お汁粉缶

いつもの朝、いつもの時間、いつもの場所、いつものお汁粉缶。


私は八時三十分にビルのゲートを通ると、一階のロビーで百円のお汁粉缶を買った。

今日だけは二本。

そして手を温めながら、彼女がロビーに来るのを待つ。

秋から続く短い習慣も、明日から少し変わる。


「萩野ちゃん早いね。私も買うね」


「はい、これ」彼女を制止すると、私は手に持ったお汁粉缶を手渡す。


「いいの?」


「いいよ、だから下の名前を教えて」


「え、名前? 芹香だよ」


「芹香、私は玲奈。よろしく」

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