虚構原型-プロトタイプ・フィクション-
山下 式
第1章 オートマタ
第1話 はじめに文字ありき
ある男が、もしくは女が、或いは少年か少女か、マウスを右手に、いやペンだったかもしれないがとりあえず、何かを記そうとしていた。冒頭が最も難産だとでもいうように、苦悶の表情に額から汗を噴き出している。そうしているうちにシナプスは青い炎を放ち始め、キーボードを叩く指に反応してモニターに文字が羅列され、紙にはインクが滴り落ちていった。
インクは滲むとやがて広がり、紙の繊維を縫って枝を伸ばしていく。枝はやがて文字となり、海のように群れを成して情報へと巨大化した。こうして巨大化した情報は光となって屈折し、眼は、光に秘められた情報を掴み取り、それは記憶と感情によって意味を持つ。視覚に文字としか処理されなかったそれは、やがて街を描き、色を帯び、質感を抱いて配置されていく。
組みあがると、そこには濃霧の街。
19世紀のロンドン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます