俺が16歳になったので株式会社を設立して、株取引も始めたよ。
先立つ5月17日 男女雇用機会均等法が成立し、6月18日に豊田商店の永野ニ男会長が自室玄関前でマスコミ取材班が集まる中、マンション内で刺殺される事件が起きた。
この学校には体育祭は無く、そのかわり陸上競技会というものがある。
近場の競技場を貸切で借りて行い、1度にいろいろな競技を見ることができるらしいが、参加は任意なので俺は参加しなかった。
そして、6月の俺の誕生日を無事に迎え、部活ではちょっとした誕生日パーティーを開いてもらった。
「誕生日おめでとう、これプレゼント」
と斉藤さんにプレゼントを渡されたあと、
「お誕生おめでとうございます。
これは私からのプレゼントですわ」
と会長さんからもプレゼントを渡され。
「お誕生日おめでとうございまーす。
私からもプレゼントですよ」
と最上さんもプレゼントをくれたし、
「おめでとうです。
大したものじゃないですがこれを受けとるです」
と朝倉さんにもプレゼントを渡され、
「誕生日おめでとうっす。
自分からもプレゼントっす」
と明智さんもプレゼントをくれた。
それぞれの中身は斉藤さんがシナリオ作成の参考になりそうなファンタジーや伝奇物の小説、会長は高そうな万年筆、最上さんはタオルで、朝倉さんがハンカチ、明智さんが靴下だった。
「うん、みんなプレゼントありがとうな。
お返しするために誕生日教えてもらっていいかな?」
と皆の誕生日もきいてそれぞれの誕生日にはプレゼントを返すことを頭の中にピンどめしながら誕生日ケーキなどをみんなで食べた。
そんな中で会長が俺に聞いてきた。
「それで、16歳になったことで株式会社の設立が可能になりましたがどうしますの?」
「うん、早速設立したいと思うけど、俺はそのあたり良くわからないから専門の人を紹介してもらえるかな?」
「ええ、お任せください。
信頼できる司法書士と税理士の先生を紹介いたしますわ」
こういう時会長は本当頼りになるな。
そして、司法書士と税理士の先生が後日やって来た。
「司法書士の大友です」
「税理士の龍造寺です」
二人の挨拶に俺も頭を下げた。
「この度はお世話になります」
というわけで司法書士の先生や税理士に先生に話を聞くことになった。
「手続きそのものは我々がやりますが、手続きはもちろんそれを代行するためにも当然費用がかかります。
まず会社名である商号、事業所の所在地、事業目的、資本金、役員などを決め、発起人を決めます。
株式会社設立時に未成年が発起人になることについてそのものは問題がありません。
ですが発起人は会社組織の根本な規則を定めた定款を認証してもらうときに印鑑証明書が必要ですので16歳になるのをお待ちしていました」
「会社名は株式会社ライジングでいきます」
あとは必要なことを書いて説明していく。
ちなみに会社の住所は学校のそばのオフィスビルで、このあたりはヘックスを会長さんが参考にしているらしく、最新パソコンを自由に使える会員制サロンを開設し、千葉大学などの西千葉や千葉周辺にキャンパスを置く大学や高校の学生たちが出入りするようにして、その中から優秀な人をアルバイトとして雇った上で、卒業したら正式入社させるつもりらしい。
「印鑑証明って15歳だと作れないんですっけ?」
「ええ、そうです。
発起人は会社設立の書類を全て準備作成し定款を作成し、公証人役場で認証を受けなければなりません。
そして定款には発起人の印を押す必要がありますが、発起人当人の印鑑証明書が必要なので、15歳以下の方は印鑑証明書がつくれませんから基本的には定款を作れないということになります。
親権者が法定代理人として代わりに発起人になれば、設立の手続きを行うことはできますが今回はそこまでする必要もなかったでしょう。
また管轄の公証役場によっては親権者の印鑑証明書で手続きができる場合がありますけどね。
何れにせよ未成年が発起人になるには、親権者の同意書が必要ですのでこちらに用意した同意書に親権者双方の記入および両方の実印を押印してもらってください。
また親権者双方の印鑑証明書と続柄が確認できる戸籍謄本も必要ですので代行手続きを希望であればそれも同意所を書いてもらってください」
「そっちは多分母がやれると思うのですが確認しておきます」
「ええ、確認して書類が揃ったら、こちらにお電話ください。
その後こちらで手続きを行います」
「わかりました」
「未成年が株式会社設立をするときには、定款の一番最後の文章に親権者双方が記名押印する必要があります」
「わかりました」
「株式会社設立時に未成年が取締役になりその中の代表取締役などの役員になることには問題はありません。
会社の経営方針などの決定は取締役会で決めることになります。
取締役会を設置しないのであれば、株主総会で株主たちと共に一緒に決めていくかたちになりますね」
「あんまり外部から口出しはされたくないんですよね」
「まあ、当面は問題ないと思いますよ。
株式の上場ができれば資金調達がしやすくはなりますが、株主の声を聞かないといけなくなるというデメリットはたしかにありますね。
未成年、しかも高校一年生の株式会社設立というのはかなり珍しいですからテレビなどの取材も来るでしょうし、その分会社の宣伝効果はあると思いますが、逆に社会的な信用力の低さから取引先を見つけるのに本来は苦労するはずですが……」
「今の所の取引先はフェニックスとSAGAだけですが今後はもっと増えると思います」
「いえ、おそらくその2社だけでも十分かとは思います。
また法務局で会社を登記するときには、まず発起人の個人口座に資本金を振り込み、その通帳の写しを法務局に提出する必要があります。
15歳以上であれば個人の口座は開設できますので問題はないですが。
会社設立の登記が完了し、税務署や役所などに対しての届け出を済ませたら、法人口座を開設し、取引先との金銭のやり取りや、給与の振り込み、金融機関から融資を受けるなど、会社を通じてのさまざまな金銭取引の際には法人口座が必要になりますのでそちらも用意しておいてください」
「わかりました」
「法人口座を作る際は、履歴事項全部証明書、本人確認書類、法人の印鑑、法人の印鑑証明書、法人番号通知書が必要です」
「わかりました」
「いずれにせよ我々のような司法書士や税理士に会社設立を依頼するのが正解でしょう。
社会保険・厚生年金・雇用保険などに関しては提携している社会保険労務士にお任せてください。
学業の傍ら様々な手続きを行うのは大変でしょうし、我々であればこそ手続きの際に申請を拒否されることは少なくなります。
また節税対策などのサポートなども当然行わせていただきますので、継続して契約いただければと思います」
「わかりました、ただそのあたりはむしろ会長に確認をしてください」
「なるほど、実際に金銭に関しての管理は会長さんの管轄というわけですね」
「ええ、どうかよろしくおねがいします」
そこからは俺と変わって会長が話しての金に関しての直接的な話になった。
「株式会社設立時の費用は諸費用込みで40万ほどになります」
「ええ、そのくらいはかかりますでしょうね、ご安心ください。
今すぐでもお渡しできますわ」
「株式の譲渡制限についてはどうしますか?」
譲渡制限というのは発行する株式の譲渡を制限する会社のことで、通常の株式会社では株主が株式を自由に他人に譲渡できるのが原則だが、定款内で「自社株式の譲渡には取締約会、代表取締役による審査、承認が必要」と規定することによって株式の譲渡制限が可能となるのである。
譲渡制限は株式や会社の運営を安定させ、経営陣の会社運営の主導を確立させる利点がある。
株式の所有と経営の関係が不可分な小規模会社や、経営の主導を確保したい企業が主に導入しているもの。
「とうぜん譲渡制限会社にしますわ。
外部から余計な口は挟まれたくございませんし」
「まあ、そうでしょうね」
もちろん証券取引所に上場されている会社の株式には譲渡制限はつけられないが、上場していない会社の超圧倒的大多数は譲渡制限をつけていて、代表取締役社長から見て都合の悪い自社株の売買を阻止することができ、会社の乗っ取りを企むような見知らぬ人物に株が渡ることも無く、安心して経営を行うことができるメリットがある。
株式公開や上場をする場合は、譲渡制限をはずすことも可能。
「では資本金総額と株主はどうしましょうか?
最低資本金は35万円となりますが」
「代表取締役名義で1000万円といたしましょう」
「では資本金総額は1000万円ですね。
まあ取引先に信用されるには十分な金額だと思いますし、資本金1億円以下であれば中小企業とみなされ、法人税や地方税率の一部軽減も認められますからよいとおもいますよ。
では1株いくらで株式を発行しますか?」
「これは1万円でいいでしょうか?」
「そうですね、今でしたらそのくらいでいいと思います」
こうすると自動的に発行する株式の数が決まり1株の金額が1万円なら、発行する株式数は1000万÷1万=1000株ということになる。
「最後に発行可能株式総数はどうしましょうか?
10倍の10000株程度でいいと思いますけども」
「ではそのようにしてください」
譲渡制限会社は株主に無断で株式を発行することができないので、このあたりは実はあまり問題にはならないのであるが書類上決めておかないといけないのだ。
それとは別に俺は父さんが口座を開設してる証券会社の竹井証券に株取引用の口座も開設した。
こちらも当然親権者の同意書と、親権者と本人の続柄がわかる書類が必要で、親権者がその証券会社に口座開設していることも条件となるんだけど、今までもそれなりに優良顧客で口座を持っている銀行員の父さんと株式会社長となってる俺にもそれなりの信用度があったおかげでそこまで面倒はなく口座は開設できた。
東京証券取引所では昭和60年(1985年)4月にはほとんどコンピュータによる取引に対応できるようになっていて、東京証券取引所で国債の先物取引が開始されているし、今年1985年には取引総額が75兆円であったものが、1989年には4倍超の325兆円の規模にもなっていく。
今は12400円の株が来月には13000円まで上がるはずなので会長の許可をとって部費から2億円ほどを使わせてもらって確実に上がる銘柄を買っておいた。
そんな事もあって株取引に参加するには絶好のタイミングなんだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます