第40話 見送り
「おばあさま、またきてくれますか?」
少し寂しそうに母上にそう言う我が愛娘のローリエ。今日は母上と父上が屋敷に戻る日だ。サーシャは大事をとって部屋で休んでいるので見送りは俺とローリエの役目だ。
見ているこっちが苦しくなるような寂しそうな表情のローリエに母上は笑顔で言った。
「もちろんよ。必ずくるからねローリエ」
「はい!」
祖母と孫の微笑ましい光景だが……少し気にくわない!何が気にくわないって母上が俺に見せつけるようにローリエとイチャイチャしているのがなんとなく気にくわない!いや、ローリエが幸せならいいんだけど、母上はたまにわざと俺に見せつけるようにローリエやサーシャとイチャイチャするからね……ライバルだよライバル。
まあもちろんローリエやサーシャの前で親子喧嘩などは一切するつもりはない。冗談でもその手の行為を二人に見せるのは嫌だからね。サーシャに関してはこれから先は俺が守るからいいとしても、ローリエにも出来る限りのサポートはするつもりだ。可愛い娘だしね。とはいえ、もちろんこの先そういう人間の汚い部分を知ることがローリエにあるだろうけど……ローリエはもう十分ドン底を味わったのだ。これからは幸せであるべきだと俺は思う。
まあ、それはさておき……
「ローリエ。お祖父さまにもご挨拶しておきなさい」
母上の後ろで若干苦笑いしている父上が先程から気になって仕方ない。寂しそうとかではなく、ローリエを可愛がる母上に自分の姿を重ねているようなそんな感じだ。
ローリエは俺の言葉に頷いてから父上にも笑顔で言った。
「おじいさまもまたきてください」
「……ああ。ありがとうローリエ」
どこかまだぎこちないが……まあ、普通はこれくらいの距離感があっても仕方ないだろう。むしろ母上が異常なのだ。
そんなことは口にはせずに父上と話すローリエを微笑ましく思いつつ俺は母上に言った。
「母上。ではサーシャの出産前は色々とお願いします」
「ええ。にしてもあなたからサーシャの出産のサポートを頼みにくるなんてね」
意地悪な笑顔でそう言う母上。そう、俺はサーシャの出産の前の時期にこちらに来てサーシャのサポートをするように母上に頼んでおいたのだ。俺が色々とサポート出来ればいいが……ぶっちゃけ俺一人でできることは限界があるので母上にも助っ人を頼んだのだ。
出産くらいで大袈裟なと思う人がいるかもしれないけど、出産ってかなり大変なことなんだよ?人一人が産まれるには母親はえらい大変な思いをすることになるから、特に精神的にサポートする必要があるのだ。
男にできることは仕事をしつつ時間をみてサーシャに顔を見せ、愛娘の面倒をみることくらいだからね。まあ、ローリエの面倒と言ってもローリエは賢くて本気で手を焼くことがないからむしろ構いたくなるんだけど……それで反抗期とかにうざがられたらかなりショックだからやはり今のうちに愛でるだけ愛でるべきだろうか?
「まあ、私一人ではもしもの時にサーシャとローリエをフォローできませんからね」
「昔なら自分一人でやろうとしたのに随分と変わったわね」
「まあ、私も真実の愛に目覚めたからですね」
「あら?私と旦那様の愛情には勝てないわよ」
「愛は時間ではなく想いの濃さによりますので」
ローリエに気付かれない程度のバトル。静かに俺と母上はお互いの愛情についてバトルしている隣で苦笑気味の父上といつでも天使なローリエがほんわか会話していたのは……説明不要であろう。
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