恋愛バイブルのひとつになったこと、スキー場にいる女性客はなぜかみんなキレイに見えてしまったり、ゲレンデで流される広瀬香、globo、竹任谷由実などの恋愛ソングもそれを後押しして、バブル期にはスキーは恋愛の場所としても大ブームとなった。


 スキー場へのツアーバスも多数運行され、電車での移動もあったが、スキー場へのアクセスは自家用車が用いられることが多く、高速道路や一般道路の渋滞がひどかった上にリフト・ゴンドラの待ち時間が数十分から1時間というのも珍しくなく、ゲレンデも大混雑でほかのスキーヤーにぶつからないように滑らなくてはいけなかったり、冬の週末にだけ集中するため宿が取れなかったり、見知らぬ他人と相部屋で10人もの人数ですし詰めで止まることになったり、スキー場でもホテルでも食事が貧弱などといったことも常態化していった。


 そして各地のスキー場付近の高原エリアにリゾートマンションが急速に建設され、販売されるとすぐに売り切れとなった。


 1993年には千葉県船橋市に屋内スキー場として日本最大であったららぽーとスキードームザウスが開業し、舞浜のアレの入場者を奪ったくらいだった。


 1993年にはスキー人工は1860万人増えたが、これも例にもれずバブル崩壊とともにスキー人工は減少していき最終的には、2000年代前半には800万人を割るなど約10年でピーク時の3分の1にまで減少して、閉鎖されるスキー場も跡を絶たなかったし、その近くにあるホテルなども多くが廃業に追い込まれ、‘ららぽーとスキードームザウス’も2002年に閉鎖して解体されて北欧家具の池屋になっている。


 そしてスキー場近くのリゾートマンションの持ち主はかなり悲惨なことになっていくんだな。


 まあバブル期が異常であっただけでスキーヤーやスノーボーダーは快適にスキーやスノーボードをできるようになったんだけど。


 まあ今ならそこまでゲレンデも混雑してはいないんじゃないだろうか。


「何にせよ楽しみだよな」


 俺たちがそういう話をしていると一人だけ学年が違うため九州へ行く会長がジト目で見ながら言ってきた。


「………皆さん楽しそうですわね」


「会長も暖かい九州を楽しんできたらいいんじゃないかな?」


 俺がそう言うと斉藤さんも言った。


「それにあなたは去年北海道へ行っているのでしょう?」


「そ、そういう問題ではありませんわ。

 なぜ私だけ違う学年なのか悔しくて仕方ありませんわ」


「まあこればかりはどうしょうもないっすよねぇ」


 明智さんがそう言うと浅倉さんも頷いた。


「ですです」


「正直に言えば会長がいないと良さげな物件の買収の相談ができなくて困るんだけどな」


「そういうのは詳細にメモをしておいてくださいませ」


「うん、わかったそうするよ。

 あ、それと西芝の升岡富士雄さんっていう人をできれば引き抜いてほしいんだ。

 メモリーに関してかなり新しい技術のものを開発してる途中だけど社内では徹底的に冷遇されてるみたいなんで」


「わかりましたわ」


 まあともかく11月はシーズンオフだろうから観光地もあまり混雑もしていないだろうし研修旅行は楽しみだ。

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