第97話 芽生える想い
「あうー」
「……よしよし」
バジルを抱っこしながらあやすユリー。なんだかその姿が物凄く様になっており俺は思わず聞いていた。
「随分とバジルはユリーになついたね」
「……そうですか?」
「あ、私もそう思います。それになんだかユリー楽しそうに見えますし」
隣でミントをあやすレイナも同じ感想なのかそう口を挟むので、俺はバジルに近づくと苦笑して言った。
「幼い頃からこんなに女ったらしだと将来心配になるな」
「……大丈夫です。バジル様は」
「そうかな?」
「……はい。バジル様は良い子に育ちます」
なんだか知らないうちに随分とバジルにご執心になっているユリーに思わず驚いてしまうが、まあきっとバジルが魅力的なのだろう。男としてなんとなく負けた気分になりそうになるが、俺にはサーシャがいるので気にはしない。
俺はもう一方のミントに近づくとミントは俺が近づいただけで嬉しそうにはしゃいでくれた。レイナから抱っこを変わってもらうと俺の頬に指をさしてきて嬉しそうに笑ったのでそれに思わず微笑んでいるとレイナが微笑ましそうに呟いた。
「ふふ、ミント様はカリス様のこと本当にお好きですね」
「レイナも使用人の中ではなつかれているだろ?」
「私なんてまだまだです。もっとミント様のお役に立ちたいのですがなかなか上手くいきません」
実際、バジルは母上やユリー以外にはあまりなついてなくて、ミントはわりと誰にでもなつく傾向にあるのでミントのお世話係をしたいという人間は少なくないが、この中でもレイナには先陣を切って役に立ってもらっているので俺は言った。
「それなら、ミントが大きくなるまでは見守ってほしいかな。古くからの使用人というのは大きな支えになるからね」
「カリス様……はい!」
「あ、でも……レイナが結婚したら好きにして貰っても構わないよ。好きな人と一緒に独立しても、家の使用人として残っても構わないよ。なんだったら家で子育てしても構わないしね」
「えっと、出来れば私はミント様のお側にいたいのですが……彼がどう言うか」
その言葉に俺は少しだけ進展があったのかと思い笑って答えた。
「大丈夫だよ。今度相談してみればいいさ」
「はい……」
「それにしても……もしかして何か進展があったのかな?」
そうして俺はレイナとミゲルの甘酸っぱい話を若干聞くのだった。なお、隣でバジルを抱っこしながら微笑むユリーの姿に少しだけ将来的なバジルとのフラグを感じたのは内緒だ。まあ、それならそれできちんと応援しようと思う。
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