第13話 意外な反応

俺たちより先にヨネダ珈琲に入店した神田高校の生徒。それは楠木と花宮の二人だった。楠木と花宮が仲が良いのは学校での休み時間の様子を見ているので知っている。


 カフェに誘った友達というのは花宮の事だったのか。


 俺が楠木に気付いた時、神田高校の制服を着ていた俺たちに楠木も目が行ったようで目があった。

 楠木は俺の登場に驚き、飲んでいたコーヒーをこぼしそうになっていた。


 風磨も学校1の美少女の存在に気付いたようで、俺に耳打ちしてくる。


「おい、楠木祐奈の隣の席だぞ!ラッキーだな」


 ラッキーなもんか。隣の席に陽キャ(一人はオタク)が居ては気軽にアニメの話が出来ない。


 俺と楓は横にいる楠木と花宮を気にしてアニメの話が出来ず無言を貫いている。

 しかし、そんな状況に気付かないのが大馬鹿、鈴木風磨だ。


 風磨は俺と楓が隣の席の二人を気にしてアニメの話をしていないことに気付いていない。


 そんな空気の読めない風磨は何も気にせずアニメイロで購入したアニメグッズを自慢げに机に広げ話し始めた。


「これを見ろ。俺が厳選に厳選を重ねて購入したグッズ達だ!!」


 風磨がそう自慢するのは、風磨の趣味である金髪美少女キャラクターのグッズ。

 普段ならその話に賛同してアニメの話に花を咲かせるところだが、今は状況が違う。俺たちには大声でその話をすることは出来ないのだ。


「清楚系の金髪ロングもいいが、最近のマイブームは金髪幼女だ。これ以上に可愛いものは地球上に存在しないと気付いてしまったんだよ」


 いつも通り楽しそうに金髪美少女の話をする大馬鹿の風磨に小声でやめろ、と耳打ちをする。

 しかし、風磨は何のことだ?と言った様子。


 だめだこりゃ……。


 俺は思わず頭を抱え込んだ。


「え、鈴木ってアニメ好きなの?」


 頭を抱え込んだ俺の横から唐突に聞こえてきたのは隣の席に座っていたはずの花宮。


 楠木は花宮を止めようとしたようだが止めきれず、手を伸ばして慌てふためいているといった様子。


 花宮の質問に狼狽えたのか、風磨も言葉を発さない。俺と楓は一瞬の沈黙に思わず唾を飲み込む。


 流石の風磨でもこの状況には狼狽えずにはいられなかったか、そう思ったのも束の間、風磨が口を開く。


「お、花宮じゃねぇか。これ見てくれよ!俺の好きなアニメのキャラクターなんだけどこの金髪がたまらなくねぇか?」


 ……ダメだこいつ!何言ってんだ!?自首してんじゃねぇよちょっとは抵抗しろよ!!


 見てみろ、この冷え切った花宮の顔を……


「なにそれめっちゃ可愛いじゃん!!」


 ――は?めっちゃ可愛いってそれ俺らオタクがする反応だぞ。花宮の様な陽キャが言う言葉ではない。


 俺と楓と楠木は呆気にとられた。


「ちょっと祐奈見てよこれ。めっちゃ可愛くない?」


 そう言うと楠木はこちらに来て風磨が購入したグッズを見る。

 アニメ好きの楠木であれば恐らく知っているであろうキャラクターのグッズに、確かに可愛いねと相槌を打つ。


 あれ、この感じだと楠木が今の悩みを解決できるのは早いんじゃないか?

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