見た目は小学生女児だけど

佐藤君の後に続いてやって来た2人、藤村君と小学生ぐらいの女の子は、反応は違えど疲れきってる様子だった。まぁ、藤村君の場合は佐藤君のと隣にいる小学生ぐらいの女の子の荷物を持って歩いて来たからというのもありそうだけど……

ふと、その女の子が私に気づいて、私の方に駆け寄って来て


「前に佐藤君と藤村君がご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした!」


と、私に向かって深々と頭を下げてきた。私は突然謝罪されてポカンとしてしまった。はて?前にとは一体なんの事だろうか?


「先生。彼女は以前の「果たし状」の一件について謝罪しているんですよ」


西園寺さんに言われて理解する私。う〜ん……あの一件はこの娘は何も関わってないし、私も特に被害を被ったという感じではないんだけど……それにしても……この娘、小学生にしてはえらく落ち着いた大人な感じのする謝罪ね……


「先生。なんとなく先生が考えてる事分かりますが、彼女はひいらぎ 琴音ことねさんです。私の中学時代のですよ」


「えっ!?嘘でしょ!!?」


「本当ですよ!!?」


私が信じられずにそう口にしたら、柊さんが再び涙目になってそう叫んだ。

いや……正直見た目小学生にしか見えなかったから……私と同じ教職員とは思わなかったわ……まぁ、今は小学生なのに大人っぽい娘もいるし、その逆もあるって事かな。


「ちなみに、年齢は32歳。先生より3つ上です」


「えっ!?嘘でしょ!!?」


「本当ですよ!!?」


正直、年齢は私より下だろうと思っていたので、思わずそう口にしたら、柊さんが自分の免許証を私に見せてきた。そこの生年月日欄には、確かに私より3つ上である事が記されていた。っていうか……この見た目で免許証取れた方が凄いかも……


「更に言うなら理央の彼女だったりもします」


「ちょっ!?西園寺さん!?そこまで言わなくていいから!!?」


柊さんは顔を真っ赤にして西園寺さんに抗議するが、西園寺さんはそれを華麗にスルーしていた。そんな自分の彼女の様子を微笑ましく見ている藤村君を見て、私はこれは本物だと理解した。そういえば、以前藤村君の携帯から聞こえてきた声も、柊さんの声に似ていた気がする。その時点で気づくべきね……私……


「なるほど。柊先生の運転で来られたから、私達よりも遅くなった訳ですか」


「あぁ……もう何回警察に事情を説明したか覚えてないや……」


藤村君は遠い目をしながらそう言った。なるほど。見た目小学生の娘が車運転してたら誰だって声かけるわよね。普通……


「とにかく!私達もここの温泉宿を予約したんだから!2人っきりには絶対させないんだからね!!」


佐藤君は再び私にだけ指をさしてそう宣言する。西園寺さんはそんな佐藤君を見て呆れたように溜息をついた。が、もう諦めたのか私に一声かけ、私達は一緒に温泉宿の中に入って行った。

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