第67話 嫁との一幕

「サーシャ、少しは機嫌直ったかな?」


俺は現在サーシャに膝枕をしている。とはいえ、これは俺を反省させるためにサーシャが強いてきた罰なのだ。理由は俺が騎士団長と真剣で戦ったことが大きなものだが、まあ、危ないことはしないと言ったのに守れなかった俺に可愛らしくもサーシャは膝枕という要求をしてきたので甘んじて受けているのだ。


現に膝の上のサーシャは珍しく頬を膨らまして可愛らしく怒ってますよーという雰囲気を出していてその表情がまた可愛いのだが……それを口にする前にサーシャは言った。


「別に怒ってません……ただ、旦那様がまた無茶をしたことに少しだけ思うところがあるだけです」

「そうか……」


それを怒ってると言うのだけど、流石にそれを口にするほど野暮ではないので俺はサーシャの頭を撫でながら言った。


「悪かったとは思ってるさ。でも、私もフォール公爵家の長としてたまには格好いい姿を他所様に見せる必要があったんだ」

「……旦那様はいつも格好いいです」


ぷくーっと頬を膨らましながらそんなことを言うサーシャ。怒りのパワーなのかそんな台詞を無自覚に言うサーシャに俺は内心でかなり荒ぶるがなんとか抑えて平静を装って言った。


「ありがとう。サーシャの前では私は素直になりすぎるからそう言ってくれるのは嬉しいよ」

「素直……ですか?」

「ああ。サーシャの前では私は余計なことを考えずに済む。好きな人には自分のすべてを見せたいというのが本音だからね」


まあ、もっともこの激しいラブパワーをそのままサーシャに流したら大変なことになるのでセーブはしているけどね。いや、だってこんなカオスな中身をサーシャにそのまま見せるとか出来ないでしょ。うん。


そう言うとサーシャは少しだけ嬉しそうな表情をしながらでも頬を膨らましながら言った。


「わ、私もその……旦那様の前では情けないところばかり見せています」

「そんなことはない。むしろサーシャの可愛い表情が見れて私は幸せだよ」

「かわ……」


不意討ち気味の台詞にサーシャは顔を赤くする。本当にこの子経産婦なのだろうか?こんなに可愛い子持ちの嫁は世界中探してもいないだろう。にしても、膝枕というのはやはりいい。照れてるサーシャが顔を隠す術が少ないのでこうして照れる様子をじっくり観察できる。しかもサーシャの銀髪が凄く柔らかくて気持ちいい。何度となく撫でてきたがこんなに綺麗な銀髪は見たことがない。ローリエの髪も綺麗だけど、長年の手入れと、ここ一年で俺が開発した美容グッズでサーシャの魅力はさらに上がっている。


やはり素材がいいと磨けば物凄い光を発するので楽しい。まあ、そうじゃなくてもサーシャとローリエのために何かするのは凄く充実感があるので、やっていて損はない。


しばらくサーシャの可愛い姿を愛でていると、落ち着いた頃にサーシャがぽつりと呟いた。


「旦那様……私は旦那様には傷ついてほしくないのです。旦那様にもしものことがあったらと思うと……」

「ありがとう。サーシャ」


優しいサーシャの言葉に俺は微笑みながら頭を撫でて言った。


「私は幸せ者だよ。可愛い妻と娘に恵まれて。だからこそ私は私にできることでこの幸せを守ろうと思う」

「旦那様……」

「大丈夫。無理はしない。だからサーシャにお願いがあるんだ」

「お願い?」

「そう、私がサーシャを愛することを許して欲しいんだ。サーシャだけを女性として愛することをね」


その言葉にサーシャは顔を真っ赤にしてから涙目でやがてこくりと頷いた。


「も、もちろんです……」

「ありがとう。サーシャ」


そうしてしばらくサーシャを膝枕して楽しむ反省会。こんな素敵な反省会なら毎回したいが、サーシャの心に負担を増やすのは嫌なので避けるべきだろうと内心葛藤したことは当然だろう。




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