相沢家の姉2人

私は奥様達のマンションの部屋を出た後、タクシーを使って西園寺家に移動。そして、西園寺家に到着してから、私は足早に侍女室に向かっていた。

西園寺家は、従者を沢山雇っている為かなり広い屋敷である。まぁ、と言っても当の西園寺家の人々は別に豪奢な屋敷に住みたい願望があったとかではなく、沢山の人に囲まれて暮らしたいという想いで大きな屋敷を建てたという話である。なので、西園寺家の人達は従者の事を皆家族のように接してくれている。お嬢様が私を幼馴染のようなものと言ってるのがそこにあらわれている。


そして、私がわざわざ家に帰らずに西園寺家に向かっている理由は、従者は皆一仕事終えたら、上司に報告する義務がある。私はメイドなので、西園寺家の侍女長に報告に行かなくてはいけない。今の時間だと西園寺家の侍女長は侍女室にいるのが分かっているので、私はすれ違う人々に一礼しながら侍女室に向かっていると、見知った顔を2人見つけたので、一礼しながら私は2人に声をかけた。


さくら様。牡丹ぼたん様。おつかれ様です」


私が2人に挨拶を交わすと、2人もそちらに気づいた様子で、私の方に駆け寄ってきて「おつかれ様」と声をかけてくださいました。


「もう!桔梗ちゃん!私の事はお姉ちゃんって呼びなさいって言ってるでしょ!」


私が姉と呼ばなかった事に不満だったのか、桜……姉さんが私にそう言ってきた。桜姉さんは相沢家の長女で現在32歳だが、その雰囲気は私とは違い柔らかく、更に私と違う圧倒的なボリュームの胸をしている。……別に妬んでませんよ?ゆるゆるふわふわなロングヘアーは、更に桜姉さんの柔らかな雰囲気を強くし、とても30過ぎてる人には見えない。町を一緒に歩いていると、10代の女性と間違えられてナンパされる事が度々ある。


「桜。無茶を言ってはダメよ。桔梗は社会人としてのマナーを守っているのよ」


桜姉さんとは対照的に、牡丹姉さんは、クールビューティーな雰囲気の女性である。私はよく牡丹姉さんと似ていると言われるが、牡丹姉さんの方が私より絶対クールで美人だと思っている。なにより、胸は桜姉さん程ではないけど、やはり大きいですし……妬んでませんよ?本当ですよ?

牡丹姉さんは奥様と同じく年齢は29歳。綺麗な長い黒髪をポニーテールにまとめ、理知的な感じを更に付け加えるように眼鏡をかけている。


相沢家には、上2人の姉の他にも、その下に男児が2人いる。私にとっては兄になるが、姉達にとっては弟という間柄で、つまり私が相沢家の末っ子になる。兄弟仲は良好で、特に姉2人には、時に厳しく(主に牡丹姉さんが)、時に優しく(主に桜姉さんが)私に指導してくれた。


「もう!牡丹も桔梗も固いのよ!西園寺家の人はそんな事で厳しく言う人じゃないでしょ!」


「確かにその通りだけど、あくまでそれは西園寺家が特別というだけよ。普段から己を律して仕事するのは大切よ」


桜姉さんはプンスカ怒りながら牡丹姉さんに説教するが、逆に牡丹姉さんは眼鏡をクイっと上げて、自分の意見を言った。まぁ、でも桜姉さんもあくまで西園寺家の人々の前では今のように振舞っているだけで、ちゃんと来客が来たら一流のメイドらしく仕事してるのでそこはやはり流石の一言しかない。


「それで、もしかして桔梗は報告に?」


「はい。今日の業務終了報告を侍女長に……」


私が侍女長と言った瞬間、牡丹姉さんから「ピキッ」と青筋がたったような音が聞こえてきたような気がした。


「あのクソ女なら侍女室で侍女にセクハラしていたわよ」


先程公私混同は控えろと言った人とは思えない言動に、私はどう反応を返していいかわからなくなる。そんな牡丹姉さんを見て、桜姉さんは苦笑を浮かべ


「まぁ、その……牡丹の言った通り侍女長なら侍女室にいるから早く報告してきたらいいと思うわよ」


「ありがとうございます。では、失礼します」


私は2人に一礼した後、私は2人と別れて再び侍女室に向かって歩き出す。

それにしても……牡丹姉さんにも困ったものだ……先程の態度でも分かるように、牡丹姉さんは侍女長の事をものすごく嫌っている。いや、そもそも相沢家と、侍女長の家である芹沢家は元から西園寺家の従者ナンバーワンの座をかけて火花を散らしているような関係なのだけど、牡丹姉さんのそれは、それとはまた違うと私は感じている。


そんな事を考えているうちに私は侍女室に到着した。私は扉をノックし


「桔梗です。本日の業務終了報告に来ました」


『あぁ、入ってきていいよ』


部屋の中の主からの了承を得て私が扉を開けると……


「やぁ、桔梗。いらっしゃい。いつもの報告よろしく」


私の目の前で、大きなソファの真ん中に座り、複数の侍女を侍らせた人物がそこにいた。


その人物こそ、西園寺家にメイドとして仕えて10数年間、西園寺家の侍女長に君臨している芹沢 明日奈あすなその人であり、



私が長年片想いをしている初恋の相手である……

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