第2話 普通の人になった理由



 僕はあいつの事を、あの頭の良い幼馴染の事を良く知っている。

 何せ、十数年もつきあいがあるのだから。


 久世は頭が良かった。

 けれど、だからだろう。

 人間の心の機微を察することができない人間だった。


 弱い人間の心が分からない。

 悪い人間の心が分からない。


 彼は一人の少女を助ける事を失敗してしまった。


 弱い彼女が助けてと言えない理由を理解できなかったから。

 悪い人間は往生際悪く足掻く事を理解できなかったから。


 だから、彼は使えない力を使わなくなった。


 大切な人を助けられない力など、あっても意味がないと。

 そう思って。


 あいつはあれきり、学校にこなくなった。


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