第110話 使用人増加
「さてと……じゃあ、君たちにはこれから我が家で使用人として働いて貰うことになるけど異存はあるかな?」
複数の子供達にそう言う。最初に屋敷に侵入してきた四人のうちの三人と、屋敷から助け出した六人で合計九人。それだけの人数の子供の行き先をしばらく考えてから俺はこの家の使用人として招くことにした。ほとんどが女の子で男の子は最初に屋敷に侵入した二人の少年だけなので、その二人以外は侍女として人員を回すつもりだ。
「ないなら、早速だが……」
「あの……メフィはどうしたのですか?」
ローリエにそっくりのナナミがそんなことを聞いてくるので、俺は頷いてから答えた。
「メフィは彼女の意思でセリュー殿下の元に向かったよ」
「セリュー殿下のですか?」
「まあ、わかるだろ?」
そう聞くとこくりと頷くナナミと数名の少女に対して少年二人は首を傾げたまま聞いてきた。
「それって、どういうことだよ」
「ふむ。さしあたってはその言葉遣いは直した方がいいかもね」
「て、言われても……」
「ジーク。ミゲル」
その言葉に待機していた二人が出てくるので、俺はそれぞれに指示を出す。
「ジークはオレンジを庭師長の元へと連れてってくれ。ミゲルはゲリラを衛兵達に紹介。基本的には二人にはそこで頑張ってもらうから。残りの者は私が侍女長へと紹介しよう」
その言葉でジークとミゲルが少年二人を連れていったのを確認してから俺は残った子供達に視線を向けると、おっかなびっくり手を上げながらナナミが聞いてきた。
「あ、あの。オレンジくんはなんで庭師なんですか?多分オレンジくんの方がゲリラくんより強いですよ」
「だろうね。だからこそだよ」
我が家の庭師は所謂忍者のようなもの。まあ、実際には隠密活動がメインの諜報部隊なのだが、ここ最近は若い者も減ってきてるので、ああいう少しだけ尖った存在は必要だろう。それに言葉遣いも直せる可能性が高いしね。ヤクザみたいな顔の庭師長だから流石にあのヤンチャ坊主も多少は大人しくなるだろう。
「それじゃあ、侍女長に挨拶をしてから仕事に入ってもらうが、その前に一つだけ」
そう言ってから俺はナナミに視線を向けると微笑んで言った。
「好きな人のことを案じるのはわかるけど、仕事とプライベートは分けること。恋愛を禁止はしないから。好きなように仲を深めていけばいいよ」
「な……ち、違います!私は別に彼のことなんて」
「まあ早めに素直になりなよ。ライバルが少ないうちに確保するに越したことはないからね」
そうしてナナミに軽く注意をしてから侍女長へと引き渡す。また近くで新しい恋話を聞けることに少しだけ楽しみになりつつも俺は俺で仕事に戻るのだった。
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