第86話 家族のバースデー

「旦那様ありがとうございます」


誕生日パーティーが一段落してからそんなことを言ってくるサーシャに俺は笑顔で言った。


「お礼はローリエにも言ってあげてよ。今日のために頑張ったんだから」

「ええ、あの子にもちゃんと言いますが、何より先に旦那様に伝えたかったんです。こうして家族から祝っていただけるなんて思わなかったですから」

「これからは毎年するさ。君もローリエもミントもバジルもね」

「はい……」


そう言ってから微笑むサーシャ。俺はその笑顔に内心で悶えつつも思い出したように言った。


「サーシャ。目を瞑ってくれるか?」

「?わかりました」


俺の言葉に何一つ疑わずに従うサーシャ。従順すぎてヤバい!この子やっぱり健気すぎて、保護欲を刺激される。そんな可愛いサーシャに俺はイタズラしたい気持ちを抑えてから今日のために準備したネックレスを首に着けてからサーシャに言った。


「誕生日おめでとう、サーシャ」

「旦那様、これは……」

「プレゼントだよ。誕生日なら必要だろう?」


サーシャに渡したのは所謂ロケットペンダントと呼ばれるもので、中に写真などを入れて保管できるものだ。そう、この世界一応写真があるのだ。まあ貴族の間ではあまり流行っていない。それまでの絵画を主流とした流れを変えられないでいるからだが、それでもあるのでこういうものを作ってみたのだ。


サーシャは蓋を開けてみてから何も入ってないことに気づいて聞いてきた。


「旦那様。これはこういう仕様なのですか?なんだか随分とシンプルですが……」

「ん?ああ、それはね。大切なものをそこに入れることができるんだよ」

「大切なものですか?」

「そう、写真は知ってるよね?」

「ええ、一応は」

「とある地域ではその中に大切な人の写真を入れて持ち運ぶことが流行ってるそうだ。お守りとでも言うのだろうか?いつでもその人の顔を見れるからね」


そう言うとサーシャは感心したようにペンダントを見つめてから思い付いたように言った。


「でしたらその……旦那様」

「なんだい?」

「その……旦那様の写真を入れたいのですが……ダメですか?」

「構わないが、私でいいのか?」


そう聞くと嬉しそうに頷いて言った。


「はい!旦那様がいいんです!」

「なら、サーシャにとって一番格好いい私を撮らねばな」

「はい!あの……もうひとつお願いしてもいいですか?」

「構わないよ」


その言葉にサーシャは今度は少しだけ恥ずかしそうにしながらポツリと言った。


「今夜は……とことん愛してください」

「もちろん」


サーシャの言葉にみなぎるヤル気。今夜は長くなりそうだと本能が告げている。これは4人目の誕生もそう遠い話ではないかもしれないと我ながら思うのだった。サーシャが可愛いのがいけない。あんなに可愛く求められたら答えぬという選択肢はないからね!うん!




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