落ち物パズルもソフトが販売されアーケードでも配信されたけどめちゃくちゃ売れてるらしいぞ

 さて、あっという間に6月も終わり7月に入ると近づく学校行事は一学期の期末考査で、俺たちゲーム制作部の部員は部室にもなってる株式会社のオフィスで勉強中。


 ちなみにエアコン完備で給湯器や冷蔵庫もあるオフィスなのでとても涼しく過ごしやすく当然勉強もやりやすいので助かるよ。


 公立の中学校だと当然だけど、私立高校でもまだエアコンなんて無いからね。


 と言っても女性が多いとそんなにエアコンをガンガン利かせて部屋を冷やすことはできないが、女性は男性より脂肪が多いからこれはしょうがない。


 あとモジューラージャックを通してパソコンにモデムをつなげて、パソコン通信のダイスキーネットに繋げられるようにもなったので、情報収集が少し捗るようになってきた。


「こういうネット掲示板の存在のありがたさを改めて知ったよ」


 みんなでカリカリとノートにテスト出題範囲の教科書内容を書いたりなんだりしているが、俺や斉藤さんは特待生だから、ここでも良い成績を取らないといけない。


 もっとも部活の実績とかもあるんで今更俺たちを退学にさせたりはしないだろうけど。


「それにしても夏休み中には出版社にルールブックの原案持ち込みに行きたいっすね」


 明智さんがそう言うので俺も頷いた。


「そうだな、できれば学生が暇なうちに出版はしたいけど、実際の書籍としての販売には半年はかかると思うから今年中に出るかどうかってとこかな」


「そんなに時間がかかるんっすか?」


 明智さんが驚いているので俺は苦笑しつつうなずいて答えた。


「まあ、ゲームの場合はほとんど手を加える必要がないほぼ完成状態でゲーム会社に持ち込んでるから早く発売してもらえるけど、原案を出版社が本にするにはそうはいかないからね」


 それでもおそらくTRPGの先発組には入れるだろう。


 こういったジャンルで、先発組に入れるかどうかは知名度や印象の面でやはり大きいだろう。


「それじゃあ来年が楽しみっすね」


 そこに口を挟んだのは会長。


「ちゃんと2年生に進級できるように勉強して良い成績を取ることも大事ですわ。

 明智さんは理系はあまり良くないでしょう」


 会長のツッコミにたじたじになる明智さん。


「うう、英語と国語は得意なんすけど、数学とか物理は正直苦手っす」


「そうは言っても数学はとても大事ですわよ」


「わかってるっす。

 あ、ここの数式のこれってどう意味っすか?」


 明智さんがそう聞いてきたので俺はなるべくわかりやすいように教えた。


「ここはこうなって……」


「なるほど、そうすればいいんすね」


 そんな感じでテスト勉強をしつつ気分転換にTRPGセッションをしたり、コンシューマのゲームをしたり、斉藤さんにはエイサー王伝説のメインシナリオの練り込みをしてもらい、最上さんには桃の子太郎討鬼伝説のTRPGやパソコンRPG用のイラストを描いてもらったり、朝倉さんには作業が捗るタイプの作業用BGMの作成などもしてもらっている。


 会長は会社に関して秘書や庶務のような様々な雑務をしてもらってるので今は部活的なゲーム関係のことはやってない。


 俺はそれぞれに対してアドバイスしたり相談を受けたりしながら、メインは明智さんと一緒に桃の子太郎討鬼伝説のTRPGの世界化の方を煮詰め中。


 それをやりながら、パソコンRPGとしてのプログラミングもしているが。


 で、先月の6月に買った10000円の株が14000円まで上がったのでここで売った。


 手数料とかいろいろ差っ引いても7000万円ほどは儲かったはずだ。


 これで俺の父さんの年収の7倍ほどにもなるんだから恐ろしいよな。


「もう少し上がる気がしますけど、売るのはまだ早いのではありませんか?」


 会長がそう言ってきたので俺は首を横に振った。


「いや、すぐに落ちるから今が売り時なんだ。

 株でまだいけるは危険だぜ」


 そしてその後は実際にあっという間に株価は1000円ほど下がったし、平均株価も500円ほど下がった。


「確かに下がりましたわね。

 これでこのあとはどうするのですか?」


「月末には平均株価は底値になるはずだからまた買って、来月末くらいに売ればいいと思うんでそうしようとおもうよ」


 少し考えていたような会長だったが真剣な表情になって俺に言った。


「お母様名義の株運用口座の運用もあなたにおまかせしても良いですか?

 それなら信用取引きができますので、実際の3倍以上の金額が動かせますし」


 これはかなり思い切ったな。


「でも、俺が運用に失敗して大損をする可能性もあるよ」


「それはさすがにもともとからの口座の全額の運用は無理ですが、ゲーム制作部の部費として稼いだ金額以内の額であれば問題はないはずですわ」


「ああ、要するに最悪はゲーム部の損失で終わる範囲であればいいってことですね。

 わかりました、ならそっちもやりましょう」


 実際のところ、現状では株価の動きは“前”と変わっていないから失敗しない運用は可能だが。


 ただ、どこかで“前”と違う動きになる瞬間はおそらくあるだろう。


「とりあえずSAGAとフェニックスの株は買っておくかな」


 この2つの会社の株は間違いなく上がるし、双方の会社の資金の投資にもなるはずだし。


 というわけで会長の許可もでたので、学園理事用の運用している株の口座から信用取引もやることになった。


 そして落ち物パズルの“ジュエルス”がSAGAマーク3とパソコンソフトとして発売されてアーケードゲームとしても稼働し始めたが、思っていた以上に大ヒットした。


 これはSAGA贔屓のゲーム専門雑誌ベープでの宣伝広告に加えて、作成者の俺が桃の子太郎討鬼伝説と同じスタッフの注目作というのもあって、まずは口コミでSAGAファンの間で面白さが広まった。


 その後でSAGAファンでない子どもたちにもめちゃくちゃ面白いという口コミが広まったことで、本体でのSAGAマーク3とセットでジュエルスは爆発的に買われたんだ。


「ジュエルスの売り上げはSAGAマーク3で200万本、パソコンゲームでも30万本、アーケードのインカムも絶好調とのことですわね」


「ああ、それは良かった、ホムコンは既に600万台ほど売れているはずだけど、SAGAマーク3もこれで対抗できるようになるかもしれないな」


 SAGAの8ビットゲーム機は一部ではカルト的人気はあったものの1992年までの累計は800万台ほどで、ホムコンは累計で6200万台だから一強一弱などと言われたけどハードの性能自体はむしろ勝ってるところもあるくらいなので、結局は人気のソフトがあるかないかでハードが売れるか売れないかは決まるんだよな。


 だから俺はあえてジュエルスはSAGAに持ち込んだんだけど、これで何をしても10年早すぎるとか言われるSAGAのユーザーが増えて、そういった進みすぎた技術が受け入れられやすくなるといいんだが。


 あと、この時代のアーケードゲームは、一回100円での平均的なプレイ時間は3分程度するために難易度のメチャクチャな殺し設定を入れなければならないと言われていたらしいが、ジュエルスは最初は簡単で下手でもそれなりに楽しめ、上手ければかなり長い時間を遊べるし、最終的には相当に難易度が上がっていくからどこかで終了するし、初心者は早い時間でゲームオーバーになって次々に100円を投入していくので、インカムもそれなりに高いらしい。


 ゲーセンのゲームは1クレジット100円の場合、50円を開発メーカーに支払うため、ゲーセン自体はそこまで儲かってるわけでもないようだけど、それでもそれなりに売上はあるようだしな。

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