第56話 出産間近

「体調はどうだいサーシャ」


そう聞くとサーシャはクスリと笑いながら答えた。


「大丈夫です。心配しすぎですよ旦那様」

「すまないね。どうにも愛しい妻のことが気にかかってしまってね。迷惑かい?」

「そ、そんなこと!むしろ旦那様に想われていると思うと、その……嬉しい……です……」


照れ照れでそう言うサーシャに俺は内心かなりの萌えを感じていた。なんなのこの照れ照れの妊婦さん。身籠っているのにこんなに可愛い人はどの世界探してもいないだろう。いや、いちゃいけない。この可愛さこそ世界……いや、俺専用の世界国宝だ!


そんなことを思いつつ俺はサーシャの腹部に優しく手を添えて言った。


「お前にももう少ししたら会えそうだな」

「あっ、今蹴りましたよこの子。旦那様に会えるのが嬉しいのでしょう」


ふふ、と笑うサーシャ。サーシャのお腹は妊婦らしく膨らんでおり、時期的にももう少しで生まれることが分かるので俺は思わず笑みを浮かべてしまう。


「嬉しそうですね。旦那様」

「嬉しいよ。サーシャのお陰で新しい家族ができるんだ。その子のためにも、ローリエのためにも、もちろん愛しい妻であるサーシャのためにも頑張ろうと思えるからね」


その言葉にサーシャは少しだけ心配そうな表情を浮かべて言った。


「旦那様。あんまり無理はしないでくださいね」

「もちろんだよ」

「むー……旦那様はいつもそうやって笑って誤魔化すので心配なんです」


ぷくーと頬を膨らませて可愛らしく拗ねるサーシャ。そのサーシャに俺はなんとか我慢して軽く抱きしめながら言った。


「大丈夫。もう私は無理はしない。だから正直に言うと私は少しだけお腹の子に嫉妬もあるんだ」

「し、嫉妬ですか?」

「ああ。サーシャの中で長い時間サーシャと一緒にいられるこの子に少しだけね。もちろん可愛い子供だけど私にもそういう感情があるんだ。幻滅したかな?」


そう言うとサーシャは少しだけ顔を赤くしながら必死に否定した。


「そ、そんなこと……嬉しいです」


「えへへ……」と照れるサーシャ。ヤバい……可愛いすぎるだろ!本当に抑えがきかなくなりそうになるが、なんとか我慢我慢。なんなのこの子なんでこんなに可愛いんですか!?もうかれこれ何ヵ月以上もその手の行為をしてないからそろそろ我慢の限界が近くなってきているが耐えねば。


もちろんソフトな触れあいも大好きだけど男の性もたまには発露しないとヤバい。とはいえ、サーシャ以外の女を抱くのは嫌悪感があって無理なので結論から言って我慢しかない。いや、そもそもサーシャ以外を女として見れないから、その手の欲求は必然的にサーシャオンリーに限られるんだよね。サーシャを知ってしまうと他の女を女として見れない……物凄く当たり前のことだけど、やはりサーシャは最高だという結論にいたる。だから子供が産まれて、サーシャの体調が安定して、尚且つムード的に大丈夫になるまで我慢しかない。


いや、俺のことはいいんだ。サーシャが少しでも幸せなら俺はどんな我慢もできる。妊娠は女性の負担が大きい。今俺に出来るのはこうしてサーシャ不安を取るように側にいてあげることだけだ。だから俺は自分とサーシャのために笑顔で優しくサーシャを抱きしめるのだった。









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