Ⅲ
「ああ、できるなら知りたいね」
「後で、文句を言ったりしない?」
「しない、しない。するなら少佐だけだ」
ボーデンはそう言うと、ラミアはエレキの方を見る。
「うっ……。ああ、分かったよ。関係者以外は誰にも言わない。絶対に言わん!」
エレキは目をつぶって、手を心臓に捧げて言う。
「本当か?」
ボーデンは疑いの目を持つ。
「だ、大丈夫だ! たぶん……」
エレキは、ボーデンから視線を逸らす。
「おい、なぜ、俺と目を合わせない……」
「あ、合わせているぞ。ほら、よく見てみろ。ぱっちりと目が開いているだろ?」
エレキはその熱苦しい眼差しでボーデンを見つめてくる。
それから逃れようとするボーデン。
「わーかった、わーかったって‼︎ その熱苦しい目を俺に向けるな!」
「貴方達、聞く気がないなら話さないわよ」
呆れるラミア。
三人はメルシュヴィルの街を歩きながら話を進める。
「––––つまり、そう言う事なのよ」
ラミアは手紙に書かれていた事を全て二人に話し、自分の推測も一緒に述べた。
「なるほど、つまり、少佐の野郎はこんな危険で面倒な事に俺やラミアを巻き込んだと言いたいんだな」
「おい、俺もいるぞ……」
エレキは忘れられている存在をアピールする。
「あの野郎、ぜってー帰ったら一度じゃねぇ……ぶっ飛ばす!」
「その勢いよ」
ラミアはボーデンを煽りに煽る。
メルシュヴィルの街は迷路のように道が入り込んでおり、一つ間違えれば、迷子になりかねない。
「俺、生きて帰れんのか? まさか、少佐はそれを見越して俺を送ったんじゃないだろうな?」
エレキもまた、不安になってきた。
「生きて帰れるかは解らないけど、逆に調査をしないと国だけじゃない。世界中が大混乱になりかけないわ」
「だよな。それにここには凄い魔法師がいるらしい。まずはそいつに会ってみねーと話が先に進まないんだよな」
「それで? その例の魔法師は一体何処にいるのかしら?」
ラミアはエレキに訊いた。
「それが……相当扱いが難しい人で、キレるとそれは怖いと街の七不思議の一つに入るらしい。いやー、考えるだけで怖くなってきた」
「それは七不思議じゃなくて噂じゃないのか?」
ボーデンはエレキの話にツッコミを入れる。
街角を曲がり、気の荒そうな魔法師に会いに行く。
「次の道を真っ直ぐに行けば、その魔法使いに会えるのね」
「そのようだな」
三人は、街の外れにある鉄鉱山に近いポツンと建ってある一軒家を見た。
外見から見るに、築五十年くらいの古さを感じる。
煙突から煙がもくもくと燃え上がっており、中に人がいる事は外から見ても分かる。
「どうやら中に人がいるようだな」
「そうね。今の時間帯だったら訪ねても問題ないと思うわ」
「お、俺……腹痛くなってきたんだが……」
「お前みたいな大男がそんな態度を取ると、みっともねぇーぞ」
「好きでこんな体型になったわけではない」
三人はその一軒家の前に立ち止まると、石階段を上り、扉の前まで来る。
そして、ラミアが扉をノックする。
コンコン。
中から何も反応がない。
「おい、反応ないぞ」
「おかしいわね。確かにいるはずなんだけど……」
「寝ていたりしているんじゃないのか? お前と一緒で」
「はぁ? 誰が寝ているだって?」
「静かにして、二人共。中には人がいるって言ったでしょ」
ラミアが不思議そうに、頭を悩ませる。
「変われ、俺がやる」
ボーデンがラミアを押し除けて、扉の前に立ち、何度も扉をノックした。
「おーい、出てこい。いるのは分かっているんだ。出てこねぇーとぶっ壊すぞ!」
と、言うがそれでも反応がない。
「本当に反応がないぞ」
「いるのか? エレキ、この扉を壊してくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます