中学最後の夏休みの旅行は結構楽しかったぜ。

 さてお盆休みに前の家族旅行だが、俺たち一家と斉藤さんの一家のそれぞれ3人ずつ合計6人が一緒に鴨川へ行くことで決まった。


 両方とも父親が口を挟める部分はあまりなかったようで、いくら金を稼いできても自分の家庭行事などに介入できないのはなんかな、な気がするけど、授業参観や三者面談も来るのは母親が普通だしな。


 そして旅行の当日だが、まず「船橋」からは「特急わかしお」で「安房鴨川駅」まで移動する。


 昭和47年(1972年)の総武快速線開業による総武本線の東京駅乗り入れと、房総東線(外房線)の蘇我駅 - 安房鴨川駅間の電化により、東京駅 - 安房鴨川駅間でわかしおは運転を開始、1往復は新宿駅発着であったが、少し前の昭和57年(1982年)に房総地区でいろいろ走っていた急行列車は全廃されて「わかしお」に統合された。


  のちの平成3年(1991年)に成田空港行きの特急「成田エクスプレス」が総武本線で運転されることにより、「わかしお」の東京駅 - 蘇我駅間は京葉線経由に変更して運転されるようになった、が新宿駅・両国駅発着のわかしおは廃止されたり再開されたりしていて、土曜・休日には臨時列車の「新宿わかしお」も走っている。


 もっとも総武快速線外房直通の列車でも一般車両にもトイレや、ボックス席もあるしグリーン車もあるからそこまで問題ではないと言えるけど。


 なお、電車による海水浴の旅行客の輸送のピークは昭和43年(1968年)で、その後はマイカーの普及や高速道路の開通、さらに80年代半ばからは海外旅行の人気に相対して国内旅行の需要低下、平成9年(1997年)の海ほたると東京湾アクアラインの開通で、外房や内房の特急の需要自体が減少していたりする。


 わかしおの席は通路を挟んで2つずつになっているが、俺と斎藤さんは東側要するに外房に出れば海がよく見える窓側の席、その隣が俺と斎藤さんの母親、これをくるっと回して対面式になっている座席に俺たち4人はボックス席のように座り、通路を挟んだ反対側に父親たちが横に並んで座って、仕事に関係するらしいことを話している。


 車掌による案内放送の後に車内販売の案内があって、しばらくしてやってきたのは車内販売のお姉さん。


「お弁当にお飲み物、お菓子はいかがですか?」


 わかしおの車内販売は2014年に全廃されているが、その前はかごの中に駅弁やコーヒー、お茶などのソフトドリンク、サンドイッチなどの軽食類、アイスクリーム・シャーベット・アイスキャンディや冷凍みかんなどのデザート類、スナック菓子やチョコレート菓子や酒やおつまみ、キーホルダーや絵葉書などのお土産類や雑誌や新聞、雑貨などをのせた車内販売のお姉さんがそういったものを売って回っていて、これは特急列車などだけでなく快速も含む普通列車でも、東海道本線、横須賀線、総武快速線、高崎線、宇都宮線、常磐線などの長距離を走る列車では車内販売員が乗務して販売をしている。


「なにか買う?」


 母さんが聞いてきたんで俺はうなずく。


「なにか美味しそうな駅弁とお茶と冷凍みかんが食べたいな」


「では、あさり弁当はいかがでしょう?」


「あ、じゃあそれで」


 俺はそう言うと母さんも言う。


「じゃあ、私にも同じものをください」


 そうすると斉藤さんのお母さんも言う。


「私たちも同じものをくださいな」


「はいありがとうございます」


 販売の駅弁やお茶などは結構高くてこれだけで一人2千円ぐらいになったんだが、まあそこをケチるほど金に困ってるわけでもない、こういうのを買うのがもったいないと思ったら魔法瓶にお茶を入れて、おにぎりなどを家で作って持ってきたりする場合もあるわけだけど。


 ちなみに父親たちは弁当は食べないで、ビールとつまみにさきイカなどを買って相変わらず話をしている。


 席にはちゃんとドリンクホルダーや弁当が置けるテーブルもあるので、食べたり飲んだりするのには問題なかったりする。


 こういったサービスは、駅ナカのコンビニや駅ビルでいろいろなものが売られるようになると、車内販売には車販準備室という特定のスペースが必要で、簡単な作業を行うための空間や、コーヒーやお茶の保温用ポット、ソフトドリンクなどの保冷用冷蔵庫、アイスクリームなどの冷凍庫などが備えられていたりする。それでもスペースが狭いために扱える商品がどうしても限られるため客の選択肢が乏しくなり、販売員の人件費がかかるため基本的に高額になるために採算も取れにくくなって、どんどん縮小されていくのだけど、それによってローカルな駅弁をたべたりビールやツマミで旅を楽しむということも廃れていってしまった。


 とはいえ、21世紀でも豪華寝台や観光列車では車内販売が定番のサービスとなっていて、弁当や飲み物・軽食類の販売を実施している。


 車内販売という商売の需要がある列車自体が変わったと言えるんだろう。


 この頃は駅に列車が止まっているうちに降りて、駅から外の商店に行って、食べ物や飲み物、暇つぶしの雑誌を駅の外の商店や売店などで買うしか無かったわけだが、駅売店のキオスクがコンビニになって扱う商品が増え、駅ナカで駅弁が普通に安く買えるようになると、電車の中で高いもんを買う必要がなくなってしまった。


 しかし、豪華寝台列車や観光列車などの車内販売は、乗客の旅の記念として観光列車内での高い買い物そのものを楽しむようになり、売る側も利用者が欲しいと思うものをちゃんと研究して、こまめに商品を入れ替えたりして、コレクションアイテム的なものでもちゃんと売れるようにしている。


 千葉県にある魔法の国の中の土産物屋のように記念品として価値があるものを売るというのは大事なのだが、修学旅行で行った京都・奈良・伊勢のお土産屋などでは今のところそこまで考えてるようには見えなかった。


 あ、京都の八ツ橋とか伊勢の赤福はうまかったけどな。


 とりあえず、この時点の主な販売はお客様に旅行を楽しんでいただき記念になるようなものを売るという要素は少ない。


 訪れた観光地の車内販売とか土産物といった要素もその旅行を楽しめるかどうかという大きな原因があるんだろうな。


 ああ鴨川マリンワールドの、イルカやアシカ、シャチなどのショーは大量の水しぶきを浴びたけど迫力があって楽しかったし、鴨川マリンワールドホテルはマリンワールドの中にあるから移動に時間を取られることもなかった。客室は海に面していてオーシャンビューはいつの時間でも素晴らしい眺めで、綺麗な日の出や綺麗な月や星空も見られたし、夜には波の音で癒やされたり、バイキング形式の夕食、朝食で夕食は魚や貝の寿司、刺身、天ぷら、焼き物などの海の幸はやっぱりうまかったし、売店のお土産物も結構いろいろあった。


 大浴場は鴨川温泉 なぎさの湯を源泉とする温泉で、かなり気持ちよかったし、海水浴もできプールにも入れるとなかなか至れり尽くせりだと思う。


「ここならまた来たいな」


「そうね、なかなかいいホテルだと思うわ」


 俺と斎藤さんがそんなことを話しているとお互いの母親が生暖かい目で俺たちを見ていたが微笑ましいなと思ってるのか、じれったいと思ってるのか、まあ多分両方だと思うけど、両親は高校生の不純異性交遊や結婚前の婚前交渉は駄目という世代だしな。


 しかしながらこのころは11PM、オールナイトフジやギルガメッシュナイトなどの深夜帯のお色気番組が夜な夜な放送されており、雑誌でも「平凡パンチ」とか「週刊プレイボーイ」といったような、青年誌や風俗雑誌が盛んに読まれたりしていた。夕やけニャンニャンから誕生した女性アイドルグループのおニャン子クラブなどが持てはやされる時期で、海水浴では海岸でナンパ待ちの大学生女子グループに声を掛ける大学生の男子グループがいっぱいいたりするのも一見普通だったように見られたりする。


 もっとも1965年くらいにはすでに恋愛結婚と見合い結婚の数が入れ替わっているのだが、1973年には“結婚式がすむまでは、性的なまじわりをすべきではない”と回答する人の割合はまだ60%近くいた。


 この数値が逆転するのは1993年なので80年代は恋愛はしても実際に結婚前に性行為をする人間の割合はそれほど高くはなかったわけだ。


 とは言え不良やヤンキーだと中学生か高校生でも経験があるのは珍しくなく、不純異性交遊が禁じられている中学や高校では経験がなくても、大学生や社会人になった20歳前後では経験していたりして、この頃はクリスマスケーキと言われる25歳までに経験が全くないとか結婚するまで性行為はしないという例はバブル期は少なめだった気がする。


 しかし恋愛ばかり優先され、そこに容姿だけでなく三高といった、当人だけでなく家族の経済力の要素も含まれてくると、逆に恋愛できない男性があぶれていって、更にバブル崩壊で給料が上がらなくなっていったりして、結婚そのものをしない若者が増えていき少子化はどんどん進むことになるんだけど。


 これなんとかできるのかな……、無論頑張って希望を持てるように未来を変えるつもりではあるんだけど。

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