第10話 宮上 想史

三匹のドラゴンがアンの目の前にひれ伏した。

「なに……いったい」

「これは……」

ガルムが驚愕の表情をあらわした。

「アンなにをしたの?」

ネリがたずねるとアンは首をふるだけだった。

すると一匹のドラゴンがアンを咥えてひょいと飛び上がった。

「キャアアアアアアア!」

「アン!」

ネリはかけよる。

「アンをどうする気だ!」

三匹がはばたき、地を離れていく。

「ネリ!助けて!」

ドラゴンは火を噴いた。ネリはうわっと腕を前にだす。

「ネリ!それ以上近づくな!」

ガルムがネリを捕まえて、地面に転がる。

「おじさん!アンが!」

ドラゴンは空に上がって、小さく見えていた。

ネリは呆然と立ち上がった。

「そんな……」

雨がさらに強まっていく。







エルフの森の炎はなんとか消えて、後には黒くなった木々が無残な姿をさらしていた。

残っていた帝国兵はなんとか捕らえたが、言葉はろくに話せず、ただ呼吸する塊になっていた。

飛空艇の残骸には帝国兵のほかにも大国の兵も混じっていた。


ネリは黙々と残骸の後片付けを手伝っていた。

思考が停止したかのように、暗い顔をしながら作業を続けていた。

ふとネリの手が止まった。

手に持った瓦礫を握りしめたてが震えていた。

目の前の焼けた何かに力の限り叩きつけた。

「うあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

なにもできなかった

なにも

僕はなにもできなかった

目の前の女の子が助けを求めていたのになにもできなかった

自分の無力さに嫌気が差した

ちくしょう

ちくしょう!


目の前の瓦礫の山からなにかがコロコロと転がってきてネリの足にあたった。

ねりはそれに目を向けた。

何かの箱だ。

装飾が入っていてなにか普通の箱ではないように思われた。

手に取ってみる。

少し重かった。

「なんだろうこれは……まあいいや」

ネリはまた後片付けを続けることにした。

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